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クイズノックにハマり過ぎてやばいくじらです。
今回はクイズノックの小説です。女体化です。
伏字で表示していますが、カプは乾×渡辺(こうちゃん)です。
それではいってらっしゃい!
ini×wtnb(♀)
in「お嬢様、準備はできましたか」
wt「…大丈夫です」
in「馬車の準備も整ったようなので、あちらへ向かいましょう」
コツッ、コツッ…とお嬢様の少し低いヒールの音が静かな廊下に響く。
wt「…ねえ、乾。貴方はお見合いをさせられなかったの?」
in「…父は婚約者のいた母に一目惚れし、猛アタックして婚約者の座を勝ち取った人ですから。俺の意思を尊重して、お見合いはしてこなかったですね」
wt「そう。貴方のご両親は優しいのね」
静寂を切り裂くようにしてお嬢様の口から溢れた質問に答えれば、お嬢様は少し悲しそうに下を向いた。
in「旦那様の事がお嫌いですか?」
wt「いいえ。でも、お父様の婚約に対する異様な執着は嫌ですわ。わたくしは殿下が好きじゃないですもの」
そう言って窓の向こう側を見るお嬢様は悲しそうだった。
in「…王太子殿下には好意を寄せてる方がいるのでは?」
wt「ええ。もちろん、わたくし以外の方にね」
前にお嬢様が無理矢理作られた好意も恋も愛もいらないと言っていたのを思い出す。
お嬢様を小さい頃から見てきたから分かる。
自分が箱入り娘として大事に育てられたからこそ、その良心が辛いこと。周りが手にしてきた自由も自分には少ししか無くて。
それがお嬢様にとってどんなに苦しかったことだろう。
苦しめられても、頑張って笑うのは誰かのため。自分のためにお嬢様が笑う事はほとんどない。旦那様の前でも奥様の前でも、王太子殿下の前でも見せた事はなかった。
『王都の城の中からじゃなくて、街に出てお店に並んで。そうやって、旅人や村に住む人たちのように過ごしてみたい。わたくしの願いはそれだけです』
旦那様にバレないように外に出て2人で流れ星を見た日を思い出す。
その日もお嬢様は悲しそうだった。声色も流れ星を見つめる瞳も。
in(俺を選んでくれたなら…)
そんな叶わない思いが頭をよぎる。
色んなところに連れて行ってあげて、色んな景色を一緒に見て。それで、近くの街で買い物をして。
in「…俺だったら、貴方を笑顔にできるのに」
wt「えっ?今なんて…」
in「…へっ?」
自分で考えていたことが口に出ていたらしく、お嬢様に聞かれてしまった。
in「…忘れてください」
wt「…俺だったら貴方を笑顔にできるのに。ですか?」
in「全部聞こえてるじゃないですか」
wt「ふふっ、貴方ってこんなキザな台詞も言うのね」
そう言って控えめにくふくふと笑うお嬢様。その笑顔は今までよりも綺麗で可愛らしい、本当の笑顔だった。
in「…お嬢様」
wt「なぁに?どうしました?」
その笑顔を自分に向けてくれている事実が、貴方の手の温もりを知ることができている今がとても嬉しいのと同時に誇らしい。
だって、この笑顔も温もりも誰も知らないんだから。
そっと手の甲に唇を落とせば、お嬢様は少し照れたように笑って、ロマンチックですねと呟いた。
in「貴方の隣で、貴方の笑顔を見ていたい。世界を見て、すごいと笑う貴方が見たい。貴方の歌声も笑顔も俺が1番そばで見て聴いていたい。この手の温もりも俺だけが知っていたい。だから、どうか俺を選んでくれませんか」
こんなことを言って叶うとは思わない。まず、旦那様や奥様が許さないだろう。公爵家の箱入り娘が辺境伯の次男と婚約したなんて、周りが何を言ってくるか分からない。
それでもいい。言わなければきっと後悔する。だから、想いはちゃんと伝えておきたかった。例え選ばれなかったとしても。
wt「…逆に乾はわたくしで良いのですか?」
in「後悔なんてするわけないでしょう。俺は貴方を想い続けてここにいるのですから」
そう言うとお嬢様は一瞬だけ驚いたような顔して、その後すぐに可愛らしく微笑んだ。
wt「…なら、怖くないです。だって、貴方がそばにいてくれるんですもの」
in「それは、つまり…」
wt「わたくしも貴方が良いです。乾の優しさも偽りのない愛も、受け取るのはわたくしがいい。きっと上手くいかないことも多いし、迷惑も今まで以上にかけてしまうでしょう。でも…それでも、貴方はわたくしを愛してくれますか?」
俺はずっとこの時が来てくれれば良いのにと願ってきた。それが今叶ったのだ。
in「ええ、もちろんです。必ず最期まで愛し尽くしてみせます。だから、俺が迎えに行くまで笑顔も手の温もりも誰にも教えないでください」
wt「ふふっ、分かりました。約束です」
お嬢様の差し出した小指と自分の小指をそっと絡める。
手を通して伝わる温もりが何度触っても愛おしくて。
in(流れ星…本当に願いが叶うものなのか…)
あの日、お嬢様の願いを聞いた後に自分で願ってみたことが叶っている。
星に願いを。この言葉も決して嘘ではないのだと。
wt「乾?どうかしましたか?」
in「いいえ、何でもありませんよ」
いつも通りの廊下をお嬢様と笑いながら歩いていく。
2人きりの廊下にお嬢様のヒールの音と可愛らしい笑い声が響いていた。
はい、おかえりなさい!
いやぁ、書きたくなっちゃって…
短編集とするので、これからいろいろあげます。
それではまた次回お会いしましょう!
読んで頂きありがとうございました!