テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
nrs × rdo / 葵の正体 ②
★★☆
疲れ果て、ようやく家に帰った俺は、鍵を開けて扉をくぐった瞬間、背後から聞き慣れた声が響いた。
nrs ) お邪魔しまーす!
振り返ると、ニヤニヤした成瀬が立っている。どうやらこっそり後をつけてきたらしい。この街じゃ、尾行なんて朝メシ前だ。だが、まさか同僚にやられるとは。
rdo ) おい! お前、マジでやめろって!
キレながら成瀬を追いかけるが、成瀬はすでに家の中へ侵入。リビングを抜け、寝室のドアを開けてしまった。そこには、葵として使うウィッグ、ドレス、化粧道具が無造作に置かれている。ドレッサーの上には、Twixに投稿したアクセサリーや香水瓶が並び、まるで別人の部屋のようだ。
成瀬は呆然と立ち尽くしていた。
nrs ) お前、これ…どういうこと?
彼の声は驚きと戸惑いに満ちていた。俺は血の気が引くのを感じ、喉が詰まる。
rdo ) …っ! ちがっ…!
言葉を絞り出すが、続きが出てこない。成瀬はドレッサーに目をやり、葵のTwix投稿で使ったシルバーのネックレスを見つける。
nrs ) しかもこれ…葵ちゃんの…もしかして…
彼の視線が俺に突き刺さる。俺は観念したように肩を落とし、床を見つめた。
rdo ) …キモいよな、オッサンが女装だなんて。ごめんな、こんな趣味、気持ち悪いって分かってる
成瀬はしばらく黙っていたが、突然くすっと笑った。
nrs ) キモい? いや、めっちゃビックリしたけど…キモくねえよ。つか、葵ちゃんがらだおさんだったって、マジで頭整理しきれねえ
彼はベッドに腰掛け、俺を見上げる。
nrs ) てか、らだおさんめっちゃ美人だしなー、そりゃーTwixでバズるわけだ
俺は顔を上げ、成瀬の意外な反応に目を丸くする。
rdo ) …は? お前、気持ち悪くねえの?
nrs ) 俺、葵ちゃんのファンだったんだよね
成瀬は悪戯っぽく笑い、スマホを取り出して葵の投稿を見せる。そこには、俺が先週アップした、夜の街を背景にしたドレス姿の写真があった。
nrs ) この写真、俺のイチオシ
rdo ) …わざわざ見せるな
照れ隠しに成瀬の肩を軽く叩くが、どこかホッとした気持ちが胸に広がる。この街では、秘密がバレれば嘲笑や噂の的になる。それなのに、成瀬の反応はあまりにも純粋で、俺の心を軽くした。
成瀬は立ち上がり、俺に一歩近づく。
nrs ) なあ、らだおさん。葵ちゃんの姿、もう一回見せてよ。生で
彼の声はどこか真剣で、目は俺を真っ直ぐ捉えていた。俺は躊躇したが、成瀬の純粋な好奇心と、どこか熱を帯びた視線に押されるように頷いた。
rdo ) …分かったよ。ただし、絶対誰にも言うなよ
___
数十分後、葵としてメイクを施し、ワインレッドのドレスをまとった俺が寝室に戻ると、成瀬の目が見開かれた。この街のネオンを思わせるアイシャドウと、流れるようなウィッグが、俺を別人に変えていた。
nrs ) マジで…すげえ。いや、綺麗すぎるだろ
成瀬は感嘆の声を上げ、俺に近づく。
nrs ) 葵ちゃん…いや、らだおさん。どっちでもいいや、めっちゃドキドキしてるんだけど
俺は成瀬のストレートな言葉に頬が熱くなるのを感じた。
rdo ) お前、ほんとバカだな…
と呟くが、成瀬の手がそっと肩に触れると、言葉が途切れる。
nrs ) なあ、らだおさん。俺、葵ちゃんにガチで惚れてたんだ。で、今、目の前にいるのがらだおさんでも…全然気持ち変わんねえよ
成瀬の声は低く、熱っぽい。俺は目を逸らそうとしたが、成瀬の真剣な眼差しに捕らわれる。
rdo ) …そんなこと言うなよ
声は震えていたが、成瀬の手が頬に伸び、そっと引き寄せられる。唇が触れ合い、俺の心は一気に加速した。成瀬のキスは優しく、しかしどこか強く、俺を飲み込むようだった。 この街の喧騒も、警察官としての重圧も、この瞬間だけは遠くに消えた。
二人はベッドに倒れ込み、成瀬の手が葵のドレスをそっと滑る。俺は恥ずかしさと高揚感で頭がクラクラしたが、成瀬の熱い視線と触れる手に抗えなかった。
nrs ) らだおさん…いや、葵。めっちゃ綺麗だ
成瀬の囁きに、俺はただ身を委ねるしかなかった。成瀬の指がドレスの裾をたくし上げ、俺の肌に触れるたび、電流のような感覚が走る。俺は声を抑えようとしたが、成瀬の熱い息遣いと優しい動きに、抵抗する気力は溶けていった。
★★★
翌朝、俺は成瀬の腕の中で目覚めた。窓の外では、この街が朝の喧騒を始めている。昨夜の出来事が夢のように感じるが、成瀬の穏やかな寝顔が現実を教えてくれる。
俺はそっと微笑み、成瀬の髪を撫でた。
rdo ) …バカ
呟く声には、愛情が滲んでいた。成瀬は目を閉じたまま、くすっと笑う。
nrs ) ん…何だよ、葵ちゃん
rdo ) その名前で呼ぶな、むず痒い
俺は軽く成瀬の胸を叩くが、笑いが止まらない。成瀬は目をゆっくり開け、俺をじっと見つめる。
nrs ) なあ、らだおさん。昨夜、マジで最高だったよ
rdo ) …ぅ、うるさい…
nrs ) へへ、でも俺、葵ちゃんもらだおさんも、どっちも好きだから。いいよね?
俺は照れ隠しに目を逸らすが、成瀬の手が俺の手を握る。その温もりに、俺は素直に頷いた。
rdo ) …お前には敵わねえよ
___
その後、葵が青井らだおだと街にバレることはなかった。成瀬は約束を守り、誰にも話さなかった。この街は、相変わらず犯罪と噂話で溢れているが、俺たちの秘密は、署での日常の中で、ふとした目配せや夜の密かな時間で深まっていった。
ある日、署のロッカールームで、成瀬が俺にこっそり話しかけてきた。
nrs ) なあ、らだおさん。今夜、葵ちゃんに会いたいな
rdo ) …お前、ほんと懲りねえな。署でそんな話すんなよ
nrs ) へへ、誰も聞いてねえって。で、どう?
俺はため息をつきながらも、笑みを隠せない。
rdo ) …分かったよ。ただし、今回はお前が晩メシ用意しろよ
nrs ) お、了解! レギオンでなんか買ってくるわ!
成瀬はウキウキした様子でロッカーを閉め、俺は小さく笑った。
___★
俺は葵としてTwixに投稿を続け、成瀬はそれをこっそり「いいね」しながら、隣で笑うのだった。ある夜、俺の家で、成瀬は俺の手を握り、この街の夜景を見ながら囁いた。
nrs ) 葵ちゃんも、らだおさんも、どっちも俺の大事な人だからな
rdo ) …お前、ほんとバカだな
俺は照れながらも、その言葉に心から温かさを感じた。この街は、犯罪と喧騒に満ちているが、俺と成瀬の秘密は、この混沌の中で、静かに、しかし確かに輝いていた。
終
コメント
6件
まじですきです心温まりすぎる……
うああああああ、!!!!! 好き!!純愛最高!!!!