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「おはよー」
「おはようございます、アイナ様」
「おはようございますー」
翌日の朝、部屋の前で待ち合わせをする。
昨日とは違って、ちゃんと起きることが出来て良かった。
「ルーク、昨日は遅かったの?」
「1時頃には戻ってきましたので、そこまでは」
私が寝たのは日が変わる前だから、それよりは1時間も遅かったのか。
「うん、お疲れ様。それで様子はどうだった?」
「通りから少し中に入ると、入り組んだ場所が多い印象でした。
もう2、3日は夜に出掛けようかと思います」
「おっけー。何かあっても無理をしないでね」
「はい。アイナ様にもらった高級ポーションもありますし、気を引き締めていきます」
ルークは爽やかに断言した。
でも、高級ポーションのお世話にならないのが、何よりも一番なんだけどね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
朝食をとった後は、予定通りに冒険者ギルドへ向かう。
今日も今日とて、依頼を2つくらい受ける予定だ。
「さて、良さげな依頼を探しますか」
「「はい!」」
広い掲示板を三人で物色していく。
掲示板に張り出された依頼はカテゴリ分けがされておらず、特定のものを探すには効率が悪かった。
少しくらい、依頼内容で場所を変えても良さそうなものなのに。
えーっと、これは魔物討伐……。
こっちも魔物討伐……、これも魔物討伐。
ああもう、魔物討伐はルークに任せているんだから、それ以外のを見せてよー!
ええっと、こっちは見たから、次はあっち――
ドスン!
「――あ、すいません! 不注意でした」
余所見をしていたところ、初老の男性にぶつかってしまった。
私は慌てて謝罪をする。
「大丈夫、大丈夫。これくらいなんともないよ」
そう言いながら、彼は笑顔を返してくれた。
ああ、優しい人で良かった……。
そして再び、掲示板に目を移す。
ええっと、これも魔物討伐……あれも魔物討伐……それも魔物討伐……。
魔物討伐しか無いんかーい!!
……休憩がてら、掲示板から目を逸らしてみると、先ほどぶつかった初老の男性が同じ場所でそわそわしていた。
誰かが来るとそれを目線で追って、行ってしまうと少し落胆して――
うーん、何をしているのかな?
「すいません、何かお困りごとですか?」
「ああ、さっきのお嬢さんか……。
実は、私の依頼もここに張っていてね」
「依頼者の方だったんですね。えーっと、これですか?」
依頼票を見てみれば、探し物の依頼だった。
「先日、街の外に出たんだが……魔物に襲われてね。
命は助かったものの、どさくさに紛れて亡き妻からもらった指輪を無くしてしまって……」
「ええ? それは大変でしたね……」
「それでこの依頼を出したんだが……。
しかし私から出せる報酬なんてそんなに多くは無いし、それに大まかな場所は分かるものの、広大な場所で小さな指輪を探すなんてね……。
強い冒険者は魔物討伐の方が割が良いだろうし、強くない冒険者には危険な場所だろうし……」
……報酬を確認してみれば、金貨1枚と銀貨25枚だった。
ケチっているというよりも、本当にこれ以上出せないような雰囲気が漂っている。
でも私、こういう話には弱いんだよね。
それに、私なら案外あっさり見つかりそうだし。ガルーナ村で、ダンジョン・コアを探したときみたいに。
「ルーク~! エミリアさ~ん!」
大きな声で、二人を呼ぶ。
「どうしましたか、アイナ様?」
「良い依頼でもありましたか?」
「うん、この依頼を受けたいんだけど、どうかな」
先ほどの依頼を、二人に見せてみる。
「ふむ、探し物ですか……」
「ガルーナ村で、ほら。
黒いアレ、探したことあったでしょ? あの要領でいけば、すぐ見つかるんじゃないかなって」
「なるほど。確かにアイナ様の独壇場ですね……。私は問題ないと思います」
「よく分かりませんが、ルークさんがそう言うならわたしも大丈夫です!」
エミリアさんは、呑気に承諾してくれた。
「……というわけで、この依頼は私たちがお受けしますね!」
後ろで静かに控えていた依頼主にそう伝えると、ルークとエミリアさんも会釈をした。
「おお……本当かい?
ありがとう……ありがとう……」
「いえいえ! それじゃ、良いお知らせをお待ちください」
何度もお礼をしてくる依頼主とは一旦別れて、私たちは引き続き別の依頼を探すことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……というわけで指輪探しの依頼を受けるわけだけど、近場では他に何かあるかな?
その辺りで魔物に襲われたって言っていたけど」
「その場所だと……ありますが、ちょっと大物ですね」
「大物?」
「こちらの、ラージスネイクの討伐依頼になります」
「ラージスネイク……」
……大きい蛇?
「緑色の巨大な蛇なんですが、ガルーナ村の大蛇よりも素早い種類です。
移動範囲も広いので、離れていても一気に距離を詰められる可能性があります」
「ふむ……。つまり、難しそう?」
「お二方の力があれば、恐らく倒せるとは思います。
報酬は金貨5枚と高めですね」
金貨5枚! いいじゃない!
……でも、昨日のガルーダよりは難易度が高そうだ。
「うーん、危ないなら止めておく?」
「いえ、あまり楽な戦いばかりしていると成長できませんから。
私としては、ぜひ挑戦してみたいところです」
「エミリアさんは、どうですか?」
「わたしもルークさんと同じ意見です!
アイナさんさえ良ければ、受けてみませんか?」
「それじゃ、この討伐依頼と、指輪探しの依頼だね。
早速、手続きをしてくるね」
「あ、それなら私が――」
「いいからいいから! こういう仕事もちゃんとやらせて!」
戦闘で役に立たない……という理由もあるんだけど、実はこういう雑用は好きだったりする。
人任せばかりにしていないで、できることはしっかりやっていかないと!