テラーノベル
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今回はちゃんと本編です…
長い間書いてなかったんで、忘れてしまった方は11話に該当する「一 草 一 木」の方を一読してからの閲覧をお勧めいたします…。
「猫咲」
羅刹学園敷地内に足を下ろした生徒、1番最後に船主に一礼してから降りた四季は先を歩いていた猫咲の背中に呼びかけた。
「はい…?」
「傷の確認をする、屏風ヶ浦は居ないから俺の部屋に先に行ってろ」
「先生は?」
前髪で隠れた目を細めてじっと見つめれば冷たい視線がふと逸らされた。
「俺はやる事がある」
「……そうですか」
納得はしていないけれど、口先だけで猫咲はそう答えた。
学園に入り寮に向かう生徒達を見届けて四季は1人保健室に歩を進めた。
「……いますよね、校長」
保健室で消毒液やガーゼを準備しながらも背後から感じた気配に声をかけた。
「流石、一ノ瀬君」
「何のようです?校長」
「も〜、ここに生徒はいないんだからその皮を被る意味ないのに〜」
確かにと、うなづくように前髪をかき上げた。普段から遮られていた視界がスッキリする。
「で?なんかあったん?校長??」
再度同じ質問を違った口調で聞いてきた四季に隠された顔の下でふと笑った。
「いや〜、僕じゃなくてね…君が聞きたいことでもあるんじゃないか〜って思って!」
「…やっぱ校長鋭いなぁ…」
保険室のベットに腰掛けて四季は小さく呟いた。
「俺は…生徒の事を信用しきれてないのかもしれない…」
「?どうしてだい??」
ボロボロになっている自分の血を見た。この手から一体どれほど多くのものが零れ落ちたのだろうか。
その姿を知らない生徒達は、それを知ったらどう思うのか________。
それを恐れている、一ノ瀬四季を知られる事を。
「俺はまだ、あの事を生徒に言えてない…」
「あのことって…」
「うん、鬼神ってこと…」
一ノ瀬君さ…と校長が切り出した事は随分と簡単なのに極めて困難だった。
『言ってみなよ』
「待ってろ、つってもな…」
四季の部屋で、立ち止まりながら小さく溢した猫咲は小さく開いたドアから書類が詰まった書斎を見た。
悪いとは思いつつも、手でゆっくり押し開けて暗い机に向かった。机上は紙やノート写真パソコンが雑多していて書きかけだったであろうペンが1番上に鎮座していた。
「?にゃんだ…」
「写真…?」
そこには小さい少年と、皺の目立つ幸せそうな顔で笑う男が写った写真。
その少年の目元には2連のホクロがあった、紺色の瞳と髪。
「一ノ瀬先生…?だよな…」
写真の下にあったノートを持ち上げて数ページ捲れば、俺ら生徒の名前と特徴。そして癖や伸び代が事細かに書かれていた。
「は…何であんな……」
譫言のように吐き出した言葉に返ってくる音もなかった、手から滑り落ちたノートが床に落ちた反動で1番最後のページが開かれた。
「!やっべぇ……」
「あ?」
そこに書かれていたのは何度も何度も繰り返されている謝罪の文字が羅列していた。
殺した人間と死んだ人間に対しての、悲痛な思いが…。
茫然と立っていれば、小さい足音が廊下から聞こえてきた。証拠写真を二、三枚撮り慌てて元通りにしたのちにその書斎を後にした。
ガチャと自室を開けた四季は普段と変わらずに前髪で紺色の瞳を隠していた。
「遅くなったな、顔見せろ」
間髪入れずに頬をムギュと握られて逃げ場を無くされる。左右をじっと見つめられる。
「痛むところは?」
「無いです」
「…髪触るぞ」
触れて傷を探す先生、けれど本当にどこも痛くも無いし怪我をしようと軽傷なら鬼の力で治るというのに…
ボーッと考える猫咲に一言言って掌で前髪を持ち上げた。
「……大丈夫そうだな」
「きゅ、急ににゃにしやがるッ!!!」
「にゃ、にゃん殺すぞ!?!」
急に開けた視界とドアップな四季の顔に目を見開き飛び跳ねた猫咲。
勢いで放った言葉に四季は小さく笑った。
「猫咲は、良い目をしてるんだから隠す必要無いと思うけどな…」
「…へ」
「…あ?」
ポツリと落とした言葉に猫咲が間抜けな音を出し、驚く。同じく四季も自分が言ったことに漸く気付き固まった。
「え…」
「………忘れろ」
「え、でも四季先生「忘れろ」」
「良いな?」
有無を言わさぬ威圧感に縮みあがり、ひゃい…と小さく同意した。
廊下に出された猫咲は未だ唖然としている。自室に入って寝なくてはならない。頭ではわかっているけれども上手く動けそうも無い。
「化けの皮剥いだ…?」
スマホを取り出して再度あの写真を見れば、書かれていることは壊れてしまいそうなほどに優しかった。
屏風ヶ浦からもらった写真を共有した時に使った連絡用アプリで写真を送信した。
「言うべきか…言わないべきか…」
猫咲の気配が無くなった廊下を背に扉にもたれ掛かった。
言わなければ“一ノ瀬先生”で居られるのか保証はないし、言ってしまえば“一ノ瀬四季”を拒絶されてしまうのだろう…
そうしてきっとアイツらは酷く優しいから、壊れ物を見るようになるだろう…
それは俺の願いじゃない。
俺の願いは
生徒たちの命が脅かされることが無い、安心して平和と言い切れる世界で、生徒が笑っていてくれる日々を当たり前にすること。
それが叶えば何もいらない…
それこそ______すらも。
ポケットに入っていたコインを弾いて取ろうとした。自分では決めれそうに無いから、月詠の言う神様とやらに決めてもらうことにした。
ピンッッ
金属が爪に弾かれて高く飛んだ、くるくると回転している。取ろうと手を伸ばしたが上手く取れずに弾かれた。
床に落ちたコインは転がり書斎へと向かっていく、何やってんだろう俺…と1人卑下しながら足を進めた。
案の定コインは机の下に落ちていた。拾い上げようとしゃがめばコインと愛用していたペンが落ちていた。
「………見られたか…?」
一ノ瀬先生出すの久々すぎますね…
今回は「十二の巻」って言う多肉植物です
花言葉は「小さな愛」です…
猫咲さんは四季先生の思いに一歩近づけたんじゃないでしょうか…
多分『四季先生は優しくない』は、もうそろそろ完結いたします!!!
とは言っても、🔞の方や番外編は書く予定で〜す
書いて欲しいネタ等あればコメントいただければ追々書きます!!
コメント
86件

初コメ失礼いたします!! 一気見させていただきました!! 完結するのが、名残惜しいです…! 番外編も最高過ぎました!!👍 そろそろ、四季くんは生徒たちにどんな辛い過去を話すのか、とても楽しみです!😭
