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第14話 「久しぶり」の意味
「湊音、静佳。久しぶり。」
その一文を見た瞬間。
静佳の指が震えた。
「……」
湊音も、何も言えない。
ただ、二人で手紙を見つめている。
「……本当に、蓮くんなんだ」
静佳が呟く。
「うん……」
湊音も小さく頷いた。
その後ろでは、心音とおさでいも黙っていた。
二人も、手紙から目を離せない。
「続き……」
湊音が言った。
「読もう」
静佳が頷く。
二人で、ゆっくり続きを読む。
『あの時、突然いなくなってごめん。』
『二人には、何も言えなかった。』
『大人たちは、俺たちが会わない方がいいって決めた。』
『理由は、二人が知らなくてもいいことだと言われた。』
『でも俺は、ずっと二人のことを忘れたことはなかった。』
「……」
静佳の目から涙が落ちる。
「忘れてなかったんだ……」
「うん」
湊音が答える。
『湊音。』
『あの日、俺が怖くなって泣いていた時、ずっと隣にいてくれたよな。』
『静佳。』
『公園で転んだ時、俺の手を握ってくれたよな。』
「……」
静佳が口元を押さえる。
「私……」
「思い出してきた?」
湊音が聞く。
「……うん」
静佳は目を閉じる。
「少しずつ……」
幼い頃の記憶。
三人で走り回った公園。
お祭り。
帰り道。
くだらないことで笑った日。
そして――
三人で交わした約束。
「……あ」
静佳が突然、顔を上げた。
「どうした?」
湊音が聞く。
「思い出した」
「何を?」
「私たち……」
静佳の声が震える。
「三人で約束したんだ」
「……!」
湊音も目を見開く。
「『ずっと一緒』って」
「うん……」
「でも……」
静佳は手紙を見る。
「蓮くんだけ、いなくなっちゃった」
その言葉に、誰も何も言えなかった。
***
手紙には、まだ続きがあった。
『でも、俺は約束を破ったつもりはない。』
『ずっと、二人を探してた。』
『そして最近、やっと二人が今どこにいるのか知った。』
『だから――』
『もう一度、会いたい。』
「……!」
湊音が顔を上げる。
「会いたいって……」
「蓮くんが……」
静佳も手紙を握る。
そして最後の一文。
『もし、二人が俺に会ってもいいと思ってくれるなら――』
『明日の午後5時。』
『昔、三人で遊んでいた公園で待ってる。』
『――蓮』
「……明日」
湊音が呟いた。
「明日、会える」
「……」
静佳は黙っていた。
心音が心配そうに声をかける。
「静佳?」
「……会いたい」
「……!」
「私、会いたい」
静佳は涙を拭った。
「ずっと忘れてたけど……」
写真を胸に抱く。
「ずっと、会いたかった気がする」
湊音も頷く。
「俺も」
***
「……待って」
おさでいが口を開いた。
「俺たちも行く」
「え?」
湊音が振り返る。
「俺も行くよ」
心音も頷いた。
「俺も」
「でも……」
「二人だけで行く必要ないだろ」
おさでいが優しく笑う。
「それに、俺たちも蓮のこと知ってる」
「……うん」
「一緒に行こう」
心音も続ける。
「ただし、二人が嫌なら無理には行かない」
「……」
湊音と静佳は顔を見合わせる。
「……一緒に来て」
静佳が言った。
「お願い」
「もちろん」
心音が笑う。
***
その夜。
なかなか眠れなかった。
湊音はベッドの上で、何度も手紙を読み返している。
「……蓮」
知らないはずなのに。
どこか懐かしい。
顔は思い出せない。
声も思い出せない。
でも。
胸の奥に、何かが残っている。
「……明日、会えるんだ」
湊音は小さく笑った。
一方。
静佳も眠れずにいた。
枕元には、あの写真。
「……三人」
写真を見る。
幼い自分。
幼い湊音。
そして――蓮。
「……私、どうして忘れてたんだろう」
静佳は写真を指でなぞる。
すると。
ふと、頭の中に一つの光景が浮かんだ。
『静佳!』
幼い蓮の声。
『早く!』
『待ってよ!』
『湊音、置いてくよ!』
『待ってってば!』
三人の笑い声。
「……!」
静佳が起き上がる。
「今……」
もう一度目を閉じる。
すると。
別の記憶。
雨の日。
三人で一本の傘に入っている。
蓮が笑っている。
『明日も遊ぼうな』
『うん!』
『約束!』
――そして。
その翌日から。
蓮はいなくなった。
「……」
静佳の目から涙が落ちた。
「……明日」
「絶対、聞くから」
***
翌日。
午後4時30分。
「早すぎない?」
ころんが笑う。
「まだ30分前だよ?」
「だって気になる!」
湊音が落ち着かない様子で時計を見る。
「湊音、昨日からずっとそれ」
おさでいが苦笑する。
「だって……」
「分かるけどな」
心音も笑う。
静佳は少し離れた場所で、公園を見つめていた。
「……」
「静佳」
「ん?」
「大丈夫?」
「うん」
少し間を置いて。
「……今度は、ちゃんと覚えてるから」
「そっか」
心音が微笑む。
午後5時まで、あと数分。
風が吹く。
木の葉が揺れる。
「……来るかな」
湊音が呟いた。
「来るよ」
静佳が答える。
「手紙、くれたんだから」
そして――
午後5時。
公園の入り口に、人影が現れた。
「……!」
全員が振り返る。
一人の少年が、ゆっくり歩いてくる。
黒っぽい服。
少し長めの髪。
そして――
どこか懐かしい顔。
湊音が息を呑む。
「……蓮?」
少年は立ち止まった。
静佳も目を見開く。
「……」
少年は少しだけ笑った。
「……久しぶり」
その声を聞いた瞬間。
静佳の記憶が一気に蘇った。
「……っ」
「静佳?」
心音が支える。
静佳は震える声で――
「……蓮くん」
少年は笑う。
「覚えててくれた?」
「……うん」
涙をこぼしながら。
「今、思い出した」
湊音も笑った。
「俺も!」
蓮は二人を見つめる。
そして。
「……二人とも、大きくなったな」
「蓮くんも」
静佳が笑う。
「……会いたかった」
蓮の表情が少し崩れた。
「俺も」
三人は、しばらく何も言わなかった。
ただ。
12年ぶりに再会した三人は――
昔と同じ場所で、もう一度顔を合わせていた。
***
しかし。
その様子を少し離れたところから見ていた大人たちは、まだ気づいていなかった。
蓮が、この公園に来る前。
誰かから受け取っていた――
もう一通の手紙の存在に。
その封筒には、
『湊音と静佳には、まだ伝えてはいけない。』
と書かれていた。
そして差出人の名前は――
「蓮の父親」
だった。
コメント
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## 美月ゆめか🌸の感想 「久しぶり」の意味……タイトルが刺さりすぎた😭💕 蓮くんからの手紙、静佳ちゃんが記憶を取り戻すシーンとか、湊音くんの「忘れてなかった」っていう気持ちとか、もう全部がエモすぎて泣いたよ……! 12年ぶりの再会が「久しぶり」の一言で繋がるの、尊すぎるでしょ!!✨ 最後の「蓮の父親」からの手紙、めっちゃ気になるんだけど!? まだ何か隠されてるの? 続き早く読みたい〜〜!!💖