諸伏side
「お、萩じゃねえか」
「萩原何してんの?」
雨が降る中、萩原がコンビニの袋片手に歩いてきた。
「お、諸伏ちゃんに陣平ちゃん。いやーね、さっきセリちゃんに会ったんだけど傘さしてなくてね。一緒に行くよって言ったんだけど断られちゃって。ついて行くのも野暮かなって思ったから、せめて帰ってくるの待ってんの」
「こんな雨の中出掛けたのか?」
「俺は買い物して来たんだけど、セリちゃんはなんだろうね?手ぶらだったし」
「そうなんだ」
こんな雨の中傘無しで…心配だ。
「セリまだ帰ってねえのか」
「まだ?」
「さっき出てった時に会ったんだよ。なんか、喪服みてえな服着てたな」
「喪服…」
セリの知り合いが亡くなったなんて話、聞いたことがない。
「セリちゃんって少し不思議な子だよね」
「ん?」
「上手く手の内を隠されるって言うか」
「あー」
「分かる。長年一緒にいるけど、セリのことは知らないことの方が多い。家とか行ったことないし」
「え、無いの?!」
「うん。双子のお兄さんがいることは知ってたけど、会ったのはこないだが初めましてだったしね」
「ふうん。あ、帰ってき、たぜ?」
そこには金髪の長身の男と一緒に傘に入るセリだった。肩はゼロ距離だ。
「セリ!」
「よー、セリ」
「セリちゃん?」
「あ、3人とも」
「私はここまでのようですね」
金髪の長身が言う。
「送ってくれてありがとう七海」
「いえ。頑張ってください」
「ありがとう。七海も頑張りすぎは良くないからね。適度に休みなね」
「ありがとうございます。では」
「バイバイ」
男は帰って行った。
「セリ、さっきの奴誰だ?」
「ああ、高専の後輩」
「そうなんだ。俺の傘は拒否したのに、あの男の傘には入るんだね」
「そんなつもりじゃないけど、ごめんね」
「どこ行ってたの?」
「ちょっとね」
そういうセリの瞳は悲しげに揺らいでいた。
「じゃ」
「おい!セリ!!」
松田の声にセリは片手を上げて帰って行った。
「確かに喪服みたいだ…」
「だろ?」
「そう言えば」
「ん?」
「いや、セリちゃんと会った場所の近く、墓地あったなと思って」
「じゃやっぱ誰かの墓参りなんじゃね?ヒロの旦那、知らねえ?」
「誰かが亡くなったって?聞いたことないかな」
上手く手の内隠される…
「何、隠してるんだろう」
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