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その日からウィリアムとユウリは夜は決まって私の部屋に来るようになった。
他に変わったことは一緒にご飯を食べるようになった事だ。
ユウリと私は前から一緒に食べていたがウィリアムも時間が合う時は同じように席に座るようになった。
「ユウリ、これおいしいわよ。私の分も食べる?」
ユウリが気に入った料理があると私は自分の分をユウリにあげようとする。
「食べたいなら持ってこさせるよ」
その様子にウィリアムはメイドにおかわりを持ってくるように声をかけてくれた。
「そんなにいいのよ、私の分をあげたいの」
わざわざ作ってもらうまでもないからと断ろうとした。
「君も痩せすぎている、ユウリと一緒にもう少し食べないと」
「あっ、私の心配もしてくれたのね」
「い、いや君に何かあったらユウリの為にも…その…」
気まずかったのか言葉を選んでいる。
「ありがとうございます」
私はウィリアムの変化が嬉しくて笑顔でお礼を言った。
「ユウリもおかあさまに食べて欲しいからいらない」
ユウリも今まで欲しいものは喜んでもらっていたのにウィリアムの言葉に料理を返してきた。
「え?食べてくれないの?」
なんか寂しくて眉を下げて聞くとユウリが真剣な顔を向ける。
「ユウリもおかーさま元気でいてほしいです」
か、可愛い!
思わず胸の奥がキュンとなった。
優里亜がユウリを可愛いと言っていた気持ちがよくわかる。
「わかったわ、お母さんも自分の分はちゃんと食べるからユウリもいっぱいおかわりしてね」
「はい!」
私達の会話を聞いてメイド達は慌ただしく厨房に走る。
そして私達だけでは食べられなそうな量のおかわりを持ってきてしまったのだった。
私の調子も戻ってきたので屋敷の仕事を手伝うことにした。
屋敷での帳簿など女主人である私がする事のようなので、アルバートに聞きながら仕事を覚える。
「プルメリア様が仕事をしたいと言って下さり本当に助かっております」
私が帳簿に数字を書き入れる様子をみながらニコニコと笑っている。
「何もしないでいる訳にもいかないから、それにウィリアムに何か発言をするのにも自分のするべき事をしないで言うわけにはいかないわ」
それに帳簿など前にも仕事でやっていたのでそんなに難しい事ではなかった。
プルメリアとしての記憶もあるので何とかできそうである。
以前のプルメリアも実家ではそれなりの勉強をしていたがここでの生活が嫌になり何もする気にならなかったようで仕事などしていなかった。
だから仕事を手伝いたいと言った時のウィリアムとアルバートの驚いようは凄かった。
今でもあの顔を思い出すと少し笑える。
笑っていると扉が勢いよく開き、「おかーさま!」
とユウリが怒った顔でやってきた。
「べんきょうやだ! おかーさまとほんよむの!」
私の机の前に立ち、目に涙を浮かべる。
私はゆっくり立ち上がりユウリの前まで行くと目線を同じにするように膝をついた。
そしてユウリの目をジッと見つめる。
ユウリは私が笑うと思っていたのか喜んだ顔をするが、私が笑わないのを見て困惑した顔をする。
「ユウリ、まずお部屋に入る時にはノックをしないと駄目よ」
「で、でもいそいでたもん…」
「前にユウリの所に行った時、お母さんは扉を許可なく開けた?」
ユウリはハッとして首を横に振る。
「ユウリが部屋に来てくれるのはすごく嬉しい、でもマナーはちゃんと守らなきゃ駄目よ」
「はい…ごめんなさい…きらいに、なる?」
ユウリは怯えた顔で目に涙を浮かべる。
「いいえ、そんなことは絶対にないわ。お母さんがユウリに教えるのはユウリの為なの、今はわからないかもしれないけどお母さんが怒る時は全部ユウリの為、ユウリが大切だから怒るのよ」
「うん、でも怒るのやだ」
「そうね、お母さんもユウリを怒りたくないわ。だからお勉強して駄目なことやってはいけないことをちゃんと学ばないといけないの。その代わりユウリがそれを出来たらお母さんユウリの事すっごい褒めてあげる!」
そう言ってユウリの体をギュッと抱きしめた。
「ほめてくれる?」
「うん! ユウリの為にお菓子なんか作っちゃうわ」
「おかし!?」
そう聞いてユウリの目が輝いた。
「ユウリは何が好き?」
「ぼく、パンケーキすき。あまいのいっぱいかけるの」
頭の中にホットケーキが浮かんだ。
確か優里亜も一番好きだった。
何かあるとホットケーキを焼いてって頼んでたな。
なんか似てるユウリにますます愛情が湧いてくる。
「約束、お部屋でお勉強頑張ったらお母さんがパンケーキ焼いてあげる」
ユウリはそう聞いてクルッと背を向けると部屋を出ていこうとする。
そして扉の前でこちらをむくと「しつれいします」と言って出ていった。
その様子に見ていたアルバートと顔を見合わせて笑ってしまった。
その日私も仕事を早々に片付けて厨房に向かう。
アルバートはシェフに任せていいと言われたが私は自分で作ってあげたかった。
これは優里亜との約束でもあった。
「奥様、私がやりましょうか?」
厨房でもシェフ達がハラハラとした顔で私が道具を用意するのを見守っている。
「大丈夫、そんなに難しくないものをつくるから。小麦粉と砂糖に卵とバターはあるの?」
シェフ達が言われた物を用意してくれる。
どうやら調理器具や食材など見知ったものばかりのようだ。
私は生前のように手際よくパンケーキの生地を作るとシェフ達が感心している。
「奥様が料理をなさるなんて知りませんでした」
「結構得意なの、だからたまにこうやって作りに来てもいいかしら?」
「もちろんです」
シェフ達が笑顔でうなずいてくれる。
「皆さんのプロの料理にはかないませんけどユウリにはたまに母として何かしてあげたくて」
「奥様…!」
話を聞いていたアンやアルバート達はシェフ達と一緒に私の言葉に感激した様子をみせる。
生地ができたらフライパンの上で両面焼いてお皿に乗せるとバターをのせてはちみつをたっぷりとかけた。
生地に余裕があったのでもう何枚か焼き上げるとお皿にのせた。
「皆さん、味見してくれます?」
1口大に切って差し出すとシェフから味見をする。
「美味しいです! 奥様料理人としてもやっていけますよ!」
「あら、嬉しい」
お世辞だとしても嬉しい事を言ってくれる。
「本当に美味しいです!」
「うん、美味しい」
アンとアルバートも真面目な顔でモグモグと噛みしめている。
どうやらお世辞ではなく結構よくできたようだ。
私は綺麗に焼けたものを2皿作っておく。
「アルバート、これはウィリアムに持っていって」
「はい! 旦那様も喜びます!」
「あっ、私が作ったって言わなくていいのよ」
気を遣って美味しくなくても美味しいとか言いそうだ。
アルバートは納得しないようだったが私はよろしくとパンケーキを渡した。