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ほしいものをあらかた転送魔法陣で店に送り、わたしたちはその場を後にした。


てっきりママはがめつく全部持って帰るのかと思っていたけど、そうでもないみたい。本当に必要なものを必要な量だけいただいて、後は発見者にあげるんだって。「SDGsよ」なんて言っていたけど、何のことやらさっぱりわからない。ポカンとしてたら、勉強しろって叱られた。


店に戻ってからは大忙しだった。

ちょうど開店の時間で、ママの言うとおりコバルトファイヤードラゴン討伐で傷ついた勇者や魔法使いたちが次々と食事をしにやって来たのだ。


「まったく、コバルトファイヤードラゴンが現れたときはこの世の終わりかと思ったけど、誰かが倒したみたいなんだ。俺も戦いには行ったんだけどまったく刃が立たなくてこの様だよ。で、ここまで逃げ帰って来たんだが、外まで流れてきた美味しそうなにおいにつられちゃったねぇ……」


なんて言うもんだから、わたしはどっきり。ママは「大変ねぇ」なんて涼しい顔をしている。コバルトファイヤードラゴンを倒したのはわたしたちなんだけど、どうやらママはそのことを言うつもりはないみたい。


「アンタたちお疲れ様。しっかり食べて次に備えなさいよ」


とお皿にハヤシライスをこれでもかと盛る。わたしはそれを受け取って、昼間に作ったポテトサラダと共にお客さんの元へ。


「お待たせしました。ハヤシライスとポテトサラダのセットです」


「おっ、きたきた。相変わらずよくわからない名前だけど美味そうだなぁ」


「マリちゃんこっちにも同じの頼むよ」


「はぁーい!」


「ウェイトレス、板についてるじゃないか」


「そうですか? えへへ。正式に雇ってもらいましたし、これからはウェイトレスとして頑張りますよ!」


「アタシ、雇うなんて一言も言ってないわよ」


「ちょっとママ、わたしには勇者は向いてないって言ったじゃん〜」


「だからって何でアタシがアンタを雇わなくちゃいけないわけ? 人手は足りてるって言ってるでしょ!」


「制服までくれたのにひどいっ!」


「それはアンタに売ってやったのよ。そのお金返しなさいよ」


「うそっ! これ売られたの? 詐欺じゃん〜」


「あはは、あんたたちほんと面白いね。マリちゃんその制服よく似合ってるよ」


「本当ですか? 可愛いです?」


「ああ、可愛いよ。やっぱり若い子がいるといいね」


「まったく、じじいはすぐ鼻の下伸ばすんだから。 アンタは調子乗りすぎ」


ママは呆れたため息を漏らす。


ほんの数時間前に人間を恐怖に陥れるといわれるコバルトファイヤードラゴンが出現したたなんて微塵も感じられないほど平和な時間が流れている。

へっぽこ勇者は伝説をつくる

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