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ここまで一気読みしましたっ!!! もうハート撃ち抜かれました!!!!自分ごとですみませんが頑張って1000♡しました! 続きまってます!!!
「あの、神父様」
無事本日のミサを終えた後、不意に信徒のひとりから呼び止められ、そちらの方へ向き直る。
「ケイリーさん。どうかなさいましたか?」
「もしかして、あの方は新しく入られた方なのでしょうか」
あの方、と言いながら彼女の視線が流れたのは、教会の端に静かに佇む一人のシスターだった。
「ええ。実は、他の教会からこの教会へと移って来られたシスターなんです」
「あら、そんなこともあるのですね。」
「はい。あまり事例のないことではあるんですけれどね」
信徒である彼女らからいつシスター(新顔)について言及されてもいいよう、事前に考えていた事を述べる。
信仰深くとも、教会の内情には疎い信徒たちには申し訳ないが、そこを逆に利用させて貰うことにしたのだ。
「それでは神父様、今からシスターに挨拶をして来てもよろしいでしょうか?」
そっとシスターを_ラグーザを横目で伺う。すると、こちらの会話を聞いていたようで、彼のお腹あたりで組まれた手がほんの僅かにピクリと動いたのが見えた。
「…大丈夫ですよ。ただ、シスターの容姿は少しばかり特殊ですので、あまり驚かないであげてくださいね」
「そうなのですね。わかりましたわ。では、私はこれで。神父様にご加護がありますように」
「貴女にも、ご加護がありますよう」
信徒の背中を送り出しつつ、面白半分で彼女らの会話を盗み聞きしてみる。
_目を閉じているはずの彼から睨まれたような気がしたのは気のせいだと思うことにした。
「こんばんは、はじめましてシスター。私はケイリーと申します」
「…はじめまして、ケイリーさん。わたしはラグーザと申します。これからどうぞ、よろしくお願い致します」
「まぁ……シスター・ラグーザは、綺麗な瞳をお持ちですのね」
彼が目蓋を持ち上げ、現れた真紅の瞳。
やはり彼女も目が奪われたようで、思わずといった風に感嘆の息を漏らしたのが横目でもわかった。
「……ありがとうございます。以前の村ではこの瞳が理由で少々苦労していたので、そう言われるのはなんだか慣れませんね」
……へぇ。
彼は意外にも、アドリブや演技が上手いらしい。瞳を褒められた彼の、少し照れの混ざったような微笑みは儚く、美しく見えた。
「そうだったのですね……どうかシスター・ラグーザが、此方では心穏やかに過ごせることをお祈り致しますわ」
「ありがとうございます。貴女の日々も明るいものになるよう、わたしも心身込めてお祈りを」
「感謝申し上げます、シスター。」
「ええ、貴女にご加護がありますように」
「シスターにも、ご加護がありますように。それでは、また明日」
軽く会釈してから帰っていく教会内最後の信徒である彼女を見送り、静かになった教会の聖堂で僕とラグーザはひとまず安堵の息を吐き出した。