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留置場のガラス越しに、妹がいた。
髪は乱れ、頬はこけていた。
だけどその瞳だけは、昔のまま――怯えと、かすかな希望が混じったような光を湛えていた。
「兄さん……来てくれたの?」
「当たり前だ。……美咲、本当なんだな? 君が、やったって……」
「違う。私じゃない。信じて」
その声はかすれていたが、嘘をついているようには聞こえなかった。
「でも、警察は証拠があるって言ってる。指紋が――」
「ナイフなんて触ってない! ……ただ、あの日、彼の部屋に行ったのは本当。でも、殺したりしてない」
妹は涙をこぼした。
俺の胸の奥に、熱いものが込み上げる。
「わかった。俺が調べる。必ず、真実を見つける」
そう言った瞬間、妹の瞳に初めて光が戻った。
それが、すべての始まりだった。