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「どどど、どうしよう…!」
真夜中の零時すぎ。
スマホがぶるぶる震え続けてるから何かと思いきや
「し、シヴァさん…?え、え!?」
シヴァさんからかかってきたの!
シヴァさんから通話が、きたの!
えっえっどうしよう!!
画面の文字を見た瞬間パニックなって部屋の中を行ったり来たりしてしまった。
震える指で震える画面を押すのにだいぶ苦労した。
『夜遅くにごめん、るなさん?』
「…はい」
久しぶりに名前を呼ばれて、泣きそうになった。
大好きな低めの声で、私の名前を呼んでくれた。
るな今日死んじゃうかもしれない。
たくさん話したいことも
たくさん聞きたいこともあるのに
どうしよう
上手く言葉が紡げない。
『明日そっちに行く』
「え、大阪ですか…お仕事?」
『仕事じゃないよ』
「るななにかシェアハウスに忘れ物してました?そしたら宅急便でもいいです…よ?」
なんでシヴァさんはこっちに来てくれるんだろう。私は重要なことをすぽんと忘れていて、本気で忘れ物を届けにきてくれるのかと思ってしまった。
スマホの向こう側で軽い笑い声が聞こえた。
『…違うよ、るなさんに会いに行く…新幹線、まだ取ってないんだけど。あ、明日あいてる?』
「あ、はい…その授業が終わって六時すぎ、なら…」
会いに行く
誰に?あ、るなか。
『じゃあ、その後会いたい。急でごめんね、いいかな』
「大丈夫です、はい。」
『もう遅いよな、遅くに電話してごめんね。詳しいことは連絡する』
「はい、はい」
シヴァさんの声がなにか、急かされているような雰囲気だった。
つられて私も焦ってしまう。
「シヴァさん…あの」
『ん?』
「こえ、きけて、嬉しい…」
「…」
嬉しくてつい、心の声が勝手に口から出て行ってしまった。
どうしよう、シヴァさんは無言だし、引かれたかもしれない。
と思ったのは余計な心配だった。
『…。俺も』
俺も…だって
カッとあっつくなる。
俺もって、俺もって、どうしよう。
そーゆーことかな
るなと同じってことかな
かぁー…と頭のでっぺんから足の先まであっつくなっていった。
なら、もう。引かれてもいい。
溢れる気持ちをそのまま伝えた。
「あの、会いたいです。るなすごく会いたい…シヴァさんに会いたいの。会って、声を聞いて、その、お話ししたいです…」
きゅーっと胸が締め付けられた。
最後は声が震えてしまう。
「俺も会いたい、会って話すから。待たせてごめん。明日会おう」
それから短く挨拶して、終了ボタンを押した。
このまま会話を続けても、お互い会いたいしか言わなくなる。
放心状態で、ベッドに横たわった。
いまの、シヴァさん?
シヴァさんだよね?ほんもの?
なんだからちょっと、いつもと違うような…
るなの、聞いたことない声。いつまでも耳に残ってる…。
「ど、どーしよ!ふく!きるもの!かみ!」
勢いよく上半身を起こした。
明日のために備えることがたくさんある。
クローゼット全開にして大騒ぎしたのは言うまでもない。
大好きなひとに会うんだから、これくらいはしなくちゃ。
「シヴァさんが大阪来るけど、どうしよって…るなからLINEきたの」
「そう」
私の彼氏はギターをいじりながら、ただ笑っていた。
そうって、それだけなの?まるでわかってたみたいな口ぶりだ。
「シヴァさん遅いよー…るな次の恋がんばろ、なんて言うから焦っちゃったよ」
「それシヴァさんにLINEで送ったれ」
「…いいの?」
「少しくらい危機感持たせてた方が、会った時盛り上がるだろ」
「盛り上がるって」
それってどうなの?喧嘩とかさ…あの二人が喧嘩するとこなんて想像できないけれど。
変な方向にいかないかな。
ちょっと心配。
深めのため息をついたら心配したのか、うりが私に近づいた。
「気持ち固まったんだ、もう大丈夫。それに自分の気持ちが不安定な状態で会っても、上手くいかないかもしれないだろ?」
「そうかもだけど…るなさー、”るなお返事いらないんです”、なんて言いながらちょっと凹んでたんだよ」
「じゃあコトが終わったら、全部シヴァさんに愚痴れ。責任持って倍でるなのこと、大事にしてくれるだろうからさ」
うりが語る言葉には自信が見え隠れしてる。
シヴァさんのことよくわかってるんだね。
男同士、通じる何かがあるのかな。
「そっか、そうだといいな…」
「…なぁ」
少し不満げな声が聞こえて、うりの顔を覗き込んだ。
「は?」
「いやオレら二人きりなんですけど?」
「…」
「なんで黙るんだよ」
るなのことばっかり心配してたら、今の状況忘れてた。少しばかりうりが拗ねてる、っぽい。
「それはもしかして、かわいいあれ?」
「なんだかわいいって…そうだよ」
かわいらしいやきもち
「えとさんが、るなのことばっかりだから。」
腕を取られて距離を詰められた。
あくびれた様子もなく、さも当たり前かのように。照れるどころか開き直りってやつ?
ちょっと痛いとこついてやろ、なんて思っても最後はうりのペースに持ってかれちゃって
「ねえ、近いって!」
「余裕あるんじゃないの?」
「ないっ!ないっ!」
「オレより有利に立とうとするなんて、えとさん成長したなぁ」
「たとうとなんてしてないよー、ね、はなして?」
「なんで?…いい加減黙んないと口塞ぐけど」
「…」
意地悪く笑う顔にいつまでもどきどきする。極め付けに一度や二度じゃ終わらない、甘い口付け…私黙ったのに、うそつき。
結局いつも私が慌てて終わるの。
恋愛は付き合ってからもたくさんある。
でも
ふたりで一緒に体験できるのは、とっても素敵なことなんだよ、るな。
るながうまくいきますように。
「私黙ったよねぇ!?」
「〜♩」
「うりっ!」
コメント
2件
電話キュンキュンする…!!! ついに付き合う!?とても楽しみです!!!
付き合ってから色々ふたりで歩んでいくお話を書くのが一番好きです。 今回は🎸🍫ちゃんたちを先輩?にしてみました。 私好みに仕上げたのでだいぶ大人です、うりりんが😅