テラーノベル
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医者から余命一週間だと告げられた。私は一瞬戸惑い、悲しんだ。
でも、そんな気持ちはすぐに消えた。
代わりに思ったのは、「じゃあ、どうやって残りを使おうか」ということだった。
一番に浮かんだのは、親友の顔だった。
彼女には、何も言わなかった。
言えなかった、が正しいかな。
だって彼女の悲しい顔を見たくなかったから。
1日目は新しく出来た駅前のカフェに二人で行った。
ガラス張りの窓の席で、他愛もない話をしながら、真夏日に丁度いい冷たいサイダーを二人で乾杯した。
その時だけは余命のことを忘れることができた。
2日目は一緒に電車に乗った。
目的地も決めず、ただ、揺られていた。
でも、そんな意味の無い時間がなぜだか心地よかった。
3日目は一緒にテレビゲームをした。
彼女はゲームが強くて、今までずっと負けていた。
やっぱり今日も負けた。
でも、不思議と悔しい気持ちや不快な気持ちは無く、この限られた時間を楽しんだ。
4日目は二人共好きなバンドが出るフェスに行った。
私は、病気のせいでたまに心臓がズキっと痛む時があった。
「あぁ、もう時間はないんだな」
と嫌でも自覚しないといけなかった。
そして、彼女に
「来年も、一緒に行こうね!」
と言われた。来年なんて、もう、無いのに…
私は、病気とは違う心の痛みを感じた。
5日目は彼女が大好きなチーズケーキとレモンソーダを用意して、私の部屋のベッドで、いつもと同じくくだらないことを何時間もずっと話していた。
彼女の好きな人の話や、最近あった面白いこと、好きな曲やゲームの話、色んなことを話した。
もう永遠にこんな時間は無いだろう。
くだらないことばっかりでも、そんな時間が一番大切だと私は今になってやっとわかった。
──どんな日も特別なことはしていないのに、人生のどんな時よりも輝いている時間で、この1週間は人生の価値を見出したようなひとときだった。
6日目の夜、私は一人で金平糖を数えた。
あの子と初めて会った日、海で一緒に食べた金平糖。
小さくて、甘くて、噛むと少しだけ硬い。
あの日の記憶が、舌の上で溶けた。
そして7日目。
私は一人、海へ向かった。
身体はどうしても重くて、思い通りに動くことはできなかった。
でも、心は軽かった。
この砂浜はあの子と最初に出会った場所。
風の匂いも、波の音も、あの日と変わらない。
ずっと綺麗なままで、何も変わることのない私たち二人だけの世界のまま。
──私は金平糖を二粒、口に入れた。
一粒は私の分。
もう一粒は、彼女の分。
波打ち際に足を踏み入れた瞬間、怖くなった。
水は冷たく、底が見えない。
本当に、ここで終わっていいのか。
立ち尽くしていると、背後から声がした。
「やっぱり、ここにいた」
振り返ると、街灯の明かりで照らされて、彼女が立っていた。
どうして場所がわかったのか、余命のことは知っているのか、色々聞きたいことはあった。
でも、私は聞かなかった。
だってそんなことは、もはやどうでもよかったから。
「一緒に行こ!」
彼女は、そう言って笑った。
出会った時からずっと変わらない、太陽のような素敵な笑顔で。
私たちは二人で海に入った。
手をつなぎ、ゆっくりと深く、暗い方へ潜っていく。
でも、怖さは、不思議と消えていた。
深海は静かで、美しかった。
それはまるで、全てが始まったあの日、二人で食べた金平糖みたいだった。
二粒。
きらきらして、甘くて、儚い。
やがて、それらは海に溶けていった。
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