町は、赤い炎に包まれている。酷い爆発音。人々が地下へと逃げていく。
戦争中のこの世の中では「笑顔」なんて言葉さえ程遠い。
家族は死んだ。この戦争で、家族も友達も失った。
ただ、物陰に隠れて過ごす日々。お腹が空いても、わがままは言えない。
「ほら、君‼こっちへ来るんだ‼」
近所のおじいさんが、地下へと僕を誘導している。
ヘロヘロになりながら、そこへ向かう。
………生きる意味?あるわけないじゃないか。
この歳になれば、そろそろ戦場へ狩り出される頃だ。
「あ、君、まだ若いでしょ?」
地下の小さな部屋で、僕に話しかけた白髪の子。
歳は僕と同じくらいかな。
「えっ、あ、まぁ……」
曖昧な返しだったかも、と反省するが彼はキラキラと目を輝かせた。
「わぁ、まだ若い人いたんだ!良かった。」
よく見ると、彼の後ろに、3人まだ若そうな男の子がいる。
「友達とか、もうみんな戦場行っちゃったんだよね。」
平気でそんなことを言う彼。
「あ、俺、おらふくん!こっちはMENで、この子がおんりー。こっちが、ぼんさんだよ。」
ササッと自己紹介してくれる彼……いや、おらふくん。
「僕はドズル。」
小さな声で低めの声だったけど、おらふくんはちゃんと聞き取ってくれた。
4人はみんな、僕と同じように家族や友達を失った男の子だった。
みんな、そろそろ戦場へ行ってしまう歳だから、一緒の時間は少ないだろう。
「俺の夢はな、”世界平和”‼」
ぼんさんが戦争で汚れた空を見つめ、呟いた。
「皆、そうだと思いますよ。」
「いやいや、そうとは限らないよ。」
ぼんさんは、僕が好きな性格をしていた。すぐに仲良くなりたいと思った。
「俺は、花畑に行くこと。」
後ろから、おんりーが小さく呟いた。
「もう、何度もの空襲で雑草1つ生えてない。だから、めっちゃ広い花畑に行ってみたい。」
表情1つ変えないおんりーだが、少し微笑んだ気がするのは僕だけだろうか。
「俺は、でっかい家を作りたい‼」
目をキラキラ輝かせながら、言ったのはMENだった。
「俺、小さい頃からずっと、大きくてお洒落な家を作るのが夢なんだ‼‼」
ワクワクしたような表情で話している。とても楽しそうだった。
「俺は、戦争で傷付いた動物たちを助けたい。」
出会ったときとは雰囲気が全く違うおらふくん。本当に叶えたいんだと思う。
「ドズさんの夢はなに?」
汚れた空から、僕へと視線を移したぼんさん。僕はパッと視線をそらす。
僕?僕の夢?叶えたい夢……?現実になってほしいこと………
「世界中を、笑顔で溢れさせたい……かな。」
咄嗟に出たのは、ただの綺麗事だった。
「ごめん、こんな綺麗事……」
「「「「そんなことないよ」」」」
4人の声が、4人の視線がパッと1つになった。
「綺麗事なんて、それが普通だよ。この世の中‼‼それが夢じゃん。」
と、ぼんさんが。
「そもそも、”夢を叶えたい”って言う思いが綺麗事なんだから。」
と、おんりーが。
「世界中のことまで考えられるなんて、良いことじゃん。胸張れよ。」
と、MENが。
「笑顔があったら、きっとみんなの夢叶ってるよね〜。」
と、おらふくんが。
久しぶりに友達と喋ったこの暖かさは、死ぬまで一生忘れないと思う。
そして、気付いた。
ポロポロと、頬を伝う涙。
その涙を見たみんなの顔が、満面の笑みで埋まっていく。
この笑顔を、一生守りたいと思った。
コメント
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泣けてくる( ´•̥ω•̥`) やっぱりいいなぁ... これぞ助け合いドズル社の絆! まったく新しい物語かな?お疲れ様です!
めっちゃ良い...それぞれの夢がそれぞれの個性を引き立てている...