本部の会議室では、緊迫した空気が流れていた。今回の事件は、
ただならぬ事態に発展していた。メイが襲われ、
魔獣によって一人が殺されたのだ。
その事実を前に、彩国(さいこく)の司令官である鷲尾(わしお)が激昂していた。
「どういうことだ!私の隊員が一人やられているんだぞ!」
鷲尾は怒鳴りつけた。「すぐにその魔獣を捕まえろ!」
國光は、冷静さを失わずに答えた。「たしかに魔獣にやられたようだね。」
凌も加わり、さらに詳細を追求する。
「ですが、なぜ隊員たちは人目につかないあの場所にいたのでしょうか
そのうえ、我々の隊員が打撲で腫れ上がるほど暴行されていたのは、
あなたの部隊が関与している可能性が高いと考えられます。」
鷲尾が反論する「それがどうした、単なる喧嘩だろう。お前らの隊員が無能すぎるんだ!
もし軍を出動さないというのなら、俺たちが討伐するまでだ。」
この言葉に、國光は静かに目を細め、鋭い視線を鷲尾に向けた。
「魔獣を狩るのは好きにすればいいさ。しかし、次に僕の隊員に手を出すことがあれば、
僕は容赦しないよ」
その言葉は氷のように冷たく、相手の心を貫いた。
「その覚悟はあるんだろ?」國光は静かに問いかけながら、
相手の心の弱さを見透かすような鋭い視線を送った。
鷲尾は「くっ!」と思わず息をのむと、その迫力に圧倒され、慌てて部屋を後にした。
凌は心配そうに尋ねる。「よろしいんですか、この地で魔獣狩りをさせて」
國光は考え込むふりをしてから答えた。「うーん。ま、先に見つけて討伐しちゃいましょう。」
「まったく」と凌はつぶやいた。
このやり取りの中で、緊張が高まる一方、それぞれの立場と思惑が交錯していた。
鷲尾の激昂、國光の冷静さ、そして凌の懸念。この三者三様の対応が、
今後の波乱に満ちた展開を予感させるのだった。
一方、退院したメイはこの度の事件により、3日間の待機命令を受けていた。
その命令に従い、彼女は自室で報告書に向かっていた。
執筆に集中していたが、ふと手を止めて窓の外を見る。
「今頃、みんな魔獣討伐の準備をしているのかな」とメイはつぶやいた。
その声には、仲間たちと共に戦場に立てない悔しさと、彼らの安全を願う気持ちが込められていた。
メイは椅子から立ち上がり、部屋の隅に置いてあった練習用の木刀を手に取った。
気持ちを切り替えるためにも、体を動かすことが必要だと感じたのだ。
病院で蓮と誓った、強くなるという思いと、魔狼に言われた言葉を胸に、
メイは決意を新たにし、静かに部屋を出て練習場へと足を運んだ。
練習場に到着すると、メイは深呼吸をし、木刀を構えた。
日差しが差し込む中、彼女の影が床に映し出される。メイは一心不乱に木刀を振り始めた。
その動きは、まるで仲間たちと共に戦っているかのように力強く、そして正確だった。
「私も、ここでできることを全力でやるんだ」とメイは心の中でつぶやいた。
彼女の背中には、仲間と肩を並べて戦うことを夢見ながら、特別な覚悟と決意が内に生まれていた。
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