テラーノベル
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「ペイン邸へ返書を。ダフネが望んでいるものは、可能な限り揃えるようにと」
「すべて、でございますか?」
「いや……」
少し考えて申し添える。
「ドレスも宝飾品も嫁入り道具も、本人が望むのなら好きに選ばせればいい。費用はこちらで持つ」
「かしこまりました」
「だが……」
セドリックは淡々と頭を下げたが、続いた声に再び顔を上げる。
「儀礼馬車はこちらで用意しよう」
「こちらで?」
「ああ。王都から運ばせる必要はない」
エスパハレからニンルシーラまで、すべて馬車で移動させるとなれば相当な日数を要する。
ダフネ本人が疲れる程度ならば知ったことではないが、それに付き合わされる護衛兵や馬まで疲弊させるわけにはいかない。
ましてや、その先には国境越えが待っているのだ。
「王都からエルダン駅までは汽車を使わせる」
「では、グランセール駅から?」
「ああ。ダフネと侍女たちは客車へ。嫁入り道具についても貨物車両を手配すればいい」
王都エスパハレの玄関口であるグランセール駅から、ニンルシーラのエルダン駅まではおよそ一日半。
わざわざ何日も掛けて街道を北上する必要はない。
「エルダン駅から先の馬車と護衛はこちらで手配する。国境を越えてからが本番だ。そこへ至るまでに兵や馬を疲弊させるのは得策ではない」
「ごもっともでございます」
「荷馬車も必要な数を用意しておけ。王都から運ばれてきた荷を、そのまま積み替えられるようにな」
「承知いたしました」
そこでセドリックが一礼する。
しかしランディリックは、ふと思い出したように付け加えた。
「ダフネが乗る儀礼馬車は、特に念入りに作らせろ」
「念入りに、と申しますと?」
「本人の希望どおりに」
金の装飾。
豪奢な窓枠。
遠目からでも、身分ある者が乗っていると分かるほどの華やかさ。
ウィリアムが危険だと忠告した、そのままの馬車。
「一目で王太子妃候補を乗せていると分かるものがいいそうだ。ならば、そのようにしてやればいい」
「……ですが、それですとあまりにも危険では」
セドリックの進言に、ランディリックは何も答えなかった。
ただ、静かに視線を向ける。
「……失礼いたしました。旦那様の仰せのままに手配いたします」
ほんの僅かな間を置いて、セドリックは静かに頭を下げた。
ランディリックは再びウィリアムからの書状へ視線を落とす。
――あまりに目立つ一行は、賊に狙われる危険がある。
几帳面な文字で記された一文を、ゆっくりと目でなぞった。
もちろん、その危険は承知している。
だから護衛は付ける。
兵も馬も、万全の状態で国境へ向かわせる。
その上でなお、ダフネ自身が華美な馬車を望むというのなら――。
「それは自業自得だ」
ぽつりと落とした声に、感情らしいものはほとんど乗らなかった。
養女の晴れの日なのだから、養父としてそれくらいのワガママは聞いてやってもいいだろう。
#ハッピーエンド
高瀬船
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#溺愛
星キラリ

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#異類婚姻譚
和泉
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コメント
2件
なんかランディ、ダフネのことどうなっても構わないって思ってるよね、きっと。
今回のエピソード、ランディリックの冷徹な判断と、養女への微妙な距離感が絶妙でした。「自業自得」という一言に、彼の本音と父親としてのワガママを許す度量の両方が感じられて、すごく印象に残りました。ダフネが望む華美な馬車が、物語の先でどんな展開を呼ぶのか気になります。設定の組み立て方が丁寧で、キャラの立場や思考がしっかり伝わってくるのが鷹槻さんらしいなと。