天気予報です。今日から未明、曇りが続くでしょう。
降水確率は31%。万が一のため、折り畳み傘を持っておくと良さそうです。
〜〜〜〜〜〜〜〜ピッ
重要な部分だけ観るとテレビの電源を消した。そして何も塗っていないスーパーで半額になっていた食パンを頬張る。決して裕福ではないが十分幸せな生活を送っているこの頃。最近まではまともに稼げず随分と苦しい生活をしていたものだ。俺は本業に配信業、バイトは近所のコンビニで働く一般人。重要な本業が有名にならなければ稼げない職業に就いている。これもまぁ、何もできない俺の必然的な道なのだろう。でもめんどくさがりの俺が続けられるのも仕事前のルーティンのおかげだ。
ギィィ
マンションのアパートの建て付けの悪い屋上への扉を開ける。
天気予報通りに外は曇り。それでも空気は冷たく呼吸するたびに気持ちが良かった。そして 外からの眺めも最高だ。車や人が行き交い、ビルの灯りが綺麗に輝く。これを眺めるのが俺のルーティン。
数分時を過ごして頭をリセットできたのでドアノブに手をかける。途端に首筋が冷えた。そして声が聞こえる。俺は後ろに誰かいると悟った。後ろを向いてみる。そこには
一気に驚きが全身へ伝わった。先ほどまでいなかったはずなのに。隠れるスペースなどない。物音もしなかった。呆気をとられ言葉を発せずにいると先に少女が口を開いた。
「私のこと見えるんだ」
「声が聞こえるんだ」
意味がわからないことを言い始めた。そんなこと小説など空想でしかあり得ない。 『私のことが見えるんだ』とか一生で言ってみたい言葉ランキング50位ぐらいには入るんじゃないか?と心の中でツッコんでしまう。まぁいうには幽霊である必要があるのだが。
…ん?待て、そうなるとおかしくなる。この方程式だと少女が幽霊という認識になってしまうのだ。俺は特別霊感を持っているわけでもないし、幽霊など信じていない。なのでこんな俺が見えるはずがないのだ。ならばこの少女の悪戯だろう。
『君も普通の人間だろう?そんな見える見えないとかないだろ』
「はぁ?こんなこと言うんだからまずは幽霊とか思うでしょ!」
『悪戯とか俺には効かないぞ』
「本当に私、幽霊だから!」
この少女はどこで血迷ってしまったのだろうか。自分のことを本気で幽霊とか言い出した。どうやって納得させるか。そればかり考えるが、多分少女は頑固な性格だと思うので納得してもらうには苦労しそうだ。
「その顔…納得してないみたいだね」
「もういいよ。証拠を見せてあげる」
痺れを切らしたのか、少女は俺に近づいてきた。そして俺に触る。うん、触れられている。やっぱり嘘か。
「なんで!?お母さんにも触れられなかったのに!?」
『もう幽霊じゃないことは証明できただろ』
「そっそんなの認めない!ついてきて!」
どんだけ頑固なんだろうか。小説でよくある地縛霊ではないようなので俺をマンションの外へ引っ張って行く。運が良かったのか出るまで人に合わなかった。
外に出ると近くに老人がいたので少女は真っ先に向かって行く。そして俺が見ているかを確認すると老人に触れる。と、これは現実なのだろうか、少女は透けて触れられなかったのだ。でもまだその老人が特別なのではと疑うと少女は察したのか近くにいた主婦に触れようとした。が、やっぱり触れられなかった。
これを見れば流石に俺でも幽霊だと信じる。少女はこちらを向いてニヤッとした目で見てきた。そして近づいてくると
「これで証明できた?」
と言ってくる。多少イラつくが流石に認めざるおえない。
『わかったよ、認める。で、認めさせて俺に何をさせるんだ?』
気になっていたことを言う。ただ単に認めさせたかっただけなのか…もしくは成仏させてくれとか言わないよな?
「言ってたかったね! 私を成仏させて欲しいんだよ!」
あーあ、フラグ回収しちゃったよ
「そういえば名前とか言ってなかったね、このマンションの35号室に住んでた藤崎空里だよ!」
少女は自己紹介を始めた。流れ的にも俺もしないといけないのか。
『俺は朝曇爽だ。このマンションの45号室住み』
「そうなんだ!意外と気づかないものだね!」
少し驚いたのか口を半開きにし、そしてしばらくすると嬉しそうな顔をする。表情がコロコロ変わっていくところがより幼く感じさせられた。口調で生意気な小娘だと思っていたがちゃんと女の子だったらしい。
ところで普通に自己紹介をしていたが結局どうすれば良いのだろうか。成仏といっても…
『当てはあるのか?成仏できる』
「無い!!」
元気に即答されてしまった。これではいつになっても成仏できずに少しうざい少女と一生付き合っていかなくてはいけない。どうしようか、と思ったが急に思い出した。今は考える時間などない。さっきまで呑気に話していたが流石に仕事を放置しておくと駄目だろう。
「それじゃあ作戦会議といこうか…」
そんなことを言い始めた。でも流される気はない。
『今日は流石に無理だ。仕事がある』
「えぇ!?」
断るとさっきよりも驚いたような反応をみせた。でもそれを無視して部屋に戻ろうとすると 遠くで声が聞こえる。耳をすませば
「明日、屋上で待ってるからね」
と聞こえた。どうせ明日も来るのだから関係ない。
非現実的ないつもと違う濃い時間。
こうして幽霊少女と俺の協力関係が始まった。
コメント
3件
誤字脱字や変なところがあれば教えて欲しい
めっちゃ良かったぁ〜! 急に投稿してどした?w