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ふぅーっと息を短く吐き出して、
「しかし華さんや秀司には、申し訳ないことをしたな」
グラスに注ぎ足した水を飲み込むと、彼がぼそりと低く呟いた。
「どうやら私に力添えをしてくれているのだろうことは、少なからず感じてはいたんだが、思うようには応えられなくてな」
まさか気づかれていたなんてと、僅かに眉根の寄せられた愁い顔を見つめた──。
「だがもう、私は迷いはしないから」
そう口にして、椅子を立ち上がった彼が、
「おいで」
と、腕を軽く広げた。
その広い胸に迷わずに飛び込むと、腕の中に固く抱き留められた。
こらえていたはずの涙が、また頬を滑り落ちる。
「泣かなくてもいい」
目尻に溜まっていた涙が、彼の指でスッと横に拭われる。
「私は、もう君を泣かせはしないから」
甘く優しげな声音が耳を掠める。
泣かずにいようと思っても、嬉し涙は止まることなく溢れ続けた……。