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「うっ!?いてててっ」
頭いてぇ。二日酔いか?そして、この部屋は……
「おはようございます。お水を持って参ります」
うん。またやらかしたようだな。
まぁここに泊まったのは聖奈さん達も知っているはずだから良いだろう。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
俺はバレないように薬を取り出して水で流し込む。
二日酔いの常備薬だ。俺は飲み過ぎのプロだからな!
お湯を持ってきてもらい、身体を拭いた。何とか引き下がってもらって自分で拭けた。
介護はまだ先でいい。
「国王陛下から朝食を共にとのお言葉を預かっています」
「わかりました。今からですか?」
侍女の人が返事をしたので、後ろをついて行く。
絶対迷子になるな。
何で無駄に右に行ったり左にいったりするんだよ。
階段も登ったり降りたりだぞ?
「お連れしました」
声を掛けると扉が開いた。
魔法の言葉かな?
そこは豪華絢爛と言う以外に言葉が見つからない部屋だった。
食堂とは言わないよな?なんていうんだ?
「おはようございます。昨夜はすみませんでした。全く記憶がありません」
「まあ座れ。昨日は楽しかったぞ」
どうやら問題なかったようだ。まぁ、一国の国王が呑んだくれなんだからそれより問題はないだろう。
「失礼します」
そんな事よりも…知った顔がいるな。
「聖奈達も泊まっていたのか?」
「はい。王妃様のご好意で」
仕方ないとはいえ、聖奈さんの敬語は何だか気味が悪いな……
聖奈さん達もテーブルは別だが、着席している。ちゃんと客扱いしてくれているようで、本当にこの国は…いや。ナターリア王族は出来た人達だ。
「セイ様。今年もよろしくお願いしますね」
「アメリア王女殿下。こちらこそよろしくお願いします」
アメリアちゃんもいたのか。聖奈さん達に囲まれていてわからなかったぞ。溶け込みすぎじゃないか?一応奴隷設定だぞ?
「昨日は済まなかったな」
「えっ?何がでしょうか?」
酔ってて覚えていないぞ…俺は一体何をされたんだ?
「流石セイ。豪胆だな!あれだけの高価で貴重な酒を出させたのに何も思わんとわな」
「いえいえ。あれは陛下だけではなく私も飲んでいましたし。お気になさらず」
家もらってるからな!
危うく娘ももらうところだったし……
「ところでそのぉ…」
わかっているとも。
「後で城の方に預けておきます」
「おお…悪いな!また何かあれば何でも言ってくれ!」
ふふふっ。これでこの国は我が物っ!
な訳ないが、王族にコネクションどころか貸しがあるのはデカいな。
実際には家をもらっているから、こっちの借りのほうが大きい気もするが、そこは酔っ払い相手だからちょろいぜ!
城で朝食を食べた後、家に帰りゆっくりと過ごした。
「明日の夜、地球に帰りたいけどいいかな?」
「ああ」
「しかも泊まりで。セイくんもご実家に帰ってきたら?」
2日の夜帰って3日の夜に戻ってくるってことか。
まぁ、顔を出すくらいはしなきゃな。気乗りしないけど……
翌日の夜。
「じゃあ、2人ともあまり出歩くなよ?」
「大丈夫です。気をつけて行ってきてください」
ミランは心ここに在らずだな。
俺が聖奈さんに隠れて渡した大量のおやつのことで、頭が一杯のようだ。
エリーは見送りにも来ない。まぁ、いいんだけど。
もう少しで完成するみたいだから集中出来る時に集中したいんだろう。
地球に転移した後。
「じゃあ聖くんは実家だね!明日は昼から初詣に行かないかな?」
マンションを俺が出るタイミングで、聖奈さんに声をかけられた。
「ああ。何年も行ってないな。わかった。昼飯を食べたら帰ってくるよ」
俺は車で実家へと向かった。聖奈さんは何するんだ?まぁ、大人だから好きにしてくれたらいいけど。
ミランはちゃんと歯を磨いたかな?エリーはちゃんと睡眠取れよ。
「ただいま。帰ったぞ」
実家に帰り返事はないが家に上がる。
居間に入ると…やはり帰っていたか…まだ一人だから大丈夫だ。
「おかえり。聖。久しぶりだな」
「兄貴もおかえり。お袋は?」
この男は兄の東雲 大河だ。28歳で既婚。
「唯と一緒に晶を風呂に入れているところだ」
唯さんは兄貴の嫁で、晶は甥っ子一歳のことだ。
「そうか。俺にもそれくれ」
俺は親父と兄貴が飲んでる日本酒をもらい、ようやく運転の緊張が取れた。
「起業したんだって?大丈夫なのか?」
「何がだ?会社は順調だぞ?」
俺は兄姉が苦手だ。何かにつけて否定してくるから。
それによく勉強しろって怒られていたから、苦手な意識がついているんだろうな。
代わりに親は俺には甘かった認識があるけど。
兄貴の質問に一々答えていたら、どうやら風呂から上がってきたみたいだ。
「聖くん。久しぶり。この人がまたしつこく言ってたでしょ?」
幼子を抱いて現れたのは、寝間着を来た義姉だ。
「唯さん。久しぶり。晶も久しぶりだな。おっちゃんだぞー」
唯さんは兄貴が俺に口煩いのを知っている味方だ。
俺は甥っ子のプニプニほっぺを弄りながら返事をした。
「そうだ。これ唯さんと晶に」
ミラン達のクリスマスプレゼントを買う時に、ついでに買ってマンションに置いておいた晶用の知育玩具と、育児の合間にでもと思いジグソーパズルを渡した。
「ありがとう!聖くん!良かったね晶!」
唯さんは素直に喜んでくれたが……
「おい。ジグソーパズルなんて小さなものを晶が誤飲したらどうするんだ?」
めんどくせーな。それなら誤飲の心配がなくなるまで取っておけばいいだろ。
口ごたえするとさらに面倒なのがデフォだから黙っていると、援護射撃が飛ぶ。
「もう!やめてよね!プレゼントにケチをつけるなんて!誤飲は親が気をつけていればいいのよ!
ごめんね。聖くん。気にしないでね」
「いつものことだからいいよ。誤飲の心配が無くなってから開けたらいいよ」
兄貴はこんな感じだが、姉貴の方がひどいからまだマシだ。
良かった。兄貴だけで。
一々うるさいから唯さんにこっそり晶のお年玉を渡しておいた。可愛い甥っ子のために金を渡して、それにケチをつけられたら堪らんからな。
唯さん達が寝室へと行ったのを機に、お袋のスイッチが入った。
「聖!この前の温泉は良かったわ!聖奈ちゃんは今日は一緒じゃないのね?残念」
「次はどこの温泉に行こうな?楽しみだな母さん」
おい。毎年連れていかなきゃならんのか?
「聖奈とは明日初詣に行く予定だ。だから今日は泊まるけど、明日の昼飯を食べたら向こうに戻る」
「そうなの。忙しそうね。まぁ、社長様だから?仕方ないわね。お兄ちゃんがうるさいのは聖に嫉妬しているのよ」
「…まぁ、心配半分嫉妬半分といった感じか。アイツは安定志向の癖に、昔から嫉妬していたからな。特に聖に」
親からもフォローされたが今更だ。それに姉貴に比べたらどうでもいい。
「由奈は帰れないそうだぞ?残念だったな」
「あの子も聖に会えなくて寂しがっていたわ」
由奈とは姉のことだ。
よっしゃーー!!
「ところで、何で残念なんだ?」
「だって、聖のことを可愛がっていただろ?お前も小さい頃からお姉ちゃんにべったりだったじゃないか」
それは間違いだ。小さい頃から俺がついて行かないとすぐに癇癪を起こすから仕方なくだ。
可愛がっていた?あれはそんないいもんじゃない。
側から見れば服も買ってくれたり、送り迎えもしてくれる良い姉に見えたことだろうが…現実はそんなモノじゃなかった……
「そうか。まぁ飲もう」
正月は酒を飲んでは寝るの、繰り返しに限る。
えっ?普段通りだって?
そうさ!俺は毎日が正月だ!
「聖くんはもう帰っちゃうんだ。この辺りは雪が少ないけど気をつけてね」
昼飯を食べ終わったので、マンションへと帰る頃合いだ。その為、義姉である唯さんにお別れの挨拶をした。
「社長だからといって何をしても良いわけじゃないからな。法令違反はするなよ」
「ああ。わかってる」
兄貴は最後までめんどくさかった……
「また秋にでもお父さんに休みを取ってもらうから、よろしくね!」
「次も期待しているぞ!」
「はいはい」
俺への期待はもはや旅行だけのようだ。ありがたやー。
俺は長距離ドライブに向けて、気を引き締め直して帰路へ就いた。
行きよりも圧倒的に混んでた。良かった。トイレ行ってて。
「おかえりなさい」
マンションに着くと、着物姿の聖奈さんが出迎えてくれた。
着物……
「悪い。俺は袴とか持ってないんだ」
こういう時、一人だけだと寂しいからな。着物が多いからむしろ寂しいのは俺か?ならいいか。
「大丈夫!ちゃんとあるから!」
「えっ?でも、着方が…」
「それもあるから!」
カラーで印刷されている説明書付きだった。
「おかしくないか?」
「ううん!すごく似合っているよ!私はお店でしてもらったけど、着られる気がしなかったよ」
そりゃ袴と着物は違うだろうな。
「聖奈も似合ってる。特にその髪型は新鮮で良いな」
「ホント!?良かったぁ!朝の9時から頑張った甲斐があったよ!頑張ったのはお店の人だけどねっ!」
それは凄いな……
久しぶりに褒めたら凄く喜んでくれた。普段からこうなら褒めやすいんだけどな……
「じゃあこれよろしくね!」
そう言いながら差し出されたのは・・・
「40万…まぁ、そんなもんか」
「あれ?怒らないの?」
「いや?払える金額で、無駄な物じゃないならいいさ」
着物…振袖(?)を着た美人を連れて初詣出来るなら安いものだ。普段と違いすぎる格好だから、別人とデートしているみたいで楽しそうだしな。
中身は聖奈さんだけど……
俺の着物は五万くらいだったが、やはりこういう物は女性物が高いな。
「流石社長!太っ腹だねっ!」
「なんか、パパ活してるみたいだからやめて…」
「そろそろ出掛けようか!」
マンションを二人で仲良く出た。流石にこういう日は腕を組んで来ても怒れない。普段も怒れないけど。
着崩れしないように気をつけてタクシーに乗り、聖奈さんが選んだ神社へと向かった。
「そこは有名なとこだよな?」
「うん。どうせだから人が多いところにしたんだけど、本命は別だよ!」
何やらまた企みがあるようだ。
俺は社長だからな。こういう時はどっしり構えて流れに身を任せよう。
何も決定権がないだけとも言う。
暫く進むと運転手が口を開く。
「お客さん。多分、進みませんよ。ここからなら歩いて行ったほうが良さそうですね」
タクシーは乗せているだけで料金が発生するけど、どうやら今ならUターン出来るっぽいな。
「どうする?俺は歩けるけど、聖奈は?」
「私も大丈夫だよ」
俺達は残りの距離を徒歩で移動することにした。
何とか辿り着いた神社は、参拝客でごった返していた。
「なあ。元日はもっと多いんだろ?」
「そうだよ。これくらいなら空いてるって認識で間違ってないよ」
そんなんでホントに参拝出来るもんなのか?
「安心して。私達が行くのは別の所だから」
俺は組まれた腕を引かれながら、人が多いところとは別の小さな祠のようなモノの前に連れてこられた。
「ここは?」
「ここはね。月の神様の祠だよ。月読命様って言う、月を司る神様。三柱神の一柱なんだけど、あまり知られていないの。
もちろん月の神様とは違うと思うんだけど、私達が参るならここかなって」
なんてことだ……確かに俺達が参るならその通りだ!
ここにあるような分けられたお祈りするところではなく、いつか月読命神社にもお参りせねば。
「流石聖奈だ。ありがとう。連れてきてくれて」
寂しがり屋なあの神様に届くといいな。
そう思いながらしっかりとお参りを済ませ た。
あれ?着物ってレンタルで良かったんじゃ?
〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓
聖「着物ってレンタルじゃダメだったのか?」
聖奈「だってこんな事でもないと、聖くんお金使わないでしょ?」
聖「それは老後に貯めておけば…」
聖奈「何老後の心配してるのよ?私達は異世界に骨を埋めるから関係ないよ!」
聖(くそっ!俺は将来不安系主人公なんだぞっ!)
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