テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#異能力バトル
聖杯
523
聖杯
1,207
7
第五話 満ちる月、欠ける杯、そして無窮の剣界
満月の夜、冬木の街はいつもより静かだった。
風がない。
雲もない。
澄み切った夜空には、白く大きな月が浮かんでいる。
その光は、冬木大橋の鉄骨を銀色に照らし、川面に冷たい道を作っていた。
遠坂衛二は、その橋の上に立っていた。
隣にはアストルフォ。
少し後ろに衛宮士郎と遠坂凛。
さらにユイ・アインツベルンが、霊脈観測用の礼装を手に静かに立っている。
誰も軽口を叩かない。
いや、一人だけ、少しだけいつも通りだった。
「エイジ」
アストルフォが衛二の袖を引いた。
「手、繋いでいい?」
衛二は月を見上げたまま、少しだけ目を細める。
「戦闘前だぞ」
「だから」
アストルフォは迷わず言った。
「ボクがちゃんとここにいるって、エイジに分かるように」
衛二はアストルフォを見た。
桃色の髪が月光を受け、淡く光っている。
普段は太陽みたいに明るい彼が、今夜は月の光をまとって、どこか儚く見えた。
それが嫌だった。
儚いなんて似合わない。
消えそうなんて思いたくない。
アストルフォは笑っているべきだ。
明るく、騒がしく、可愛く、全力で衛二を振り回しているべきだ。
衛二は左手を差し出した。
「……少しだけな」
「うん。少しだけ」
アストルフォが手を握る。
柔らかい温度。
それだけで、胸の奥にあった緊張が少し和らぐ。
凛がその様子を横目で見て、何か言いたそうにした。
だが、今夜は何も言わなかった。
代わりに、宝石を一つ指で弾く。
赤い光が橋の上に広がり、周囲に人払いの結界が展開された。
「確認するわよ」
凛の声は冷静だった。
「月蝕教団が狙っているのは、冬木大橋地下霊脈に封印されている神杯の欠片。満月の霊的圧力を使って、封印をこじ開けるつもりでしょうね」
ユイが頷く。
「封印区画は三層構造。上層は通常霊脈。中層は神杯戦争後に追加された干渉遮断層。下層に欠片が眠っているわ」
「つまり、向こうはもう中にいる可能性が高い」
士郎が言った。
その手には、すでに干将・莫耶が投影されている。
「突入後は、衛二を中心に動く。凛とユイさんが霊脈を制御。俺が前衛支援。アストルフォは衛二の護衛」
「うん!」
アストルフォは頷いた。
「エイジから絶対離れない」
衛二は少しだけ苦笑する。
「戦況によっては離れる必要もあるだろ」
「やだ」
「即答かよ」
「戦術的に必要なら離れる。でも心は離れない」
アストルフォはそう言って、衛二の手を軽く握り直した。
「だから、エイジも離れないで」
「……ああ」
衛二は頷く。
「約束する」
満月の光が強くなる。
その瞬間、橋の下から鐘の音が響いた。
ごうん。
低く、深く、街の底を揺らす音。
普通の人間には聞こえない。
だが魔術師とサーヴァントには、はっきり聞こえる。
神杯の残響。
月蝕教団が、儀式を始めた合図だった。
凛の表情が鋭くなる。
「行くわよ」
冬木大橋の中央。
凛が地面に宝石を落とす。
瞬間、橋の影に隠されていた魔術扉が開いた。
一般人の目にはただの点検用通路に見えるだろう。
だがその奥には、冬木の霊脈へ降りる階段が続いている。
衛二は一歩踏み出した。
左手の令呪が熱い。
まるで地下にある何かが、自分を呼んでいるようだった。
器。
その言葉が脳裏をよぎる。
衛二は歯を食いしばった。
違う。
自分は器ではない。
遠坂衛二だ。
衛宮士郎と遠坂凛の息子。
遠坂家次期当主。
アストルフォのマスター。
そして、一人の人間だ。
「エイジ」
アストルフォが小さく呼ぶ。
「怖い?」
「ああ」
衛二は正直に答えた。
「怖い」
アストルフォは、嬉しそうに笑った。
「言えたね」
「おかげでな」
「じゃあ、次は一緒に行こ」
アストルフォが手を引く。
その手に導かれるように、衛二は階段を降りた。
◇
地下霊脈へ続く通路は、ひどく冷たかった。
コンクリートの壁に見えるものは偽装で、実際には古い魔術石材と霊脈制御用の符号が重なっている。
通路の奥からは、濃い魔力の匂いが流れてきた。
湿った土。
錆びた鉄。
燃え残った願い。
そんな匂い。
ユイが顔をしかめる。
「やはり封印が一部破られている」
「どの程度?」
凛が尋ねる。
「上層は突破済み。中層もかなり侵食されているわ。下層封印はまだ残っているけれど、儀式が進めば時間の問題」
「猶予は?」
「長くて三十分。短ければ十分」
「十分で終わらせるわよ」
凛は迷わず言った。
衛二は小さく息を吐く。
十分。
戦闘には長い。
儀式阻止には短い。
しかも相手は月蝕教団。
神杯戦争の残響を扱う集団。
普通の魔術戦では済まない。
「エイジ、左手」
アストルフォが言った。
衛二は自分の左手を見る。
包帯の下で、令呪が赤く光っていた。
熱い。
痛みに近いほどに。
「呼ばれてるな」
「行かなくてもいいよ」
アストルフォは真剣に言った。
「危ないと思ったら、ボクが抱えて逃げる」
「それは困る」
「ボクは困らない」
「アストルフォ」
「うん」
「逃げる時は一緒だ。でも今は、まだ逃げない」
アストルフォは少しだけ不満そうに唇を尖らせた。
それから、すぐに笑う。
「うん。知ってた」
「じゃあ聞くなよ」
「確認したかったの。エイジがちゃんと自分で選んでるって」
衛二は目を細めた。
アストルフォは、時々こうして衛二の核心を確認する。
器ではなく、人間として選んでいるか。
誰かの願いに流されているのではなく、自分の意思で立っているか。
衛二は左手を握った。
「俺は自分で行く」
「うん」
「でも、アストルフォと一緒に」
「うん!」
通路の奥で、黒い光が瞬いた。
影が来る。
士郎が一歩前へ出る。
「敵影」
黒いローブの魔術師たちが現れた。
数は六人。
その背後には、影でできた獣のような使い魔が複数。
ローブの胸元には、欠けた月と杯の紋章。
月蝕教団。
「遠坂衛二を確認」
一人が言った。
「器候補を確保する」
凛の眉が跳ねた。
「人の息子を候補呼ばわりとは、いい度胸ね」
宝石が光る。
次の瞬間、通路が赤く染まった。
凛の火炎魔術が、先頭の使い魔をまとめて焼き払う。
ただし火は通路を傷つけない。
敵の術式核だけを正確に焼く、遠坂凛の精密な破壊。
士郎が駆けた。
干将・莫耶が影を裂く。
黒い魔術師が呪弾を放つ。
士郎は剣で弾き、さらに投影した短剣を投げて術式の発動点を潰す。
「衛二、右!」
士郎の声。
衛二は反射的に右手を上げた。
「投影、開始」
透明な投影剣が現れ、通路の壁から伸びてきた影の鎖を斬る。
さらに五大元素の風を流し、鎖の軌道をずらす。
アストルフォが飛び込む。
「こっちだよ!」
桃色の残像。
アストルフォは影の獣の背を踏み台にし、くるりと回転して蹴りを叩き込んだ。
使い魔が霧散する。
その姿は戦場にあっても可愛らしい。
だが、同時に鋭い。
可愛いだけではない。
彼は騎士だ。
衛二のサーヴァントだ。
衛二は投影剣を三本展開する。
「火、水、風」
三本の剣にそれぞれ属性が宿る。
火の剣が術式核を焼く。
水の剣が汚染魔力を洗い流す。
風の剣が影の結合を断つ。
通路の敵が次々に崩れる。
しかし、倒した魔術師たちの身体から黒い光が浮かび上がった。
「願望残滓!」
ユイが叫ぶ。
「彼ら自身が術式の媒介にされている!」
「悪趣味にもほどがあるわね」
凛が舌打ちする。
黒い光は通路の奥へ流れていく。
倒された魔術師の願いさえ、儀式に吸われている。
衛二はそれを見て、拳を握った。
「使い捨てかよ……」
「エイジ」
アストルフォがそっと声をかける。
衛二は深く息を吸った。
「分かってる。飲まれない」
彼らを救えたかもしれない。
もっと早く来ていれば。
もっと強ければ。
そんな思考が頭をよぎる。
けれど今、それに飲まれれば前へ進めない。
衛二は術式解体用の短剣を投影し、倒れた魔術師たちから流れる願望残滓を切り離した。
「空で接続を断つ。水で浄化。地で固定」
黒い光が白く薄まり、霊脈に還る。
完全な救済ではない。
でも、儀式に利用されるよりはいい。
ユイが静かに頷いた。
「上手いわ」
「まだまだです」
「いいえ。返事としては、十分よ」
返事。
その言葉に、衛二は少しだけ救われる。
全部を叶えられなくても。
全部を救えなくても。
聞こえたと返すことはできる。
「進むわよ」
凛が言った。
一行はさらに地下へ進んだ。
◇
中層封印区画は、まるで別世界だった。
通路が終わり、広い空間へ出る。
そこは地下とは思えないほど開けていた。
天井は高く、壁には古い霊脈制御陣が幾重にも刻まれている。
中央には、巨大な円形の祭壇。
その周囲に、黒い月輪がいくつも浮かんでいた。
月輪の下には、ミライが立っている。
白いコート。
黒い瞳。
感情の読めない顔。
だが、昨日よりも疲れて見えた。
その背後には、顔を布で隠した人物がいた。
性別も年齢も分からない。
黒い祭服。
胸元には欠けた杯の紋章。
月蝕の巫主。
彼が手を上げると、祭壇の上に欠けた杯が浮かび上がった。
神杯の欠片。
それは小さな器だった。
しかし、そこから放たれる圧は異常だった。
願いが詰まっている。
無数の声が、光となって渦巻いている。
叶えられなかった願い。
誰にも届かなかった祈り。
忘れられた叫び。
衛二の耳に、直接流れ込んでくる。
助けて。
返して。
見つけて。
忘れないで。
愛して。
許して。
終わらせて。
叶えて。
「っ……」
衛二の足が止まる。
胸が重い。
呼吸が乱れる。
アストルフォが即座に手を握った。
「エイジ、ボクの声を聞いて」
「聞こえてる」
「今ここにいるのは?」
「遠坂衛二」
「ボクの?」
「マスター」
「うん」
アストルフォは衛二の手を強く握った。
「大丈夫。戻ってきてる」
衛二は頷く。
月蝕の巫主が、静かに笑った。
「素晴らしい」
声は穏やかだった。
恐ろしいほどに。
「やはり君は理想的だ、遠坂衛二。願いの声を聞き、なお自我を保つ。器として、これ以上ない」
「俺は器じゃない」
「そう言うと思っていた」
巫主は楽しそうに首を傾げる。
「人は皆、自分を器ではないと言う。自分の意思で選んでいると思いたがる。だが実際には、血に、家に、愛に、罪に、願いに満たされている」
「だから何だ」
「器であることは悪ではない。空であるからこそ、何かを受け入れられる」
「受け入れるのと、押し込められるのは違う」
衛二は一歩前へ出た。
「誰かの願いを勝手に集めて、誰かを壊して、世界に押し付ける。それは救いじゃない」
巫主は静かに笑う。
「では、君はどうする? 叶わなかった願いに、聞こえたと返すだけか?」
衛二は息を呑んだ。
巫主は続ける。
「返事だけで救われる者もいるだろう。だが、返事だけでは救われない者もいる。失った人は戻らない。奪われた時間は戻らない。報われなかった人生は、そのまま終わる」
「……」
「ならば、杯が必要だ。世界を書き換える力が。願いを現実へ変える器が」
「そのために俺を使うのか」
「君なら耐えられる」
「耐えられるからって、やっていい理由にはならない」
「君は本当に優しい」
巫主の声に、薄い嘲りが混じる。
「優しい者ほど、最後には願いを拒めなくなる」
その瞬間、祭壇の上の杯が黒く輝いた。
無数の声が膨れ上がる。
衛二の意識へ、願いが流れ込んでくる。
子どもの泣き声。
老人の後悔。
名も知らない誰かの祈り。
昨日倒れた魔術師の願い。
神杯戦争で残された声。
その中に、妙に鮮明なものがあった。
誰かを守りたい。
失いたくない。
もう二度と、大切なものを奪われたくない。
それは衛二自身の願いにも似ていた。
「エイジ!」
アストルフォの声が遠くなる。
足元が沈む。
杯が呼んでいる。
入れ、と。
すべてを抱け、と。
願いを叶えろ、と。
遠坂衛二ならできる。
衛宮士郎の子なら見捨てられない。
遠坂凛の子なら制御できる。
アストルフォを愛するなら、失わないために力を望むはずだ。
そう囁く。
「……黙れ」
衛二は右手を上げた。
「投影、開始」
無数の剣が展開される。
だが、すぐに黒い月輪がそれらを飲み込んだ。
剣が消える。
投影が阻害された。
凛が叫ぶ。
「衛二! その場から離れなさい!」
凛の宝石魔術が月輪へ叩き込まれる。
士郎が前へ出る。
ユイが封印術式を起動する。
だが巫主の周囲に、神杯の欠片から伸びた黒い膜が広がった。
願望防壁。
外からの攻撃を、願いの声で受け止める結界。
凛の火も、士郎の剣も、ユイの術式も、正面からは届かない。
「ミライ」
巫主が言った。
「観測役として、最後の刺激を」
ミライは一瞬、動かなかった。
ユイが叫ぶ。
「ミライ、やめなさい!」
ミライの瞳が揺れた。
しかし次の瞬間、彼女は手を上げた。
黒い月輪が、アストルフォの足元に展開される。
衛二の目が見開かれた。
「アストルフォ!」
「え?」
アストルフォが反応するより早く、影の鎖が彼の身体を縛った。
強い拘束ではない。
だが、そこに込められている術式は危険だった。
願望干渉。
対象を傷つけるためではない。
マスターの精神を揺さぶるための術式。
アストルフォの身体が淡く光る。
霊基が揺らいだ。
「っ……!」
アストルフォが膝をつく。
衛二の中で、何かが切れた。
「アストルフォ!」
衛二は走ろうとした。
だが足元から伸びた黒い手が、彼を止める。
杯の声が強くなる。
守りたいだろう。
失いたくないだろう。
ならば願え。
杯に願え。
器になれ。
そうすれば、彼を救える。
「ふざけるな……!」
衛二の魔力が跳ね上がる。
投影しようとする。
だが月輪が阻害する。
五大元素を使おうとする。
だが願いの声が制御を乱す。
アストルフォが苦しそうに顔を上げた。
「エイジ……だめ」
「アストルフォ!」
「ボクのために、器になっちゃだめ……!」
その声が、衛二を貫いた。
巫主が笑う。
「美しい愛だ。だからこそ、願いになる。守りたいという願いほど、杯に適したものはない」
「黙れって言ってるだろ!」
衛二の声が地下空間に響いた。
内側が熱い。
胸の奥で、星鉄の炉が燃える。
投影が阻害されるなら、剣を外に作るな。
五大元素が乱されるなら、世界ごと自分の領域に変えろ。
器になれと迫るなら、器ではなく世界を開け。
衛二は目を閉じた。
アストルフォの声が聞こえる。
遠くない。
すぐそばにある。
怖い。
失いたくない。
守りたい。
その願いは確かにある。
でも、それを杯には渡さない。
これは衛二自身の願いだ。
誰かに押し込められたものではない。
自分で選んだものだ。
衛二はゆっくり口を開いた。
「我が骨子は、刃の夢を覚えている」
空気が変わった。
凛が息を呑む。
「衛二……!」
士郎が目を細める。
「固有結界……」
巫主が初めて、わずかに声を硬くした。
「未完成の内的世界を、ここで開くつもりか」
衛二は答えない。
言葉を続ける。
「血は星鉄に沈み、心は薄き玻璃」
足元の黒い影が、硝子の光に押し返される。
地下空間の床が透け始めた。
その下に、無数の剣の設計図が流れている。
「幾重の戦場を映してなお、刃は曇らず」
壁が揺らぐ。
祭壇の月輪が軋む。
神杯の欠片が震える。
「ただ一度も背を向けず」
衛二はアストルフォを見る。
桃色の騎士は、苦しそうにしながらも衛二を見ていた。
その瞳が言っている。
戻ってきて。
自分を失わないで。
「ただ一度も己を赦さず」
胸が痛む。
救えなかった願い。
届かなかった声。
今にも消えそうなアストルフォの光。
すべてが衛二を責める。
でも、その責めを杯には渡さない。
「彼の者は、常に境界に立ち」
投影剣が一本、衛二の周囲に現れる。
次に二本。
十本。
百本。
だがそれは、無限の剣の荒野ではない。
剣は地面に突き刺さらない。
硝子の大地の下から、設計図として生まれ、星鉄の炉で鍛たれ、光の刃として浮かび上がる。
「贋作と真実の狭間で、勝利を鍛つ」
神杯の願望防壁にひびが入る。
凛が呟いた。
「士郎の固有結界とは違う……」
士郎は静かに頷く。
「ああ。あれは衛二の世界だ」
衛二の声が強くなる。
「故に、その生に解はなく」
願いの声がさらに膨れ上がる。
助けて。
叶えて。
器になって。
私たちを見捨てないで。
衛二の足元が揺らぐ。
その時、アストルフォが声を絞り出した。
「エイジ!」
衛二はアストルフォを見た。
アストルフォは、笑っていた。
苦しいはずなのに。
鎖に縛られ、霊基を揺らされているのに。
それでも、衛二が迷わないように笑っていた。
「ボクはここにいるよ!」
その声が、最後の錨になった。
衛二は一歩前へ踏み出す。
「されど、この手は誰かの願いへ届いた」
硝子の大地が完全に広がる。
星鉄の炉が燃え上がる。
無数の剣の設計図が、夜空の星座のように頭上へ舞い上がる。
衛二は言い捨てた。
「――その魂は、きっと剣を超えていた。」
世界が反転した。
◇
そこは、夜の鍛造炉だった。
地平線はない。
代わりに、果てしない硝子の大地が広がっている。
その下を、無数の剣の設計図が光の川となって流れていた。
空は黒い。
だが暗くはない。
星の代わりに、剣の輪郭が浮かんでいる。
宝具。
礼装。
神代の武器。
名もなき刃。
まだ存在しないはずの剣。
それらすべてが、作られる前の姿と壊れた後の姿を同時に持っていた。
中央には巨大な炉。
星鉄の炎が燃えている。
真作と贋作の境界が溶ける場所。
剣という概念が、衛二の意思によって再構成される世界。
固有結界。
無窮剣界。
アンリミテッド・ブレイド・レルム。
衛二はその中央に立っていた。
巫主は周囲を見回し、初めて沈黙した。
「これは……」
「俺の世界だ」
衛二は静かに言った。
「父さんの剣の丘じゃない。英霊エミヤの荒野でもない」
周囲に剣が浮かぶ。
その一本一本に、五大元素の光が宿っている。
「ここでは、剣はただの贋作じゃない。壊すための道具でもない。願いを切り離し、返事を届けるための形だ」
巫主が神杯の欠片を掲げる。
「願いを拒むのか」
「違う」
衛二は即答した。
「願いを利用するお前を拒む」
アストルフォを縛る鎖が、固有結界の中でも残っている。
衛二は右手を上げた。
「解析」
鎖の構造が見える。
願望干渉。
霊基拘束。
マスター精神誘導。
アストルフォを傷つけることではなく、衛二に願わせるための術式。
「最低だな」
衛二の声が低くなる。
一本の剣が炉から生まれる。
透明な刃。
芯に空属性の光。
外側に風。
刃紋に水。
鍔に地。
柄に火。
五大元素を宿した解体剣。
衛二はそれを掴み、鎖へ向けて振るった。
「空で繋がりを読み」
鎖の術式接続が露わになる。
「風で呪縛を断ち」
鎖の輪郭が揺らぐ。
「水で汚染を洗い」
アストルフォの霊基に絡んだ黒い光が薄まる。
「火で核を焼き」
術式の中心が燃え尽きる。
「地で魂を繋ぎ止める」
鎖が砕けた。
アストルフォの身体が前に倒れる。
衛二は駆け寄り、彼を抱き留めた。
「アストルフォ!」
「……エイジ」
アストルフォは薄く目を開けた。
そして、こんな状況なのに、少し笑った。
「来てくれた」
「当たり前だ」
「器に、ならなかった?」
「ああ」
「よかった……」
アストルフォは衛二の胸元に額を預けた。
「怖かった」
「俺も怖かった」
「言えたね」
「今それ言うのか」
「大事だから」
衛二はアストルフォを抱きしめた。
ほんの一瞬だけ。
だがその一瞬で、アストルフォの温もりを確かめる。
「まだ戦えるか?」
「もちろん」
アストルフォは衛二の腕の中から顔を上げた。
桃色の瞳が輝いている。
「ボク、エイジのサーヴァントだもん」
「ああ」
「それに、あとでぎゅーの続きしてもらうから」
「今してるだろ」
「これは戦闘中の回復用。あとでは甘やかし用」
「分類するな」
こんな時なのに、衛二は笑ってしまった。
その笑いが、固有結界をさらに安定させる。
無窮剣界の空に、剣の星座が輝いた。
巫主が神杯の欠片を掲げる。
「絆で願望干渉を断つか。だが、その絆も願いだ。ならば杯は喰らえる」
神杯の欠片から、黒い光が広がる。
無数の願いが、再び衛二へ流れ込もうとする。
だが、今の衛二は一人ではない。
アストルフォが隣に立つ。
士郎と凛も固有結界内に取り込まれている。
ユイも、ミライも。
全員がこの世界にいる。
凛が周囲を見て、少しだけ口元を上げた。
「ふうん。なかなか綺麗な内面世界じゃない」
「母さん、評価する余裕あるのか」
「あるわよ。あんたの母親だもの」
士郎は硝子の大地を見つめていた。
「剣の丘じゃなく、剣の炉か」
「父さん」
「いい世界だ、衛二」
短い言葉。
それだけで、衛二の胸に熱が灯る。
ユイは神杯の欠片を見て言った。
「この固有結界なら、願いと術式を切り離せるかもしれない」
「やります」
「簡単じゃないわ。神杯の欠片に入っている願いは多すぎる。下手に切れば、願いそのものが壊れる」
「壊さない」
衛二は剣を構えた。
「聞こえたって返す。そこにあったって認める。利用はさせない」
巫主が笑った。
「返事か。やはり甘い」
「甘くて結構」
アストルフォが前に出た。
「エイジのそういうところ、ボクは好きだよ」
衛二は少しだけ頬を赤くする。
「今言うな」
「今言うの!」
アストルフォは笑い、剣の星座の下を駆けた。
巫主が黒い願望弾を放つ。
それは魔術ではない。
願いの塊だ。
当たれば肉体より先に精神を侵す。
アストルフォは真正面から受けない。
軽やかに跳び、回り、避ける。
衛二はその軌道に合わせて剣を展開した。
「三十六投影、属性同期」
無窮剣界では、投影速度が現実とは桁違いだった。
剣は作るものではなく、世界から呼び出すものになる。
衛二が意識した瞬間、剣は炉から生まれ、属性を宿し、配置される。
火の剣が願望弾の核を焼く。
水の剣が中にある声を洗う。
風の剣が巫主との接続を断つ。
地の剣が願いを崩さず固定する。
空の剣が霊脈へ還す道を作る。
願いの光が、黒から白へ変わっていく。
その一つ一つに、衛二は声を返す。
聞こえた。
そこにあった。
忘れない。
叶えられなくても、なかったことにはしない。
それは奇跡ではない。
万能の救いでもない。
だが、杯に利用されるよりずっと人間的な返事だった。
巫主の声が低くなる。
「なぜだ。なぜ拒む。君なら本当に叶えられるかもしれない」
「叶えるって何だ」
衛二は剣を振るう。
「誰かを器にして、誰かの願いを混ぜて、世界に押し付けることか?」
「それでも救われる者はいる」
「そのために壊される者はどうなる」
「必要な犠牲だ」
「なら、お前の救いはいらない」
衛二の周囲に、さらに剣が浮かぶ。
無窮剣界が鳴動する。
「俺は全部を救えるなんて言わない。そんなことはできない。でも、救いのために誰かを壊していいなんて、絶対に認めない」
アストルフォが隣に戻ってくる。
「うん。エイジの答え、ボクも好き」
「アストルフォ」
「一緒にやろう」
「ああ」
二人の魔力が繋がる。
マスターとサーヴァントの契約線が、桃色と蒼の光を放つ。
衛二は右手を上げた。
剣の星座が一斉に動く。
それはただの剣群ではない。
神杯の欠片を破壊するためではなく、願いと術式を切り離すための陣。
「無窮剣界、術式再構成」
衛二の声に応じて、硝子の大地の下を流れる設計図が組み替わる。
巨大な円陣が形成された。
その中心に、神杯の欠片。
巫主が防ごうとする。
「ミライ!」
ミライが動く。
黒い月輪を展開し、衛二の剣陣に干渉しようとする。
だが、ユイが前に出た。
「ミライ、もうやめて」
「ユイ……」
「あなたは本当にこれでいいの?」
ミライの手が止まる。
ユイの声は震えていた。
「返事だけでは足りない願いがある。あなたがそう言ったこと、私は忘れていない。私も、何度も考えた。でも、だからって誰かを器にしていい理由にはならない」
ミライは唇を噛む。
「返事では救えない人がいた」
「ええ」
「聞こえたと言うだけでは、戻らない人がいた」
「ええ」
「なら、どうすればよかったの」
その声は、初めて感情を露わにしていた。
ユイは答えられない。
答えられないまま、それでも言った。
「分からない。でも、分からないからって、誰かを壊す答えを選んじゃいけない」
ミライの瞳が揺れる。
その隙に、巫主が冷たく言った。
「観測役が揺らぐとは。やはり返事の庭の残滓は弱い」
巫主の背後から、黒い杯の触手が伸びた。
ミライへ向かって。
ユイが叫ぶ。
「ミライ!」
衛二は反射的に剣を放った。
だが距離がある。
間に合わない。
その瞬間、アストルフォが飛んだ。
「間に合うよ!」
桃色の光が走る。
アストルフォはミライの前に滑り込み、黒い触手を蹴り飛ばした。
ミライが目を見開く。
「なぜ、私を」
「助けたいって思ったから!」
アストルフォは笑った。
「理由なんて、それで十分でしょ?」
ミライは言葉を失った。
その一瞬が、戦況を変えた。
「今だ、衛二!」
士郎の声。
「行きなさい!」
凛の声。
「返事を!」
ユイの声。
衛二は頷いた。
「アストルフォ!」
「うん!」
アストルフォが衛二の隣へ戻る。
二人の視線が重なる。
言葉はいらない。
衛二は右手を掲げた。
「全剣、限定解放」
剣の星座が一斉に輝く。
それぞれの刃が、壊れた幻想へ移行する。
だが、これは爆破ではない。
破壊ではなく、解体。
消滅ではなく、分離。
真作崩壊・星鉄幻想。
ブロークン・ファンタズム・ステラフォージ。
無窮剣界の中でのみ可能な、衛二だけの宝具解体術。
「火は核を焼き」
赤い剣が神杯の欠片を囲む。
「水は声を洗い」
青い剣が願いの光を包む。
「風は鎖を断ち」
緑の剣が巫主との接続を切る。
「地は欠片を留め」
黄色い剣が器の暴走を止める。
「空は返事の道を開く」
透明な剣が、霊脈と願いを結ぶ。
衛二は最後に、アストルフォの手を握った。
「いくぞ」
「うん!」
二人の魔力が重なる。
桃色の光が、剣陣へ流れ込む。
アストルフォの明るさ。
誰かを救うために迷わず飛び込む優しさ。
理性が蒸発していると言われても、最後には人を笑顔にする騎士の在り方。
それが衛二の無窮剣界に、温度を与える。
衛二は叫んだ。
「真作崩壊――星鉄幻想!」
剣陣が爆ぜた。
だが、音は優しかった。
破壊音ではない。
無数の鈴が鳴るような、透明な響き。
神杯の欠片に絡みついていた黒い術式が砕ける。
願いの光が一つずつ解放される。
巫主との接続が断たれる。
地下空間に声が満ちた。
ありがとう。
聞こえた。
ここにいた。
忘れないで。
さようなら。
またね。
すべてが救われたわけではない。
すべてが叶ったわけでもない。
でも、願いは杯から解放された。
巫主が叫ぶ。
「なぜだ! 願いは叶えられるべきだ! 返事など、慰めにすぎない!」
衛二は剣を構えた。
「慰めを馬鹿にするな」
その声は静かだった。
「叶わない願いを抱えた人間が、それでも明日へ行くために必要なものを、馬鹿にするな」
巫主が黒い月輪を展開する。
だが、もう遅い。
神杯の欠片から切り離された巫主の術式は、無窮剣界の中で丸裸だった。
士郎が動く。
凛の宝石魔術が月輪を砕く。
ユイの封印術式が退路を塞ぐ。
アストルフォが真正面から巫主の懐へ飛び込む。
「これで終わり!」
アストルフォの一撃が、巫主の祭服を裂くように術式を打ち砕いた。
巫主が膝をつく。
顔を覆っていた布が落ちる。
その下にあった顔は、ひどく若かった。
青年と言っていい。
衛二より少し年上に見える程度。
だが、その瞳は空っぽだった。
「……まだだ」
巫主は呟く。
「願いは死なない。杯はまた満ちる。返事では、世界は変わらない」
「世界は変わる」
衛二は言った。
「少なくとも、俺は変わった」
巫主が衛二を見る。
「何?」
「アストルフォに会って、父さんと母さんに支えられて、ユイさんに教わって、ミライさんの迷いを見た。俺は昨日の俺とは違う」
衛二は左手を握る。
「世界全部を変えられなくても、人一人は変わる。返事っていうのは、そういうものだ」
巫主は笑おうとした。
だが笑えなかった。
その身体から、黒い光が抜け落ちていく。
月蝕教団の術式が崩壊する。
神杯の欠片は、静かにユイの手元へ落ちた。
ユイがそれを受け止める。
「封印し直すわ」
凛が頷く。
「私も手伝う」
士郎が周囲を見る。
「固有結界が保つのは?」
衛二は息を吐いた。
「もう限界」
その瞬間、無窮剣界が揺らいだ。
硝子の大地にひびが入り、星鉄の炉が遠ざかる。
剣の星座が一つずつ消えていく。
アストルフォが衛二を支えた。
「エイジ!」
「大丈夫」
「大丈夫じゃない顔してる!」
「魔力を使いすぎただけだ」
「それを大丈夫じゃないって言うの!」
アストルフォは衛二をぎゅっと抱きしめた。
固有結界が閉じる。
世界が元の地下霊脈へ戻っていく。
衛二はアストルフォの肩に体重を預けた。
意識が少し遠い。
でも、手の中には確かな温度がある。
「アストルフォ」
「なあに? しゃべれる? 痛いところない? 眠い? 寒い?」
「質問が多い」
「心配してるの!」
衛二は小さく笑った。
「帰ったら、甘やかすって言ってたよな」
アストルフォは一瞬だけ目を丸くした。
それから、泣きそうなほど嬉しそうに笑った。
「うん。言った」
「じゃあ……頼む」
「もちろん」
アストルフォは衛二を抱きしめる腕に力を込めた。
「いっぱい甘やかす。ぎゅーして、よしよしして、おでこにキスして、あったかいお茶飲ませて、寝るまで隣にいる」
「計画通りだな」
「うん。完璧な計画」
凛が近づいてくる。
「衛二」
「母さん」
「説教は後」
「あるんだ」
「当然よ。無茶しすぎ」
凛はそう言いながら、衛二の額にそっと手を当てた。
魔力回路の状態を確認する。
「でも……よくやったわ」
その一言で、衛二の胸が詰まった。
「……うん」
士郎も隣に来る。
「いい固有結界だった」
「父さんにそう言われると、変な感じだな」
「お前だけの世界だった。俺には作れない」
その言葉は、衛二にとって何よりの肯定だった。
ユイは神杯の欠片を封印布で包み、ミライの方を見た。
ミライはその場に立ち尽くしている。
アストルフォが助けたせいで、彼女は無事だった。
ユイが近づく。
「ミライ」
ミライはしばらく黙っていた。
やがて、小さく言う。
「返事では、救えないものがある」
「ええ」
「でも、器にしても救えなかった」
「ええ」
「……私は、間違えたの?」
ユイはミライの手を取った。
「一緒に考えましょう。今度こそ」
ミライは目を伏せた。
その頬を、一筋だけ涙が伝った。
泣き声はなかった。
ただ静かに、長い時間凍っていたものが溶けるように。
衛二はそれを見ていた。
救えたのかは分からない。
でも、少なくとも返事は届いたのかもしれない。
◇
地上へ戻ると、月はまだ空にあった。
満月だった。
けれど、さっきより少しだけ優しく見えた。
冬木大橋の上で、衛二はアストルフォに支えられながら夜風を浴びた。
魔力消費は大きい。
身体は重い。
足元も少しふらつく。
それでも、心は不思議と軽かった。
神杯の欠片は封印された。
月蝕教団の巫主は拘束された。
ミライはユイと共に遠坂邸へ戻ることになった。
すべてが終わったわけではない。
神杯の残響はまだ冬木に残っている。
月蝕教団の全容も不明だ。
巫主も、ただの一人にすぎない可能性がある。
でも、今夜の戦いには勝った。
衛二は器にならなかった。
遠坂衛二として、立ち続けた。
「エイジ」
アストルフォが隣で呼ぶ。
「ん?」
「帰ったら、すぐ寝る?」
「たぶん」
「じゃあ、寝る前にぎゅーね」
「もうしてる」
「これは移動補助」
「また分類してる」
「大事だからね!」
アストルフォはにこっと笑った。
その笑顔を見た瞬間、衛二は本当に帰ってきたのだと思った。
戦いから。
願いの声から。
器になれという誘惑から。
アストルフォのいる場所へ。
「アストルフォ」
「なあに?」
「守ってくれてありがとう」
「ボクだけじゃないよ。エイジもボクを守ってくれた」
「そうかな」
「そうだよ」
アストルフォは衛二の手を握った。
「エイジが器にならなかったから、ボクはここにいる」
衛二はその手を握り返す。
「じゃあ、お互い様か」
「うん。お互い様」
アストルフォは少しだけ背伸びをした。
そして、衛二の額に軽く唇を触れさせた。
「契約、再確認」
衛二は目を瞬かせた。
「ここで?」
「うん。満月の下だから、ちょっと特別」
アストルフォは照れたように笑った。
「ボクはエイジのサーヴァント。エイジの隣にいる。エイジが怖い時は手を握る。エイジが無茶する時は一緒に怒られる。エイジが帰る場所を忘れそうになったら、ぎゅーってして思い出させる」
「怒られるの前提なのか」
「エイジ、絶対また無茶するもん」
「否定しづらい」
「でしょ?」
二人は笑った。
凛が少し離れた場所から言う。
「衛二、アストルフォ。帰るわよ」
「はい」
「はーい!」
士郎が衛二の肩に手を置く。
「歩けるか?」
「たぶん」
「無理するな」
「分かってる」
アストルフォがすかさず言う。
「無理したらボクが抱えるから!」
「それはやめてくれ」
「えー」
凛が即座に睨む。
「アストルフォ、公共の場ではやめなさい」
「じゃあ家なら?」
「そこも要相談」
「相談すればいいんだ!」
「前向きに解釈しない!」
そのやり取りに、士郎が笑う。
ユイも少しだけ笑っている。
ミライは静かに月を見上げていた。
冬木の夜は、まだ完全には明けていない。
でも、確かに何かが変わった。
満ちた月の下で、欠けた杯は封じられた。
願いは利用されず、返事を受けた。
そして遠坂衛二は、自分だけの固有結界を開いた。
無窮剣界。
アンリミテッド・ブレイド・レルム。
父の剣の丘ではない。
英霊エミヤの荒野でもない。
衛二だけの、剣を超える魂の世界。
帰り道。
アストルフォはずっと衛二の手を離さなかった。
衛二も、離そうとはしなかった。
◇
同じ夜。
遠坂邸の客室で、封印された神杯の欠片が静かに眠っていた。
その表面に、ほんの一瞬だけ光が走る。
誰も気づかないほど小さな光。
欠片の奥に、まだ声が残っている。
――返事は届いた。
――けれど問いは終わらない。
――神杯は砕けた。
――されど、神の影はまだ眠っている。
冬木の霊脈のさらに深く。
誰にも知られていない古い層で、黒い冠が微かに震えた。
沈黙冠。
神杯戦争で終わったはずの名。
その残響が、ゆっくりと目を開ける。
そして、遠坂衛二の無窮剣界を見ていた。
まるで、新しい問いを見つけたかのように。
コメント
1件
いやあ、めちゃくちゃ熱かった…!第五話、読み終わった直後ちょっと息止めてたわ。衛二が「器」じゃなくて「遠坂衛二」として踏みとどまる場面、本当に震えた。アストルフォの「ぎゅーの続き」とか「分類するな」のやり取りも可愛すぎて、胸がぎゅっとなった。それでいて固有結界の描写が美しいんだよな…「剣の丘」じゃなく「炉」っていう発想も、父さんとは違う衛二らしさが出てて痺れた。「返事」っていう概念も重すぎず優しくて、すごく好きです。お疲れさまでした、聖杯さん!