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はれる.
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
(佐久間視点)
「あぁもうっ!!あべちゃんのばかっ!!」
なんで、電話出ないんだよ!!!
既読もつかないし、電話出ないし!
なんなの!?
「さっくん、落ち着いてやぁ!」
「……う…」
焦るこーじの声を聞いて冷静になってくる。
そうだよね、落ち着かないと…
あべちゃんは、仕事中だから連絡つかないんだろう。
俺は息を吐きながらスマホをしまう。
運転をずっとこーじに任せたくせに、俺が冷静でいられないのはまずいもんね。
「とりあえず、家帰ろっか。ごめん、わざわざ連れ出したのにまた戻るなんて。」
「全然ええで!ちょっとしたドライブやん!」
あべちゃんが戻ってくるのを信じるよ。
だから、俺らは家で待ってるからね。
絶対、戻ってこいよ。
(阿部視点)
一見普通の生徒に見えるけど…
まだ情報不十分か。
タイムリミットは、3時間。
この時間をどう使うかが大事だね。
「今日はよろしくね。えっと、君は…」
まずは名前から。
向こうは俺のこと知ってくれてるみたいだしね。
多分、説明はいらないよね。
「僕?……僕は、望(のぞむ)。よろしくね、阿部先生。」
一瞬の間。
名前を言うのを躊躇ったか、名前を考えたか…
やっぱり、まだ決めつけるのには早そうかな。
そこからは、普通に授業が進んでいった。
望くんは理解力も高いし、成績が悪いわけでもない。
学校に行ってないから家庭教師を雇いたいって話らしいけど…
まだ、疑いは晴れない。
あと、30分か…
やっぱり、この子はただの生徒だったのか?
いや、何もないことが1番なんだけど!
でも、いくつか気になることが残ってる…
でも、普通の生徒の場合だったらこの質問は違和感でしかないし、人によっては失礼だとも思うよね。
その人その人の事情があるわけだし…
「ねぇ、阿部先生。」
「…ん?どうしたの?」
急に、望くんから声をかけられる。
どこかわかんないとこでもあったのかな?
今は…国語だね。
望くんの見てる教科書を覗き込む。
「これさ、なんて読むの?」
望くんが指さしてる文字…
「空疎…くうそ、って読むんだよ。意味は…」
望くんが、この漢字を読めないことに違和感を抱きながらも、ここは教師として意味も説明しようとする。
でも、それより先に
「外見や言葉だけで、中身や実質が伴っていないこと…だよね。つまり、外面だけで中身はなんもないってこと。でしょ?」
望くんが、説明してくれた。
………これは、俺に気づいて欲しいのかな?
望くんの瞳を覗き込む。
「………君、”本当の名前”は?」
俺の質問に、目の前の少年は怪しく笑った。
「僕の名前、空染だよ。望なんて綺麗な名前じゃない。」
やっぱり、こいつが空染だったのか。
と、いうことは…
「僕に気づいてくれてありがとね。”Snow Manの阿部亮平”先生。」
やっぱり、俺のことを知ってる上で呼び出したんだね。
「どうして、こんなことして俺に接触したの?」
「いいこと、教えてあげようかなぁってさ!」
警戒しながら、空染に問いかける。
でも、空染は笑顔のまんま。
フードの男とも、芙月とも違う感じ。
そういえば、真白さんもそうだな。
…それに、ふっかも、か……
強い人は、笑顔すらも操れるんだ。
「阿部先生に、勉強教えてもらったお礼的な?」
空染は笑いながら俺の耳に顔を近づける。
まるで、小さい子供が大人にコソコソ話をするみたいに。
「俺らが、”漆黒の龍を欲する理由”を、ね。」
その内容に、俺は息を飲んだ。
夕方、リビングには阿部以外のメンバーがそろっていた。
各々、ゲームをしたり雑談をしたり、自由に過ごしていた。
だが、佐久間は珍しく静かだった。
ガチャ
玄関の扉が開く音がする。
「……っ!!!」
すぐに佐久間はリビングから駆け出す。
転ぶ勢いで、急いで玄関へ向かう。
「あべちゃん!!!!!」
「佐久間…ごめん、心配かけ…うわっ!!?」
佐久間は阿部の言葉を遮り、ものすごい勢いで阿部に抱きつく。
勢いのあまり、阿部は後ろに転びそうになるのを何とか抑える。
それに、ものすごい強さで抱きつかれているのもあり、息が苦しかった。
だが、佐久間は絶対に離さない。
「あべちゃんのばかぁ!どんだけ心配させんだよ!!」
息ができないと必死に訴え、ようやく話して貰えたかと思ったら、今度は勢いは減ったが軽くタックルされる。
「……うん、ごめんごめん。心配かけちゃったよね。」
そんな佐久間の頭を撫でながら、阿部はリビングへ向かう。
メンバーに、話さないといけないことがあるのだ。
「みんな、聞いて欲しいことがあるんだけど…」
阿部の真剣な言葉に、自由に行動していた7人が動きを止める。
タックルを止め、軽い猫パンチを阿部の背中にくらわしていた佐久間も動きを止める。
阿部は、先程のことを話し始めた。
(阿部視点)
「漆黒の龍…それは、願いを叶えるためでしょ?」
“最も強い力を持つものが、願いを叶えることができる”
この噂が、全ての始まりなはず…
だから、漆黒の龍が最も強い力を持つっていう噂も広がって…
あれ…
そもそも、この噂って誰が流したの…?
そんな俺の思考を呼んだみたいに、空染が笑う。
「その噂を流したのは、フードの男だよ。」
「……え?」
フードの男、が?
「…なるほど、漆黒の龍を手に入れるためか。」
たしか、最後までフードの男は漆黒の龍を強く欲してた。
この噂を流せば、漆黒の龍…ふっかのことを見つけやすくなると思ったんだろうね。
…てことは、
「みんな、フードの男に騙されてる…?」
俺らも、芙月だって騙されてることになる。
でも、空染は首を横に振る。
「…この舞台には、あの女…芙月も乗ってる。あの女が、僕でも分かる嘘に乗るわけないからね。」
空染は少し嫌そうな顔をする。
もしかして、敵側は仲悪いのかな…?
でも、空染の言う通り。
芙月がこんなことに気づかないほどバカじゃないことなんて、嫌なほど思い知らされてる。
じゃあ、なんで…?
「男の嘘は、”本当になった”んだよ。」
「……は…?」
嘘が、本当に…?
フードの男の能力は洗脳。
芙月の能力は意識干渉。
誰も、そんな能力……
「……まさか…」
俺は、もしやと思って空染を見る。
空染もにっこり頷いた。
「俺が最初にその噂に憧れたら、それが本物になっちゃったみたいなんだ!」
空染の、能力…?
「それ…やばいね…」
相手が空染ってことも忘れて、思わず素の反応が出る。
空染の能力が、願っ物が叶うだとしたら、かなりやばくない…?
それこそ、なんでもありじゃん…
でも、空染はずっと笑ってる。
「大丈夫だよ。僕の能力はそこまですごくないからさ。」
「……え?」
そんなすごくない?
制限があるのか…?
「僕さ、めっちゃ見た目が子供じゃん?僕の特性なの。僕の実年齢は、30超えてるんだ。」
「……だからか…」
そりゃ勉強がよくできるわけだ…
いや、その特性と能力がどう繋がるの?
「だから、僕の能力は神様からの贈り物だよ。僕が成長しない代わりに、僕の願いを叶えてくれるんだ。」
空染は嬉しそうに笑う。
特性のデメリットの代わりのチート能力ってこと?
めっちゃズルくない、それ?
「でも、僕1人が願うだけじゃダメなんだ。」
「だろうね。それができてたら、君はもうこの世界を支配してるでしょ?」
「さすが先生。」
やっぱりね。
制限はあるみたいだ。
「まず、根本となる噂が必要。それも、僕以外の人が流した噂、ね。次に、それを大多数の人間が信じることが必要。」
「たしかに、漆黒の龍と願いが叶うっていうのは、裏社会ではすごい有名だね。」
最初のうちは、本当にただの噂だったんだ。
でも、それが周りの人間にどんどん広まってったんだ。
だから、空染の能力が発動したのかな。
「……ねぇ、阿部先生さ…」
空染が、真剣な目で俺を見つめてる。
「何?」
「ここに、阿部先生を呼んだ理由。知りたいでしょ?」
なるほど…
芙月が照にしたみたいに、俺に協力関係を結ばせたいってことかな?
それに、目的だってわかってるよ。
「漆黒の龍の所有者は誰?って聞きたいのかな?」
「さすがだよ。」
やっぱりね。
今日は、随分冴えてるみたいだ。
まだ、漆黒の龍は再現されてない。
みんなが漆黒の龍を狙ってるのに。
……それは、誰が漆黒の龍を最初に生んだかが分からないから。
もちろん、知ってるのはフードの男と芙月だけ。
でも、あの2人がその情報を流すわけないよね。
だって、あの2人も漆黒の龍を欲しいんだもん。
それを、空染も知らない。
だから、空染は能力が使えない。
………絶対に、教えない。
空染にだけはバレちゃダメだ。
空染にふっかのことがバレたら、多分強制的に漆黒の龍を出現させられる。
こいつにだけは、ふっかの情報を一切出しちゃだめだ。
俺の沈黙に、空染は少し不機嫌そうにする。
「あの女といい、君といい、みんなこの情報は隠すよね。」
あー…なるほど。
すでに芙月に聞いてたんだ。
だから、あの女って呼んでるんだ…
でも、相手が空染でよかった。
芙月相手だったら、俺はここまで冷静でいられなかっただろうね。
つまり、空染相手なら俺も駆け引きができる。
「…空染は、フードの男とか芙月が叶えたい願いが何かはわかってるの?」
「いやぁ…あいつらみたいに僕は狂ってないから、狂人の思考はわかんないよ。」
あはは…
酷い言われようだな。
……でも、否定もできないか…
「……じゃあさ、空染は何を叶えたいの?」
「…僕の…?そうだな…そこは秘密だよ。」
これには乗らないか。
まぁ…結果としては十分かな。
空染から情報は引き出せた。
俺に対して、空染からは敵意が感じられない。
フードの男とか芙月よりも全然話が通じる。
たしかに、狂人2人に比べたら全然マシだよな。
「まあ、いいや。今日はありがとね、せーんせい。」
「どういたしまして。」
その後は、空染と別れた。
そして、家に帰ってきたって感じかな。
「……よく、ここまで情報を引き出せたな。」
阿部の話を聞いて、真っ先に浮かぶ感想はそれだった。
岩本は感心したように呟く。
「相手との相性がよかったよ。それに、空染は元々、情報提供をしようと思って俺のこと呼んだみたいだしね。」
阿部は、小さく首を横に振りながら笑う。
だが、ここまで情報を得たのはSnow Manにとってはありがたいことだ。
「フードの男と芙月と空染…今は誰が優勢なんやろうね?」
阿部の話にところどころ頷きながら聞いていた向井が特に意図はない発言をする。
だが、それを真剣に考えるのが他メンバーなのだ。
「……たしかにね。主戦力はその3人…誰が今優勢なんだ…?」
ラウールと阿部が真っ先に考え始める。
その空気に流され、向井以外のメンバーも考え始める。
「……ぇ…?そんな真剣に考えるん?」
黙り込んだり、ブツブツ呟いたりする周りのメンバーに、向井は困惑する。
頭の中で整理していく。
「フードの男は、漆黒の龍について1番情報を持ってるよね。それこそ、1番ふっかと近い存在だし。」
阿部が、フードの男の長所をあげる。
「ただ、俺らのもつフードの男の情報も多いよね。それに、ふっかさんも今ここにいる。」
そこに、ラウールが短所をあげる。
「芙月も、かなり余裕ある感じだよね。全てを把握してる。漆黒の龍の情報はフードの男よりは少ないけど、全然1人で情報を掴めそう。」
続いて、芙月の長所を岩本があげる。
「でも、芙月にとって最大のカードであるはずの照を引き込む作戦は失敗してる。それに、最近は静かだよね。」
宮舘が短所をつけたす。
「それで、空染はあんまり読めない。それに、俺らは空染に関する情報をあんまり持ってない。接触したのも阿部ちゃんだけだしね。」
目黒が、空染の長所をあげる。
「でも、唯一ふっかが漆黒の龍の所有者であることを知らない。それに、能力もチート級だけど、制限が細かい。」
最後に、佐久間がしめる。
「……噂がほんとになった原因は空染みたいな感じだけどさ…もし、フードの男がそれを把握済みで噂を流してたとしたら……」
結局誰が優勢なのかに結論がつかないまま、うんうんうなっているところに、深澤がぽつりと呟く。
その言葉で、周りの空気が変わる。
「……どんだけふっかを求めてんだよ…」
渡辺が呆れたような、怒りを込めたように言う。
もし、深澤の仮説が事実だとしたら、誰もがフードの男の用意した舞台で踊らされていることになる。
ならば、1番優勢なのはやはりフードの男なのか…?
「…いや、だとしても、芙月はそれに気づくはずだよ。」
だが、フードの男が優勢だということに阿部は首を横に振る。
「つまり、芙月がどこまで把握してるかってとこだよね。」
阿部の発言にラウールも頷く。
「…芙月の唯一の読み違いが照なんだよね。でも、それ以外は全部読んでる。」
阿部も頷きながら顎に手を添える。
だんだん、7人は2人の高度な会話についていけなくなり…
「…てことは、芙月は全てを読んだ上でこの舞台に乗ってるわけだよね…みんな…?」
最終的には、阿部とラウールの会話になっていた。
「つまり、阿部ちゃんたちの中では、芙月が優勢ってこと?」
「……一応、ね。でも、俺らが芙月のことを過信しすぎてるだけかもしれないけどね。」
置いていかれた7人に、阿部とラウールは噛み砕いて説明をした。
結果、芙月がやはり優勢なのではないかという結論になる。
「……ここまでして、叶えたい願いってなんなんだよ…?」
佐久間が不思議そうに呟く。
多くの人間を巻き込み、高度な頭脳戦を繰り返し、たとえリスクが大きくても賭けに出る。
こんなことまでして叶えたい願いとはなんなのだ?
「…もしさ、俺らがなんでも叶えられるってなったら、みんなは何を願うの?」
唐突に、深澤がメンバーに問いかける。
「俺らの願い…?」
8人は目を丸くさせる。
「うん。なんでも叶えるよって神様が言った時、みんなは何を叶えて欲しい?」
深澤の問いかけに、8人は考える。
もし、なんでも願いが叶うのなら…
「俺は……ない、かな。」
岩本の言葉に7人も頷く。
「今が幸せでいられるなら、何もいらないよ。」
阿部がふっと笑う。
「……そっか…そうだよね。うん!俺もそう思う!」
深澤も柔らかく笑った。
to be continue…
コメント
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寺島あおいです🌷 第50話、読み終えました。 空染の“能力の正体”が明かされたのが本当にゾッとする反面、切なくもありましたね…。ずっと子どもの姿で、成長しない代わりに願いを叶えてもらえるという設定、すごく考えさせられました。 そして何より、最後にみんなで「今が幸せなら何もいらない」って言い合えるのが、この8人の強さだなって思いました。あべちゃんの“ふっかの情報は絶対に出さない”っていう覚悟もグッときました。 ほんとに、この物語の“静かな温かさ”が好きです。次回も楽しみにしていますね🤍