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「キィニチの記憶は思い出せた?」
ムアラニが俺の話題に切り替えた。
「あ…ごめんなさい。まだ思い出せなくて。」
申し訳の無さが伝わって来る。
「大丈夫だ。俺はルシーカからいなくなったりしない。」
居なくなるのはルシーカの方なのでは無いか。俺の母親の様に俺を置いて行くのでは無いか。
そんな恐怖でいっぱいだった。
数日、数週間が経ってもルシーカは思い出してくれそうも無い。急かしている訳では無いがなるべく早く思い出して欲しかった。安心したかった。俺はルシーカの家にまた行こうとしたが道の半分まで来た所で足が止まった。
今日は辞めておこう。
体を逆にし、帰ろうとした。
「あ!キィニチ。」
見つかってしまった。ここで本来の俺なら振り返っているだろう。でも今日の俺は逃げた。走って走って、ルシーカから全力で逃げた。