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お花交換し合うゆり組可愛過ぎて、花言葉もすごく素敵ですー😍michiruさんの書く優しい雰囲気のお話大好きです🥰
はいすきゆり組さいこーーー❤️💙🌹💠
雨で頭が痛いとソファに転がったまま、薬が効いて寝てしまった翔太を撫でる。
窓の外を見ると、しとしと、という擬音語がぴったりの降り具合。
午前中はまだ天気が良かったので、2人で紫陽花を見に隠れ名所を訪れた。
紫陽花が見頃になったら、俺と翔太は恒例行事として毎年見に出かける。
いつもは素っ気ないけれど、これだけは翔太が『行こう』と言うのだ。
時は、幼稚園まで遡る。
翔太が家に咲いたという紫陽花の切り花を俺にひとつくれた。
当時まだあまり見る機会のなかった、白い紫陽花。
茎は短くほぼ花の部分だったし、後から勝手に切ったことを親に叱られたそうだが、そんな貴重な白い紫陽花を俺にくれた事が純粋に嬉しかったのを覚えている。
それから何年かして、事務所に入って再会した。
仕事が一緒になって思い出話をしていると、翔太が
💙「俺が紫陽花あげたの覚えてる?」
と聞いてきた。
❤️「覚えてるよ、なんかすごい印象に残ってる」
💙「マジで?」
その時の翔太はなんだかとても嬉しそうだった。
そして、それからしばらくして梅雨の季節に翔太がまた紫陽花をくれた。
それはまた白い紫陽花の切り花だった。
持ち帰って家族に話すと、家族も幼稚園の時の紫陽花は覚えていたようだ。少ししてから、『これお返ししな』となぜかラベンダーのブーケを持たされた。
そのやり取りは何となく毎年続いた。
そしてグループのデビューが決まったその年、翔太からもらった紫陽花は初めて青だった。
メンカラにしたのかな、くらいに思っていて、俺も合わせて赤い薔薇を返したらその時から翔太の様子がおかしくなった。
何度も俺を見ては恥ずかしそうに反らして、ずっとソワソワしている。今まで普通に話していたのに、翔太は俺が話しかけると毎回しどろもどろになって、そのうちぎこちない関係になってしまった。
それでも紫陽花の季節が来たら翔太からは青い紫陽花が渡され、俺は赤い薔薇を返していた。
やがて目黒、ラウール、康二が加入した。
以前から仲が良かったらしい目黒と翔太は、幼いラウールを含めてすぐに打ち解けていつもつるんでいた。
自分がうまく馴染めなかったのもあるけれど、翔太の屈託ない笑顔が目黒やラウールに向けられているとどこか胸が痛んだ。
そんな俺を佐久間が気にかけてくれ、一緒にいるようになった。
阿部もたまに一緒で紫陽花と薔薇のやり取りの話になった時、すごく驚かれて今すぐ花言葉を調べろと言われた。
スマホに表示された内容を見て佐久間はキャーと叫び、俺は唖然としたけど。
また紫陽花の季節が来て、翔太が青い紫陽花を手にして家に現れた。
『次持ってく』と言われたので、俺も薔薇は準備済だ。
💙「やる」
❤️「俺も、これあげる」
リビングに通して、後ろに置いていたバスケットから飛び出した大きな薔薇の花束にあんぐり口を開ける翔太。
❤️「ごめんね、やっと意味がわかった。これが俺からの返事。99本あるよ」
翔太は口を開けたままスマホをタップし、しばらく凝視したあと顔をあげて、『ほんとに?』と呟いた。
❤️「本当に。自分の気持ちにも、翔太の想いにもなかなか気づけなくてごめん」
💙「涼太ぁ」
翔太が飛び込んできて、花束に先に体当たりしたので部屋中に赤い薔薇の花びらが舞った。
目の前が花びらで真っ赤になった光景は今でも忘れられない。
俺が鈍かったばかりか、意味を勘違いしてお返しをしていたせいで長い事期待させながら待たせてしまった。
翔太も翔太で、なんでそんな壮大な察してをしていたのかわからないし、俺の胸で『涼太、涼太好き、ずっと好きだった』と好き好き連発して、それならもっと早く口で言えただろうと思いはしたけど黙っておいた。
それから、贈り合いの代わりに紫陽花デートが定番になった。薔薇は翔太のリクエストで、誕生日に毎年贈っている。
紅茶を飲んでいたらソファの翔太がもぞもぞ動き出した。
❤️「体調どう?紅茶あるよ」
💙「マシんなった。紅茶なに?」
❤️「ローズヒップティー」
翔太は目を細めて『欲しい』と笑った。
終