ベースとなるウエディングドレスが決まって、彼と一緒にデザインのイメージを固めていった。
結果──、ドレスのスカート部分はシルク・オーガンジーを花びらのように幾層にも重ね合わせ、チューブトップの胸元には、同じオーガンジーで造る大輪のダリアの花をあしらったものをオーダーすることになった。
一方で「私の衣装は、何もいじらなくていいから」と言う彼へ、
「幸せは、あなたと共有したいので」
そう心のままを伝え、ブライダルフェアのモニターで着たシルバーグレーのロングタキシードの襟元に、私と同じダリアの花を、金糸と銀糸の刺繍で入れるオーダーを加えてもらうことにした。
そうして、そろそろ招待状を送る時期になり、会社でいつもお世話になっている方たちには、手渡しをすることにした。
菜子さんへは、「この度、結婚をすることになりました。こちらは招待状ですので、よければいらしてください」そう口頭で伝えて、招待状を差し出した。
「……まぁ、本当に! おめでとう!」
満面の笑みで祝福をしてくれた菜子さんに、
「お相手は、どんな方なの?」
と、問いかけられて、「えーっと……」と、ちょっと言葉に詰まった。
「菜子さんも知っていられる人で……その、クーガの……」
そこまで話すと、「まさか、貴仁君なの⁉」と、彼女から驚きの声が上がった。
「その……まさかです」
恐縮しきりで返すと、
「本当に! よかったわねー!」
と、菜子さんは手放しに喜んでくれた。
「よければ馴れ初めを聞かせて。もう〜今日は、飲みに行って、とことん聞かせてもらうから。ほらカバン!」
仕事終わりだったこともあり、カバンを持たされそのまま居酒屋へご一緒することになった。
「さぁ、菜子お母さんに、教えて?」
お座敷に向かい合わせに座り、そう切り出されると、なんだか本当に亡きお母さんに結婚の報告をしているようにも感じられて、ちょっぴりしんみりとした気分にもなった。