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【第2部】最強転生者はもふもふスローライフにしがみつく!

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【第2部】最強転生者はもふもふスローライフにしがみつく!

52 - 【第3章】2-39. 新しい仲間もいるので生活スタイルが少し変わってきた(4/4)

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2023年08月05日

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時間は過ぎ、あっという間に夜。ムツキは就寝前の風呂上がりにソファでおモフに興じていた。彼は1日に必ず1回、日によっては3回程度、数匹から十数匹の妖精たちとスキンシップの時間を設けている。モフモフ要素の補給により、彼は心の満足度を高めている。


 妖精たちにもメリットがある。彼の持つ魔力を吸収すると、妖精たちは心地よく元気になれるのだ。近くにいればいるほど効果が高く、触ってもらえれば最も効果が高い。つまり、妖精たちにとっても、おモフは嬉しいイベントである。


 最近はそこにコイハがいることが増えた。彼女は白狐族特有の身体強化魔法を得意としている。身体強化魔法には、魔力の循環効率や吸収効率を高めるものもある。つまり、彼女がそれを唱えて近くにいることで妖精たちの魔力吸収効率が高まるのだった。


「コイハ、ありがとうな」


 コイハはまず尻尾をぶんぶんと振って返事をした。


「問題ない。俺もハビーの魔力を近くで感じることで安らげるんだ。優しくて温かくて、いい気持ちだよ」


 コイハの安心しきっている声色に、ムツキは嬉しそうに小さな笑みを零す。


「それはよかった。ところで、コイハもおモフしていいのか?」


 犬を触っていたムツキの手が一瞬、コイハの方に向かう。その手を彼女は尻尾でバシッと弾いた。


「……俺を触るハビーの手つきがやらしいから嫌だ。指の動きがやらし過ぎる。それだと、こんな所じゃ恥ずかしいだろ……」


「コイハの声、かわいいけどな」


 ムツキは気にならないといった様子で説得を試みるが、コイハは首を縦に振らなかった。


「……そんなこと言ったって触らせないからな。いい加減、そのやらしい手つきをやめてくれ」


「そうか。次のコイハの番が待ち遠しいな」


 ムツキは再び犬を撫で始める。犬が満足したのか、次はウサギが犬の居た位置にすっぽりと入ってくる。


「んなこと言ってると、姐御が泣いて怒って拗ねるぞ?」


 少しからかっているかのようにコイハが言うものの、ムツキはそれを意に介した様子もなく嬉しそうに喋る。


「そこまではないだろうけど、そういうところも可愛いじゃないか。ナジュのちょっと素直になり切れないところも好きだぞ」


「ごちそうさま。それはいいけど、姐御がそれを本気にして、ずっとそんな感じになったらどうするんだ? 姐御はハビーの反応に対して、振り幅が大きすぎる気がする」


 ムツキは少し考えた後に難しそうに唸り始める。


「うーん。それはちょっとだけ困るかもな。何事もたまにがいいんだ」


 コイハは笑う。


「そう思うならもう少しだけ、姐御だけに限らず、な」


「ありがとうな」


「急になんだ」


 ムツキが急にお礼を言ってくるので、コイハは少しうろたえながらも嬉しそうに尻尾をパタパタと振っている。


「だって、いろいろと考えてくれているじゃないか」


「俺はみんな好きなんだ。今ではサラフェやキルバギリーとだって、アフタヌーンティーをやっているくらいさ」


 樹海側を臨むウッドデッキにあるテーブルと椅子の上に、ハーブティーとお菓子の盛り合わせを用意しての雑談。親睦会と称して、彼女たちはお茶をしていた。ナジュミネやリゥパはムツキの話にすぐ持っていくので、他のメンバーはそこで彼を勉強しつつ、いろいろな話で花を咲かせていた。


「それはいいな。俺も今度それに参加させてくれ」


「男が女子会に堂々と入ってくんなよ……」


 コイハは呆れた声でそう返す。ムツキは驚いた顔をする。


「え……ダメなのか」


「……別の機会を設けるから、その時に呼ぶさ」


「ありがとうな」


 ムツキとコイハが楽しそうにやり取りをしていると、風呂上がりのユウがやってきた。


「コイはんだけムツキとイチャイチャしてずるいぞー」


 ユウはまだ上下の肌着だけを着て、両手をパタパタと団扇のようにして、顔の周りを扇いでいた。ムツキが少し眉を眉間に寄せる。


「ユウか。って、まだ肌着のままじゃないか。服を着なさい」


「お風呂上がりでちょっと暑いから冷めてからね。よいしょっと」


 ユウはムツキの言葉を適当に返事しつつ、彼の膝上に乗り始める。


「あ、おい。モフモフがいるんだから」


「ちゃんと避けてるよ」


「まあ、そうだけど」


 ムツキがさらに注意しようとすると、ユウが彼の手を持って、自分の頭の上に乗せる。


「私もなでなでして。いっぱい、いっぱーい、ね」


「……はいはい。ワガママさんめ。これでいいか?」


 ムツキは諦めて、ユウを丁寧に撫で始める。髪を梳くように撫でてはまた頭の上に手を置く動作を繰り返す。彼女は嬉しいのか、少しくすぐったいのか、顔をくしゃっとさせて喜んでいる。


「うむ。苦しゅうない」


 ムツキとユウがそうこうしているうちに、コイハから寝息が聞こえてくる。


「コイハは眠っているのか?」


「そうだろうね。ムツキの近くは心地良いから、どうしても眠くなっちゃうよね」


 ユウはもっと撫でろと言わんばかりに、ぺちぺちとムツキの腕を叩く。彼は撫で続ける。


「ユウも眠くなるのか?」


 ムツキの問いに、ユウは少し意地悪そうな笑みを浮かべる。


「うーん。むしろ、夜はあっちかなー」


「そういう発言をその姿で言うなって言っているだろう」


 ムツキが非難気味に呟くと、ユウが少しムッとした顔で下をべーっと出す。


「ムツキのいじわる! ふん、だ! じゃあ、先にムツキの部屋で待っているからね!」


 今夜のムツキの相手はユウとキルバギリーの2人だった。この組み合わせは初めてなので、彼は大丈夫かどうか不安になっている。きっとキルバギリーが合わせてくれるのだろう、と彼は信じている。


「まったく……」


 ムツキは小さく溜め息を吐きながら、手をコイハの方へと近付ける。その瞬間、彼女の尻尾が彼の手を素早く弾く。


「まったくはこっちのセリフだ。油断も隙もない」


 寝息を立てていたはずのコイハが起きて、ムツキに小さく溜め息を吐く。


「ん? 俺はコイハのこと好きだぞ?」


「……そういう意味じゃない」


 コイハはそっぽを向きながらも少し嬉しそうにしていた。

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