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・異世界wrwrdの要素が含まれます
・ゾムゾム団しか出ない
・軽率なキャラ崩壊
・二次創作
・オリキャラ
――
ぽつぽつ、ぽつぽつ、頭に響く。頭に響く。
いたい
いたい
上からこえがふってくる。それといたいもの。
ごんごん、ぬめぬめ、
あかいあかいのが、頭から出てくるの。
あついあつい
いたい、いたいなぁ
あとちょっと、きっとあとちょっとでやむから、
ああでも、いつもよりいたいなぁ
ぽつぽつ、ぽつぽつ頭に響くの
――
スラム街。
そこは生きる権利を喪ったもの、”幸せ”を授与される権利がないものが集まる、政府に見放された非合法の街。
ひもじいと怪我は当たり前。
死という概念を纏わせながら生きる彼らは裏社会に足を踏み込ますことを強制されながら存在されていた。
そんな人々を横目で拝観する男が1人。
迷彩柄のフードで顔を覆い隠し、ポケットに手を突っ込んでいる。
その異様な風貌からか、誰も彼に近付こうとしない。
1つの影以外は。
きらりと反射し鈍く光るナイフが男を捉える。
「うおっとッ!!」
「…!?」
瞬時に気配を察知した男がナイフを避け、影を睨みつけた───が、すぐに目を見開くこととなった。
ナイフを持った影とは、幼い…まだ7歳程であろう少女だったのだ。
布を身に巻き付け、体型を隠す様にしながら困惑と恐怖と疑問が渦巻く瞳を男に向ける。
「…ッ!!」
「よッ!ちっこい癖に結構速いなお前!!」
男は少女の素早い横振りを飛び避け、ナイフを蹴り飛ばす。
ナイフはからんっと軽快な音を奏でて、近くの地面に転がった。
少女は取りに行くことを諦め、腰を据(す)え奔馬(ほんば)のように奔る。
地面を蹴り上げ、鋭い飛び膝蹴りを男の顔面に放った。
風で捲れた布の間から見えた少女の表情は──────泣いていた。
子供が癇癪を起こす寸前の様な、もう限界だと啜り泣いているかの様な表情(かお)。
男はそれを不服そうに見下げた後、膝蹴りとして上げられていた脚を掴み上げ少女の体を脇の間に挟んだ。
そのまま歩き出す。
少女はその一連の動作に目を見開き沈黙していたがら我に返り喚き始めた。
「う、がぁアァ!!」
男は応えない。
「ぐぅああぁああ!!」
男は応えない。
何かを悟った少女は下唇を噛み、ぽろぽろと潤んだ瞳から涙を流し始めた。
男はやらかしたと言わんばかりに挙動不審になり、…どこかに走り出した。
暫くして男が立ち止まったのはある居酒屋だった。複数人の騒がしい声が壁を貫き外まで響く。
誰もが入りたがらなそうな店のドアを、躊躇なく開けた。
「お、ゾムさんだ!」
「帰ったんですかい」
「おう、ただいま」
揚々と話し始める男達。
少女にとってその光景は、不安と恐怖を煽るに値するものだった。
これから起こるかもしれない惨状に萎縮し、顔を青く染めた。
「頭(かしら)、コイツは?」
「そこら辺で拾った」
「っ、ぁ…さわ、るな!!」
少女は渾身の力で男の拘束から離れ、いつの間にか拾っていたナイフを構えた。
それを見た男の仲間達も戦闘態勢に素早く入れ替わった。
だが男は体制を変えるわけでも無く、ただカタカタと恐怖に揺れるナイフを見つめていた。
「やだ、…やめろ……、こっちに、来ないで」
聞こえるか聞こえないかの声量で零している言葉。それは “殺すことを強制されてきた” 少女の本音であった。
男はゆっくりと少女に近付く。
すると少女は異常に肩を跳ね上がらせた。
「っぅ、あぁああッ!!!」
男の胸に正確に吸い込まれていったナイフ。
そのナイフの刃先は男の手によって握られ勢いを無くし、止まった。引っ張ってみてもビクともしない。
焦る少女の顔を男が覗き込んできた。
そして手を─────頭に置いた。撫でられる。
「ぁ…う?」
「そんな顔でナイフなんか振り回すんじゃねぇよ。危ねぇぞ」
頭から広がっていく他者の体温に、自身へと向けられる哀憐の眼差しに少女は安心からか涙を零した。
暖かな他者の体温も、撫でられるという感覚も、人の優しさも、少女にとっては初めての経験だったのだ。
しゃくりを上げながら泣く少女の目線に合わせて、男がしゃがむ。
「なぁお前、俺の家族(ファミリー)にならんか?」