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俺の生徒はバカばかりだった。おっと、ダジャレじゃねーからな?
俺の息子も賢くは無かった。だが、今は立派に大学を卒業した。俺だって昔はあんぽんたんのアホだった。もちろん、こうして教師になれているのも運命というか必然というかよく分からないもののお陰様なのも事実だ。
「佐久間先生?聴いてますか?」
「あぁ、聴いているとも。」
今、俺が話を聴いている男子生徒から動揺を感じた。なんせ、こいつからは脱力感をひしひしと感じているからだ。こいつの名前は光輝。光輝はクラスの中心人物だ。だが、今は裏回しのような立場に立っている。つまり、陰キャでもあり陽キャなのだ。光輝はこれまでの俺が勤めてきた生徒とは何かが違う。放っている覇気が違うのだ。真面目なフリしてずる賢い面がある。
俺と放課後話すようになったのはイジメ事件が他クラスで起きてからだ。光輝は人一倍、正義感が強い。だが、その面周りに流されやすく皆の意思に反することが出来ないらしい。だが、俺は気づいている。光輝は昔の俺と同じで弱虫なんだ。周りに否定されるのを恐れて自分の意思を失った無気力な俺に。
そんな光輝に俺はこう言った。
「出し惜しみしてんじゃねーよ!負けんじゃねーよ!!」
言われたまんまの光輝ではなかった。俺に
「先生に、何が分かるんですか!?僕の気持ちなんて分かりませんよね!!」
と、言うからわざと。
「分かんねぇよ!昔の俺だって分かんなかったから。」
その言葉を聞いた光輝は俺を廊下に連れていった。光輝は少し安心したかのような表情で
「僕たち同じ穴の狢だったんですね。」
と、俺の手を握った。それから俺と光輝は学校終わりに毎日話す習慣ができた。光輝は部活には入らずクラブチームに参加しているため放課後はあいつにとって有意義な時間だった。だから、こうして話しているのだ。
光輝は俺と違って自信に満ちている。光輝自身何かを考えている訳では無い。俺は光輝を利用してやり直しを図る予定だった。
「もう、帰る時間ですね。」
いつも隣のクラスで理系科学部がこの時間に帰るからそこを起点に帰るよう促しはしているだが、どうにも上手くいかないのだ。
「明日も、光輝と話すのか…」
光輝は不満そうに
「佐久間先生は僕の話だけ聞いていればいいんですよ」
と、怒りを顕にした。俺と光輝は似た者同士だが、一歩先に光輝は待機していた。これからもずっと続くんだろうな。