大森side
夕方、りょうちゃんは録りためていたテレビを見ている。
ソファでクッションを抱えているのはよく見る光景なんだけど、今日はおせんべいの袋を抱えている。
しかもチャック付きの結構大きいやつ。
「おせんべい?」
「うん」
「珍しいね」
「番組収録の差し入れでいただいてね、すっごくおいしかったから同じの探して買ってきちゃった」
「こんなにおっきいの?」
「これは大容量があったから、つい」
「そんなにおいしかったんだ(笑)」
「そうなの!元貴もおひとついかが?」
ぜひぜひと差し出されたおせんべいを咥えて、ボロボロにならないように齧る。
「んぅ!」
「でしょ~?」
「まだ何も言ってない(笑)でもおいしいね」
「ね!この甘じょっぱさ、くせになるの~」
「わかるわ~」
そのあと僕は部屋に戻り、1時間くらい別室でオンライン会議をしていた。
リビングに戻るとさっきと同じ体勢のりょうちゃん とばっちり目が合った。
え、どうしたの?
もぐもぐ(ボリボリ)しながら目を大きくパチパチさせて、僕の顔とおせんべいの袋を交互に見るりょうちゃん。
袋の中身が半分くらい減っていて意味がわかった。
もぐもぐしていたものを飲み込むと、舌をペロッと出して”やっちゃった”という顔でチャックを閉めた。
遅いよ(笑)
「何回かやめたんだけど、おいしすぎて」
開けて、食べて、閉めてを繰り返して止まれなかったらしい。もぉ~、かわいすぎる。
「夕ご飯食べれる?」
「たべれるよ!たべれるけど……」
「けど?」
「…ちょっとくるしい……」
「だよね(笑)だいぶ食べたもんね。やっぱりやめとく?」
「元貴と一緒にたべたいの!」
「かっわ(小声)」
「そうだ!おせんべいはお米からできてるんだよ!」
「つまり?」
「……主食ってことが言いたい」
「いや意味分かんないから」
「じゃあ今日はお米はもう食べたってことで、おかずだけ食べよう」
「うう~、反省してまぁす」
おせんべいは油もいっぱい含んでいたから、りょうちゃんはあっさりしているサラダをいっぱい食べてました。
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いとさんの作品好きすぎて待ってました。 風鈴と蝉が大好きです。