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昼休み。ざわざわと騒がしい教室の隅、俺――りうらは、机の上に置かれたノートをトントン指で叩きながら、目の前の5人を見渡した。
「……まぁ、集まってくれてありがとう」
「なんや急に改まって。りうちゃん、まさか告白とかせぇへんよな?」
初兎がにやにやしながら言う。
「するわけないでしょ。お前にだけは絶対せんわ」
「ほら見ろ初兎。僕に言われるならまだしも君に言われるとなんか腹立つね」
ほとけが柔らかく笑うが、目だけは笑ってない。
「なんやその言い草! でもりうら、ほんまに何の集まり?」
いふが腕を組んで首をかしげた。
「そろそろ本題な?」
悠佑が面倒くさそうに椅子を揺らす。
ないこは机の前で正座して、いつでも話を聞く体勢だ。
俺は深呼吸して言い放った。
「――俺たちで“リア充撲滅隊”を結成する!」
「……は?」
全員の声がハモった。
「いやいやいやいや!」ないこが机を叩いて立ち上がる。「なんでそんな物騒な部活作るの!?」
「部活じゃねぇよ! 自主団体だよ!」
「名前が完全に事件やん!」
悠佑がツッコミをぶん投げる。
俺は拳を握りしめる。
「こっちは真剣なんだよ! 見ろよ、最近の校内……! どこもかしこもリア充カップルだらけだろ!」
「まぁ……確かに増えたなぁ」
初兎が苦笑する。
「いや僕らの学年だけじゃなくて全校的に多いよね」
ほとけも頷く。
「だろ!? 廊下歩けば手をつないでるし、放課後は校門の前で『またね♡』って小声で言いやがって! 何あれ!? 見せつけ!? あれは俺への挑戦状か!?」
「完全にりうらの被害妄想やと思うけどなぁ」
いふが呆れ気味に言う。
「だが現実として! 俺たちは縁がない側だ!」
俺は全員を指差す。
「いや縁がないって決めつけるのもなぁ……」
ほとけが苦笑する。
「お前ら自分のこと棚に上げすぎな? 俺ら別にリア充嫌いちゃうし」
悠佑がきっぱり言った。
「じゃあ聞く。お前らに恋人いるか?」
俺が言うと、全員沈黙する。
「……ほら見ろ!」
「うぐ……!」
初兎が胸を押さえた。
いふとないこも揃って重たい顔になる。
「つまりだ。俺たちは“持たざる側”なんだよ。この学校に! 風穴を開けるべきなんだよ!!」
「いや目的は何なん……?」
ないこが眉を寄せる。
俺はノートに大きく書いた文字を見せる。
『リア充へ制裁を。非リアに救済を。』
「ちょっと待て、これもう宗教の教義やん」
悠佑が言った。
「違う! 大事なのは自尊心の確保だ! “俺たちでも楽しめる学園生活”を作るんだ!」
「……まぁ、それなら分からなくはないけど」
ほとけが頷く。
「お、ほとけ! お前が理解してくれるとは!」
「いや、ほら……僕も恋愛には縁ないしね。別にリア充が悪いわけじゃないけど、僕らに楽しいイベントがあるのも悪くないかなって」
ほとけの言葉に、みんながうんうんとうなずく。
初兎がニヤッと笑う。
「せやな。やるんやったら面白いことしよや! リア充撲滅ってより、“非リアの文化祭”みたいな感じでさ」
「文化祭ってなんだよ」
いふが呆れながらも、楽しそうだ。
ないこが慎重に手を上げる。
「えっと……具体的には何するの?」
「計画表は作った!」
俺はノートをめくる。
【リア充撲滅隊 活動内容案】
リア充への過剰なイチャつき自粛を呼びかけるポスターを貼る
非リア同士の絆を深めるためのイベント(仲良し祭り)を開催
昼休みの校庭ベンチを“非リア専用席”として確保する
恋愛の匂いがしない平和な学校を目指す
「……いや3番完全にアウトやろ」
悠佑がツッコミつつも、口元が笑ってる。
「まぁ、面白そうやけどなぁ」
初兎が肩をすくめた。
「やるんやったら、ポスターとかちゃんと作らなあかんな」
いふがやる気を出し始める。
「僕イラスト担当できるけど?」
ほとけが静かに言うと、
「やった! ほとけの絵絶対かわいいやん!」
ないこがきらきらした目になる。
――こうして俺たちのアホみたいな計画は、意外にも全会一致で承認された。
◆◆◆
翌日。
俺たちは早速“リア充自粛推進ポスター”を作って、校内の掲示板に貼った。
ポスターには、
「廊下での過度なイチャイチャは事故の元! 双方2m離れましょう!」
と書かれていた。
描かれているのは、ほとけ作のゆるキャラ“ひよりん(非リアの妖精)”。
周りの生徒からは、
「なにこれかわいい!」
「え、誰が作ったの?」
「非リア専用妖精?」
と、思ったより反響があった。
だが、案の定――
「ちょっと君たち、これはどういう意図?」
生活指導の先生が近づいてきた。
「いやいやいや先生! これは安全のためです! 廊下でぶつかると危ないじゃないですか!」
俺が堂々と答えると、
「……まぁ、事故防止という観点なら……」
まさかの許可が出た。
「うわ、通った」
初兎が目を丸くする。
「りうら、やるやん……!」
いふが感心してくる。
「ほら見ろ! 正義は勝つんだよ!」
「いや何の正義なん……?」
ないこはまだ納得していない。
◆◆◆
さらにその週の金曜日。
俺たちは“非リア専用イベント”として、屋上で“仲良しお茶会”を開催した。
「なんか青春してるよな俺ら……」
悠佑が紙コップの麦茶を飲みながら言う。
「あったかいな……俺らの友情……」
初兎がしみじみしてる。
「いや、ただの麦茶会やろ」
いふが突っ込む。
だが俺は胸を張って、
「違う。これは“俺たちの青春”だ」
と言い切った。
その時だった。
キィ、と屋上の扉が開く。
現れたのは、手をつないだリア充カップル。
「え、何ここ。なんか集まってるけど――」
俺たち6人は条件反射で立ち上がった。
「――ここは非リアの聖地だ!!」
俺が叫ぶ。
「退けぇぇ!!」
初兎が関西弁で吠え、
「非リア専用イベント中なので立ち入り禁止です!!」
ないこが腕を広げ、
「安全上の理由で2m離れてくださーい!」
ほとけがにこやかに注意し、
「おい、あんま近づいたら転ぶぞ」
悠佑がクールに言い、
「ほら帰れ。今だけは俺らのターンや」
いふが睨みを効かせた。
カップルはぽかんとした顔をしたあと、
「……なんかごめん!?」
と謝って去っていった。
俺たちは勝ちどきを挙げた。
「うおおおおお!!」
「俺ら、なんかやったぞ!!」
「青春最高や!!」
――その瞬間。
俺たちは校舎の影から静かに見下ろす視線に気づかなかった。
女子生徒たちが、頬を赤らめてひそひそ話していたのだ。
「え……あの6人……かわいすぎん?」
「非リアイベントとか言いながら、めっちゃ仲良しじゃん」
「なんか……ちょっと好きかも……」
その噂は、その日のうちに校内で広がった。
◆◆◆
翌週。
なぜか急に俺たちは人気者扱いされ、
女子から「一緒にお茶会混ぜてください!」と頼まれるようになった。
「……あれ? 俺ら、いつの間にリア充側に入ってない?」
ないこが困惑する。
「確かに。“非リアの尊さ”を守るはずが……」
ほとけが顎に手を当てる。
初兎がにやにやしながら言った。
「りうちゃん。まさかの“リア充撲滅隊”が“リア充製造機”になってもたな?」
「やかましいわ!!」
俺は頭を抱える。
「どうすんねん、隊長」
いふが肘でつつく。
「……活動方針を変更する」
俺はノートを広げ、新しいスローガンを書き込んだ。
新スローガン
『非リアでもリア充でも、どっちでもええ。俺たちみんなで青春しよ!』
6人は笑った。
「ええやん、それ」
「そっちの方が平和でええわ」
「僕もその方が好きだなぁ」
「りうら、成長したな」
「……なんや照れるやないか」
こうして――
俺たちのバカみたいな戦いは終わり、
笑いと友情に満ちた新しい日々が始まったのだった。
といいつつ、終わりです((
かんけえええええええつ!!!!!!!!
いいだろ!私の自由だあああああ(殴ってください)