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#エルフ
桜井正宗@オートスキル1巻発売
6,950
上野文
4,013
あのち
226
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第18話
あれから半強制的にベッドの中に入らされた。
ちょっと自分でも危ないと自覚していたから、逆らわなかったけど……ベッドの中って僕が泊まる予定だった宿屋のベッド。
一応だけど、アニカはまた別室だから違うよ。
「……ちょっと無理をし過ぎたんじゃない? 最近、様子が変だったし……」
アニカがそこまで言いかけると僕は本音が漏れ出てしまった。
「間抜けだよね……国唯一の姫を任されている騎士が出先で体調を崩すなんて……」
「ロルフ……ロルフも人だよ体調を崩すなんていつ起こっても分からないんだから。それに、疲れが出たの。だから安静にしてて」
アニカがそこまで言うと僕も口を開けなかった。
安静にしないといけないのは自分でも分かってたし、アニカの言っている事は合っている。人はいつ何が起こるなんて分からない。
それは、自分で体験した事がある。
ソフィーだってお父さんだってお母さんだって……ある日、突然僕の前からいなくなった。人はいつ何が起こったって可笑しくない。アニカだって分からない。もちろん僕だって……
僕の手は震えていた。止められない。もし、これがアニカを護らないといけない時になったら……アニカは……
「ごめん。少し言い過ぎたかも……」
「ううん。アニカの言っている事は合っている。ただ、これから人に起こる事なんて誰も分からないから……少し、苦しくなった」
「自分を追い込まないでね。私が頼りにできる数少ない人にロルフも入っているんだから」
僕が頷くとアニカは部屋から退室した。
はぁ……情けない。
僕はそう心の中で呟いてから目を瞑った。
次の日は苦しかった。熱が上がっていって殆ど食べられるような状況になかった。でも、今日の内には帰らないといけないので、馬に跨がらないといけない。
「え? でも彼はまだ……」
「そういう契約です。いくらこの国唯一の姫でもそのような事は受け付けられません」
僕が起き上がってロビーに向かうとそんな話が聞こえた。
……アニカ……
「うん。大丈夫だから、帰ろう」
「そう言っても体が……」
「大丈夫だから、ね」
僕はアニカを連れて宿屋から出た。
それから僕たちは馬に跨って王城へ帰った。アニカの反対を押し切っての判断だったけど、合ってたかな……?
「ほら、アニカも帰ったばかりなんだから休まない……」
「ロルフの方こそ。部屋に戻って寝てて」
そう言って部屋に押し込まれた。
「大丈夫だから……」
「大丈夫で済まさない……ん? 何? この本は」
そう言ってアニカが手に取ったのは喋りの練習の本だった。
あ、それは、その……そのままだよ……
「……夜遅くまで読み込んでたの?」
僕は頷くしかなかった。そんなに夜遅くじゃないけど……
「ロルフは自分にもっと甘くする修行が必要だね」
アニカは僕の本に目を落とした。
僕はその時までしか覚えていない。多分、寝てしまったのだろう。
「お兄ちゃん。疲れてきたよ。もうそろそろ、限界が来るかも……」
そういうソフィーの声が聞こえる。
「私はこの体がどうなろうと辞めないから。お兄ちゃんはそれまでに、お願い。私は生きているから」
僕はソフィーがそこまで言った時に飛び起きた。
今のは……
「っ……ソフィー……」
僕は一人しかいない部屋で唯一の妹の名前をポツリと呟いた。
夕方頃は、辛くなってきた。起き上がれなくて体が鉛のように重くて、熱くて、苦しかった。
そんなのが一晩中続いた。朝方になると少し落ち着いてきて寝る事ができた。
辛かった、こんな事は久しぶり。半年前、ベッドの上で泣いて病んでたけど、それは心の問題。
これは、体が鉛のように重くて苦しかった。
「ロルフ。お見舞いに来たんだけど、開けて良い?」
横になていると扉の向こうからアニカの声が聞こえた。丸一日聞いてなかった声は何だか懐かしく感じた。
「どうぞ」
僕はギリギリ聞こえるくらいの声で言った。すると、扉が開いてアニカが入っていた。
アニカの手にはバスケットがあった。
「体の調子はどう?」
「まだまだ熱いし、重いけど、昨日の夜よりかは全然楽になった」
「これ、食欲が出てからでいいから食べて欲しいなって……私、料理が下手だからこんなのしか作れないけど……」
そう言ってアニカはバスケットを机の上に置いた。
「ありがとう」
「うん。あ、後で医者も来るからよろしくね。体調が回復するまで、マルコさんとロザンナが交代でやってくれるから安心して」
シルビオさんは、遠くの街にいるから来る時は魔法が使える聖騎士と一緒に移動魔法みたいな魔法を使うらしい。
だから、そんな多い頻度で来るわけでは無い。
「ごめん。こんな事になって、迷惑かけて……」
「大丈夫だよ。そんな事より、自分の体の事を気にしてね。私は会議があるから、このくらいでお暇するね。お大事に」
「うん」
僕がそう頷くとアニカは部屋の外へ出た。
情けないな……
僕の感想はそうだった。
コメント
1件
読みました。体調を崩しながらも無理をしようとするロルフと、それを止めようとするアニカの距離感がとても良かったです。特に「自分にもっと甘くする修行が必要だね」というアニカの台詞が優しくて、心に沁みました。ソフィーの幻覚がちらりと見えたのも、ロルフの内面の脆さが滲んでいて気になりました。無理しないでほしいな、ロルフ…。