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ストンと音もなく綺麗に地上に降りたママは両腰に残っている牛刀二本をスッと抜く。


「さあ、ここからが大仕事よ。はい、これアンタの分」


そう言って一本をわたしに差し出してくる。「あ、うん」と素直に受け取ってみたものの、ママったらまさか牛刀を使う数を予想して持ってきていたのだろうか。


ママは人差し指を地面に向けて空中でくるくると円を描いた。それは魔法陣を形作り淡い光を放つ。


「何してるの?」


「転送魔法陣を描いてるんだけど?」


さも当然かのように言われても困る。


「ママって魔法使いなの?」


「アタシはあれよ、しがないレストランのママ」


指で魔法陣を描けて、精霊の力を借りて、八百万の神?を簡単に扱っているママ。しがないレストランのママで済ませられるものじゃない。しかも魔法使いだったとしても相当なレベルでしょ。


「こんな魔法見せられて、誰が信じるのよ」


「アンタ、信じる者は救われるって言葉知らないの? それにアンタだってコバルトファイヤードラゴン倒したくせに勇者を名乗る気なさそうじゃない?」


「わたしは勇者はやめたもん。今はウェイトレスなの!」


「だったらアタシと同じじゃない。アタシはママで、アンタはウェイトレス。たまたまコバルトファイヤードラゴンを倒しただけってこと。んで今はそのお宝を頂戴するところ」


わかるようなわからないような、ただの屁理屈のようなことを言ってのけるママ。まあでもそのおかげでコバルトファイヤードラゴンを無事に倒せたわけだし、よかったんだけど。だって一時は死ぬかも、と考えたわけだし。


ていうか、勇者や魔法使いが逃げ出す中、ママは余裕しゃくしゃくだった気がするんだけど……。まあいいや、深く考えるのはやめよう。深みにはまる気がする。


「いいこと? コバルトファイヤードラゴンが倒れたことを嗅ぎつけてここに来る奴らより早く、剥ぎ取れるものは剥ぎ取っちゃうのよ」


「それはいいけど持って帰れないじゃない?」


「そのために転送魔法陣をつくったんでしょーが。その上に置けばアタシの店にひとっ飛びよ」


と、ママは肉を剥いで魔法陣の上に乗せる。淡い光と共に一瞬でその姿は消えてなくなった。


転送魔法陣っていうのは結構な上位魔法で、魔法力だけじゃなく繊細な微調整が必要となってくるもの……って、もう何だっていいや。とにかくママは万能ってことだけ理解しておこう。うん、そうしよう。

へっぽこ勇者は伝説をつくる

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