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京・公方御所。
出浦盛清は、公方である足利義藤の前に平伏していた。
「公方様に直接お会いし、お話いただけること、恐悦至極でございます。
我が主、方円に代わり御礼申し上げます」
足利義藤は頷く。
「うむ、よく来た。
話は上杉殿経由で全て聞いておる」
「関東管領のための正義の戦、大変大儀である」
そう言って義藤は、差し出された金を見た。
「それと、この金はわしは受け取れぬ」
出浦が顔を上げる。
「その代わり、これは陛下に藤孝経由で武田からの支援金として渡しておこう」
「本当は陛下にも会って欲しいが、関東管領の一件以来、御所は厳重に警戒されていてな。
簡単に陛下のお顔を見ることすら出来ん」
そして義藤は、隣に控えていた細川藤孝へ視線を向けた。
「できるな、藤孝?」
「はっ、おまかせを」
藤孝は金を受け取ると、真剣な表情で頭を下げる。
「正義の支援金、死んでも陛下以外には渡しませぬ」
そう言い残し、藤孝はスタスタと去っていった。
出浦は改めて義藤へ向き直る。
「それと、早速本題に入りたいのですが……」
「わかっておる」
義藤は何でもお見通しといった様子で答えた。
「既に今川には手を回しておるよ」
「……えっ???」
出浦の目が点になる。
「今川……???」
「たしかに、全く返書が来ないと北条は焦っておられましたが……」
すると義藤は、少し得意げに笑った。
「足利一門じゃからの。
一声かければ、すぐ動かなくなるわ」
「……」
出浦はしばし黙った。
すると義藤は、
「……うそうそ|ω・)」
と、急に表情を崩す。
「たしかに今川にも手を回したが、すぐ伊達にも細川藤孝を送り込むつもりじゃ」
「今川はわしの独断じゃよ。
調子乗っておるから、北条を困らせてやろうかと思ってのwww」
出浦は思わず苦笑する。
「公方様の考えの深さ、この出浦、必ず主に伝えまする」
「……それと、真面目な話じゃ」
義藤は再び真剣な顔になった。
「方円どのには、また武田姓を名乗るよう伝えよ。
これは命令じゃ」
「武田 正蛇 甲斐守護 方円と、名乗れとな」
「うむ」
義藤は頷いた。
「それと御旗楯無を使用することも許可する。
現甲斐国主として、これからも忠勤に励め」
「はっ!」
出浦は深く頭を下げた。
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駿河・今川館。
今川義元は、山積みになった書状を眺めながら笑っていた。
「北条もしつこいのぉ。
これで催促十枚目じゃぞ、ほほほ」
太原雪斎は困ったように書状を見つめる。
「まさか、ここまで無視なさるとは……」
「だが、そうして正解だったであろう」
義元は悠々と茶を啜る。
「公方様から『動くな』と命が来たのだからの」
雪斎はため息をついた。
「それは結果論でございます。
……あー、北条からまた恨みを買いますな」
義元は、茶を飲みながらつぶやく
「しかし、あの武田の小娘がここまで化けるとはのぉ。
あの義弟も馬鹿なことをしたものじゃ。
信虎と同様、始末しておけばよかったのじゃ。ほほほ」
雪斎は昔のことを思い出す。
「信虎とあの小娘の世話金を定期的に貰う代わりに、甲斐国では用意できない塩を少し安く売る。
信玄殿と我々との密約……」
「そういう取引でしたからな」
そして二人は顔を見合わせる。
「まあまあ儲かりましたな」
「晴信殿は無駄に計算高いのに、身内には甘かった。
どうしようもないのぉwww」
「まだ、あの小娘の方がそこら辺は飛び抜けていて、好感が持てるわ」
雪斎も笑った。
「たしかにそうですな。
今回もなかなかの金を公方様からいただきましたし」
「このまま無視するとしますか。
どうしようもないですからな」
「楽しみましょう、ハッハッハッハッ!」
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小田原城。
北条幻庵は、何度目か分からぬ催促状を眺めていた。
「まだ今川から返書は来ないのか」
氏康が答える。
「……はい」
その横で、氏政がぽつりと呟いた。
「多分、本気で見捨てるつもりなのかも。
今川は、本当に当てにはできなさそうだね……」
多目元忠も頷く。
「催促は続けておりますが、完全に無視されているかと。
若の言う通り、今川は当てにはなりませぬ。
伊達に動いてもらうほかありませんな……」
その時だった。
襖が勢いよく開いた。
息を切らした風魔小太郎が飛び込んでくる。
「大変だ!!!」
「若の言っていたことは、ただ……」
「はあ……はあ……」
幻庵が手を上げる。
「落ち着け……続けよ」
氏政は小太郎を見ると、にっこり笑った。
「小太郎、おかえりー。
お茶持ってくるね」
そう言ってスタスタと部屋を出ていく。
元忠はその背中を見ながら、しみじみ呟いた。
「若……あれ以来、立派になられましたな……泣」
その隣では、氏康がガタガタガタガタ……。
小太郎は申し訳なさそうに口を開いた。
「……申し訳ねえ」
「今川の奴らの話を盗み聞きしたんだが……」
「……はあ……はあ……」
一度息を整えた。
「あいつら、公方様から『動くな』と言われてたらしい」
「若の言っていたことは正しかったんだ。
あてにできねえってな」
だが、小太郎の表情が険しくなる。
「……いや、公方様の命令を受ける前から、義元の野郎は見捨てるつもりだったようだ」
「『しつこいのぉ』って笑っておった💢💢」
幻庵の顔が引きつる。
「……くそっ💢💢
今川め……調子乗ってんなあ💢💢」
氏康も俯いた。
「こうも簡単に見捨てるとは……」
「妻には、またなんと言えば良いのだ……」
そこへ氏政が戻ってくる。
「はい、小太郎。お茶」
「若、ありがとうございます」
小太郎は茶を受け取ると、一気に飲み干した。
「ぐびぐび……」
そして、再び拳を握る。
「……くそっ……💢💢
今川義元め……」
元忠は沈痛な面持ちで呟いた。
「残念だ……。
今川義元殿は、ここまで冷酷だったとは……」
「太原雪斎殿は、どう思われておるのだ」
小太郎は答えた。
「……義元と同じかと」
「…………」
元忠は言葉を失った。
「今川とは、早雲様からの仲だと言うに……」
「信じられぬわ!!!」
氏政も静かに呟く。
「……やっぱり、見捨てられたんだね……私たち……」
小太郎は頷いた。
「はい💢💢」
しかし、すぐに表情を切り替えた。
「……伊達に動いてもらうよう、早速また行ってまいります」
「まだ間に合うかもしれねえからな」
「では、ごめん」
そして、氏政へ振り返る。
「若、お茶、美味しかったですぞ」
「それじゃあ……」
ドロンッ
小太郎は煙とともに消えた。
元忠が呆然とする。
「……いきなり落ち着いて消えおった」
氏政も小太郎が消えた場所を見つめていた。
「……父上……」
「ちち……泣いてる?!」
氏康は俯いたまま、肩を震わせていた。
「え……」
「当主が泣かないでよ……」
氏政は心配そうに父を見る。
「……お茶、持ってくるね……」
氏康は顔を上げることができなかった。
「………父上……泣」
「ダメな息子で申し訳ございません……」
幻庵は拳を握りしめる。
「……今川め……💢💢」
そして元忠もまた、静かに呟いた。
「許すまじ……今川義元と太原雪斎……」
「奥方様が、なんと思われるか……」
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#主が自分用に作りました…
琴寧
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#ホラー
コメント
1件
うわあ、このエピソードめっちゃ政治の駆け引きが渋くて重くて好きです…。公方様の「うそうそ」からのギャップ、めっちゃ印象に残った😳 今川義元の冷酷さと北条側の怒り、氏政くんがお茶入れてあげる優しさにじーんと来た…。戦国って人の裏切りが暗くてリアルで、でもだからこそ「正義」とか「信頼」が光って見えるんだなって思いました。琴寧さんの言葉、ちゃんと心に届いてます🌙