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第四十二話 文化祭への一枚
「待っているだけじゃ、心に残る一枚は撮れない。」
九月中旬。
文化祭まで、あと三週間。
写真部の部室には、
部員たちが撮影した写真がずらりと並んでいた。
「海の写真にしようかな。」
「私は街の夜景。」
それぞれが、自分の”つながる”を探している。
湊も何枚もの写真を机に広げていた。
親子。
夕焼け。
祭り。
空。
どれも好きな写真だった。
でも――。
「何か違う…。」
心が「これだ」と言ってくれない。
*
「神崎先輩。」
一年生の陽菜が、おずおずと声をかけた。
「写真、選べましたか?」
「まだ。」
湊は苦笑する。
「撮るのは好きなんだけど、選ぶのは苦手なんだ。」
陽菜は並べられた写真を見つめる。
「全部、優しい写真ですね。」
「え?」
「どの写真も、人が笑ってる。」
その言葉に、湊は少し驚いた。
意識して撮っていたわけじゃない。
でも、言われてみれば本当にそうだった。
*
その日の帰り道。
湊は遠回りをして帰ることにした。
夕暮れの商店街。
パン屋の前で、おばあさんが荷物を落としてしまう。
すると、制服姿の女子中学生が
すぐに駆け寄り、一緒に荷物を拾い始めた。
「ありがとうございます。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
二人は笑顔を交わす。
その瞬間――
カシャッ。
湊は思わずシャッターを切った。
自然な優しさ。
見返りを求めない行動。
その一瞬が、とても美しく見えた。
*
夜。
部屋で写真を見返す。
さっき撮った一枚。
写真として派手ではない。
特別な景色でもない。
でも。
そこには確かに
「人と人がつながる瞬間」が写っていた。
湊はその写真を紬へ送る。
《今日撮れた一枚。》
数分後、返信が届く。
《この写真、好き。》
《笑顔じゃなくても、優しさが伝わってくるね。》
湊は写真をもう一度見つめた。
紬の言葉で、
この一枚の意味がはっきりした気がした。
*
翌日の部活。
顧問の先生は
湊の写真を見て、しばらく何も言わなかった。
そして静かに微笑む。
「神崎。」
「はい。」
「この写真は、人を撮ったんじゃない。」
「“想い”を撮ったんだね。」
その一言で、湊の胸の中にあった迷いが消えた。
「これを展示します。」
湊ははっきりと言った。
写真部に入って一年半。
初めて、自分の写真に自信を持てた瞬間だった。
📷 Photo.042『つながる心』
撮影日:9月14日
優しさは、
大きな出来事じゃなくていい。
誰かを思う、その一瞬が、
人と人をつないでいく。
#ハイキュー
れい
1,328
コメント
4件
そうなんです〜!
このエピソード、すごく良かった…!「優しさは大きな出来事じゃなくていい」っていうメッセージが、写真一枚にこんなに詰まってるんだなって感動した。湊くんが「想い」を撮ったって言われて自信持てたシーン、じんわり来たわ。日常の一瞬を切り取る写真部の話、めっちゃ好きだ🔥