私は、仕事帰りにとある古本屋に入った。
どこか懐かしく、どこか落ち着くような感じだった。
店主は、若い少女だった。
その女少女は私を見た瞬間
「あなた、冒険をしたそうね」
と言った。
確かに私は、変わった所によく行く。
いつの間にか、その少女は私にたった一冊の本を渡した。
「この本はあなたの人生を大きく変えるかもね。お代はいいわ。」
そう言って、少女は、店を閉めた。
私は、変わったような場所に奇妙に思いながらもどうしても好きになった。
手の中にある一冊の本を持って、家路についた。
私は家に帰った後、そのまま寝転がった。古本屋で貰った一つの本を持って
その本は題名も無ければあらすじもない。奇妙な本であった。
それでも魅入られる。
知らぬ間に私はその本を開いていた。
舞台は中世ヨーロッパ。1人の少年が変わらない日常を送る。そんな話だ。
普通なら、何か機転があったり、変わった世界に行く。そんな話であったら人は好んでいたであろう。
この本は、周りから見たら駄作であろう。
でも、逆に考えよう。
この時代はよく、戦があったはずだ。この少年はその中でも平和の暮らせた。
つまり、この話はあり得ないはずだ。その当時は飢餓などで亡くなる可能性が高かった時代だ。
そう考えると、この話は少年の妄想となる。理想の世界。そう考えた。それだけの話。
笑って、美味しい物を食べて、平和に暮らす。まずまず難しい話である。この話の結末は、少年が穏やかな顔で眠る。
わかる人はわかる結末。あまり、言わない方が良い結末。この作者は何を伝えたかったのか。今はまだわからない。
それにしてにも、この本を売るとは…前の持ち主は、なぜ、こんな面白い本を手放したのか…
懐かしいじゃないか
気付かないとは…まったく、世の中にこんな人間もいるもんだ。
…にしても、あの店の少女。見たことあるような…いや、気にしない方がいいか
この本は何年前にできた?最近か?
20年前…ああ。私が8歳の頃か
懐かしいな〜、この本に似たやつ読んだな〜
あの本…どこにしたっけ?
…明日、もう一回行くか
翌日、珍しく仕事が休みの日に、あの古本屋へ向かった。
しかし、昨日あったはずの古本屋は無くなっていた。代わりにあったのは空き地であった。
しょうがない…昨日の少女のことを考えるか…
肌白くて…黒色が似合うようなストレートなボブ。
そういえば、20年前…あの子に似た子クラスいたな〜
あの子、どこか遠くの場所へ行ったらしいけど…どこ行ったのかな?
もう一回、みたいな〜
そういえば、あの子。本書いてたな。平和そうな話。私、その子に貰ったんだっけ?
売ったけど。
つまらない話だったな〜、でも、今思ったら面白いかも…
名前もない。あらすじもない。
制作段階の本。
また、会いたいなー
ああ、そうか
もう会えないんだった。
あの子は…
私がいじめて、もういないんだった。
コメント
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いじめについて、凄く深くて個人的にすきです