「……今度は、折らない。」
そう言って涼架がポッキーを口にくわえた。
対する滉斗も、言葉はなく、静かに向き合う。
カリッ…カリッ…
わずかに響く咀嚼音。
どちらからも視線は逸らさない。
——あと数ミリ。
次の瞬間、ふたりの唇が、そっと触れ合った。
一瞬の静寂。
けれど、誰も止めようとはしなかった。
そのまま、どちらからともなく口を開き、
ポッキーの先端を、お互いの舌で押し込むように共有する。
「……んっ…ふ……ぅ……」
甘いチョコの味と、柔らかく絡み合う舌。
ポキッと折れるはずだったお菓子は、
代わりに熱を帯びた口内で、少しずつ咀嚼されていく。
それはもうゲームではなかった。
「……涼ちゃん、もう…キスじゃなくなってる…」
「……だって、これ…美味しいから……」
お互いの吐息が交差し、
唾液の混ざる音が、淫らに部屋に響く。
舌先が逃げては追い、時折、チョコの欠片が零れ、
それすらも互いの唇でぬぐい合った。
「……なにこれ、やば……」
「……でも、やめたくない。」
ふたりの唇は、ポッキーがなくなっても離れなかった。
END
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