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本人様や組織に迷惑をかける行為、発言は
お控えください。
また、口調や呼び方などが異なる場合が
ございます。
その点は閲覧をご自身でご考慮してください。
それでは、
そちらでよろしければ
お読みになってください。
______________
時は2133年。
三枝は2115年生まれ。
今は8月31日。
誕生日まで、あと10分。
「なあなあ!見てみろよ!すっげー綺麗!」
青いペンキに染められた夜空の上に、
星屑が光を帯びて落ちて行く姿を
最後まで見届けた。
三枝の瞳にはその美しい様が映っていて、
それを見るだけで充分満足した。
三枝の方に歩み寄り、
フェンスから落ちないか不安になりながらも
その綺麗な夜空を眺めた。
百聞は一見に如かず、
流れて行くその星がやけに鼓動を速くした。
「…あー、綺麗だな、うん…」
かなり語彙力の低い感想だったが、
わーキレーやら、すげーやら、
向こうもなかなか拙い言葉を喚いていたから
俺の感想なんて耳にも入れられていなかった。
今夜は流星群で、
なるべく高いところから見たいという
三枝の要望を大幅に取り入れ
施設の屋上に忍び込んでいる。
もし見つかったりしたらただじゃ
済まないだろう事を踏まえての行動だ。
「最初で最後の流星群ってエモいなぁ」
と、三枝は単なる独り言の様にそれを発した。
しかし話し掛けている様にも聞こえるので、
返事をした方が良いのか、
しないで自分の望まない話題にしないように
しようか。だが、
三枝は基本的に自分の言葉を無視されると
気分を害する事を、
常に共に居る不破は知っていた。
その後の空気も考慮し、
ノータッチで返事をする事にした。
「そうだな…感動する」
やはり心が籠っていないと自分でも感じる。
ようやくそれに気付かれた。
「……その割には感情無さげだけど?」
皮肉った口調だった。
そこに可愛さを感じるのは
恐らく親心の様なところだろうか。
「…バレたか?
語彙力とか何にも無いからな…」
「バレたとかじゃなくて!
ちゃんと見ろってば!」
「はいはい、わーあったって」
拗ねて口をとがらせ、頬を膨らませている
仕草が大変可愛らしいと思った。
不破は、正直星については関心が全く無い。
そんなもの見ていても何も変わらない
というのが本音だ。
だが、三枝が余りにも過剰に反応を表す為、
嫌でも見なければならないというのも本音だ。
三枝が満足するまで付き合わなければならない
自分の気持ちも分かって欲しい。
「……俺さ、B2型なんだよね」
ああ、知っている。
そんな深刻な事を
何故今言うのかは分からない。
だが、自分が嘘を上手に出来る人間では無い
という事を重々承知していたから、
素直に述べた。
「知ってる」
「………いつから?」
一瞬驚いた顔をしていたが、
気を引き締め尋ねてきた。
だから、真剣に答えた。
否、嘘などこの瞳の前では通じないと
分かっていたから。
「2年前、教室で吐血した時」
屋上の扉がバンと開いた。
△ △ △ 明那side
放課後の教室、
三枝は丁度一人での居残り補習が
終わったところだ。
「ヴッ………!…………は、…?」
血が出た。恐らく、喉から。
三枝は今、18歳だ。
心当たりは1つある。
B2型の病状が露になってくる年齢だ。
だが、国民全員が12歳の時に
行われる検査により、
三枝は自分がC型だという事をしている。
だが、もし自分がB2型とするならば。
「…突然変異……?」
その事例は極めて0。
しかし、
C型の人間はB2型に変異しても
おかしくは無いと、
昔々の無名の研究者が論文を
発表していた気がする。
当時は、そんな事有り得ないと誰もが
耳を貸さなかった。
しかし、どうだ。
それならば、C型の自分が、
B2型の症状が起きている事が説明出来ない。
血を拭い、床を拭いて、
混乱しながらも帰路に着き家に帰った。
部屋に入り、ぼーっとしながら
型について調べていた。
まず、この世界の常識をノートにまとめた。
・B2型は何事にもおいて全てが完璧な人間。
ただし、寿命が短く、
B2型の人間全員が20歳になってから
24時間以内に死亡する。
国から補助金などが出され、B2型だけの為に
作られた高度な勉強をする学校に行き、
功績を出すチャンスが沢山与えられて、
学生の内に何らかの功績を残す者が大体。
・人類の
7割がC型で、1割がB2型、2割がD型。
病状などは無い。
感染症やウイルス、病気にもかかるし、
怪我もする。政府関係の人物は全員がC型。
C型、D型が通える学校に通う。
・D型は型の中で一番疎遠される型。
障がいを背負う人は全員がD型。
障がいが無い人も居る。
国はD型の人間を保護?すると
公明しているけれど具体的な事業が余り無い。
このくらいか。
自他ともに認める
成績の良くない自分としては、うん。
なかなか上出来な文だと思う。
改めて思い出したが、親友2人の型、
灰はB2型で、湊はD型だと言っていた。
自己紹介の時、
灰はC型だと名乗っていたっけ。
昼休みの屋上で湊と目を丸くした記憶が有る。
● ● ●
「うーわ、
抜き打ちテストとかマジでクソ……」
「明那は授業中寝てるからじゃない?
だからだよ」
「毎回1位の優等生の灰くんに言われたら
説得力アリアリのアリだな、草。
D型の俺でも赤点は免れたぞー?」
「それは湊が普通に頭良いだけだよ!
はあ…ほんと、
灰が同じC型とは思えないわー…」
「? 俺、B2型だけど」
「「…え、マジ?」」
「うん、マジ」
● ● ●
確か、
理由はわざわざ正しい事を言う必要は無い、
だったか。アイツらしいとつくづく思った。
はっ、と気を取り直した。
思い出話に干渉している場合ではない。
病院に行ったところ、
ストレスによる胃潰傷だった。
と、B2型の症状だった。
それは1年後に知る。
〇〇〇 2132年 6月10日
「は、俺が?B2型??」
それは、あの剣持が宣告したものである。
「いや、ねぇ…
僕を頼ってくれたのは嬉しいけどさ?
明那の脳をいくら診てみても、
B2型のなんだよ…こればっかりは…」
死亡宣告である。
いや、剣持は悪くない。
誰も悪くない。
目の前に居る男は、不破の叔父で、
型の第一人者だ。当時16歳の彼は若くして
世界に型の存在を発表した。
剣持刀也の名は世界中に轟き、
彼のファンクラブもあるとか。
「刀也さん…?………俺…死ぬの?」
剣持の唾を飲み込む音が響いた。
それは三枝にも筒抜けだった。
「…マジ?」
汗を垂らしながら他人事の様に笑った。
「死ぬ時は灰と一緒に…ダメだ、
俺が先に死ぬのかぁ…」
「…元々はC型だったんだから、
何か変わるかもしれないし…とりあえず
1、2週間入院してね」
「…おー」
気だるげに返事をした。
〇〇〇 2132年 6月11日
「明那入院したってマジなんだ!」
「ここ病院だから静かにしろって…」
不破は入院をした事が無いようで、
面白そうに瞳を輝かせていた。
「…死ぬの、すんごい怖いんだけど」
不意に、脳内を埋め尽くしていたそれが、
口から漏れた。
あ、と声に出したのも束の間。
「……でしょ」
さっきから無表情だった黛が
ようやく口を開いた。
ああ、なるほど。
彼は12歳という幼い時から、
死亡宣告を受けているのだと。
ようやく理解した。
不破は目を見開き何も言わずに
棒立ちしていた。
三枝の目から水滴が溢れた。
「死にたくない………
二人とずっと一緒に居たいよ………!」
二人はその現実から目を背けるようにして、
ここらで帰った。
〇〇〇 2132年 8月19日
一日一日が、
ただただ、
次々と消化されていく。
剣持によると、
三枝の身体はB2型に既に侵されていた。
あの、血を吐く少し以前から。
二人はもうあれきり見舞いに来なくなった。
いや、不破は今日来たのだが、
ろくに話もしていないし、
もう来れないと言っていた。
黛は成果を出すために勉学やらに
勤しんでいるだろうし、
不破だってD型のくせにB2型のように
成績が良いのだから、
国だって重宝するだろう。
俺は、独りなんだ。
最初から気付いていた事なのだ。
ああもう。
認めてしまえ。
俺に生きる価値など無かった、と。
✕ ✕ ✕ 不破side
「やっべプリント忘れた……!」
小走りに教室に向かった。
扉に手を掛けた、その時。
「ヴッ………!…」という呻き声と、
床に液体が落ちる音が聞こえた。
入っちゃいけない気がして、
扉の小窓から覗いた。眼を見開いた。
………明那が、血を吐いている。
明那はB2型だった?
その事実に頭が混乱した。
全部の意味で大好きな明那が、
吐血というもので傷付いていることに
傷付いた。……どうしたらいい?
気付けば踵を返して走り出していた。
〇〇〇 2132年6月11日
ベッドに身を預け、上半身を起こした明那。
異様な色をした点滴に口元が歪んだ。
「明那入院したってマジなんだー!」
ただ、それに気付かれぬ様に。
いつも通り。
普通に。
✕ ✕ 不破湊 生前の日記より抜粋
8月19日夜
『…普通ってなんだっけ?』
8月31日朝
『明日、明那が死ぬ。なんで明那が死ぬんだ?
どうして俺じゃないんだ? 黛が死んだら?
俺は独りか?』
〇〇〇 2132年6月11日 黛side
明那がB2型だった。剣持さんから聞いた。
来週提出のレポートを書いていた手が止まる。
「どうせ死ぬなら俺と…」
とか、明那が聞いたら引くであろう
サイコパスな発言をした訳だが。
そうだな、明那と死のう。
湊もそうしたかったら三人かな。
止めてくれるような友達も家族も
居ないのだし。
何でもないことのように、うん、そうしよう
と決めた姿は、
機械的で、無機質だった。
△ △ △ sideなし
●●● 2132年8月31日
階段を駆け上がる音が聞こえ、
扉が勢いよく開いた。
「ッ…ハアッ、ハアッ……二人とも!」
三枝と不破は目を丸くした。
「なんで灰が…」
「死のうと思ったから。明那と。」
二人は更に目を丸くした。
「お前っ、明那と死ぬって……
B2型だって知ってんのか?」
「剣持さんから聞いた、明那に言った次の日」
「あー、剣持さんのクソ…」
じゃなくて、と不破が切り出した。
「お前の誕生日はまだ先だろ?
一緒に死ぬってどういうことだよ」
黛の顔は恐ろしい程に、全く変わらなかった。
「明那、誕生日の直前にそこから落ちて
死ぬつもりだったでしょ。
だから、一緒に落ちようと思っただけ」
「は?明那、お前…本当か?!」
三枝は顔を背けて小さく頷いた。
「なんで灰が知ってんの……だって、
B2型のせいで死ぬの嫌なんだもん」
己には共感できないそれに、
不破は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
黛が口を開いた。
「剣持さんが最近明那が病んでるって。
俺も分かってたし。明那は天邪鬼だから
自殺する気がしただけだよ……」
少し黛に感情が芽生えた。
根付く前にそれは枯れるのだろう。
「……もうすぐ12時だよ。明那、湊。
どうするのさ。」
不破の腕時計の長針がカチカチと鳴る。
点滅する星。汗が流れる。
「……俺は死ぬ」
「ッ!明那!!」
三枝はフェンスに身を乗り出した。
心臓の鼓動が一気に速くなる。
最初から遠かった距離は不破の足枷になった。
不破が三枝目掛けて手を伸ばした、
その時。
「…え?」
黛が三枝と手を繋いでいた。
だが、それは自殺を止める訳でもなく。
「…行こ」
確かに落下を促していた。
刹那、静かに音も無く、二人は
落ちた。墜ちた。堕ちた。
更に、不破の足は空を蹴った。
「………え」
それはそれは間抜けな声だった。
「は、ヤバ、死ぬっ…!」
「湊」
黛と手を繋ぎながら落下する三枝が、
泣きそうな、満面の笑顔をしていた。
「おいで」
見た彼は、幻なのだろう。
差し出された片方の手に、
不破は縋るように力強く掴んだ。
……ああ、俺、死ぬんだ。
三人同じ事を考えていたのは誰も知らない。
不破は、堕ちていく二人に対して
これ以上無い程に微笑んだ。
二人となら死んでもいいと思ったのは、
不破だけの秘密だ。