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【煉獄の魔人】
放課後、俺は委員会で呼ばれてたから、阿部に待っててもらって行ってきた。今日も一緒に下校するし、委員会の用事はすぐ終わるって聞いたから。
でも、用事が終わって教室に行ったら阿部がいない。教室で待ってるって言ってたはずなのに。あの阿部が、勝手に帰るとは思えない。
だから探し回る。トイレにもいない。他の教室にもいない。クラスメイトを見かけて、声をかけた。
💛「阿部、見なかった?」
「ああ、阿部なら中山たちと歩いてたよ。多分、プールの方」
💛「わかった。ありがと」
何でプール? しかも、中山って別に阿部と仲良くない。人をからかって笑ってるのを教室で見かけて、やな奴って思ってた。その中山と阿部がプールなんて、嫌な予感しかしない。
だから走ってプールに向かうと、プールに続く扉が開いてた。
聞こえてくる笑い声と、水の音。急いで駆け上がってそこで見えたのは、プールサイドでゲラゲラ笑ってる中山たちと、プールで溺れてる阿部。
見えた瞬間に、持ってたカバンを投げ捨ててプールに飛び込んでた。阿部の体を抱きしめて、苦しそうな阿部を見て、俺の全身が燃え上がるように熱くなった。
数秒後、周囲は水蒸気で真っ白に覆われて、俺はプールに立ってた。ぐったりとした阿部を抱いて。
プールの水は、一滴も残ってなかった。
素肌に見えている、火傷のような亀裂の痕。それは腕全体に広がっている。横目で見えた髪の先が、炎のように赤とオレンジにグラデーションがかかってて、そこから火花が散っているのも分かった。
水蒸気が晴れてきて見えた中山たちの顔は、まるで恐ろしいものを見ているようだった。でも、気になんかしてられなくて、プールサイドまで歩いて行くと、阿部の体をプールサイドに横たわらせる。
意識はない。でも、息はしてる。
何故か土下座をしてる中山を睨むと、目が合った瞬間に「わああ」って悲鳴を上げながら逃げてった。
💛「いや、まだ何も言ってねえんだけど……」
言ってやりたい気持ちはあったけど、追いかける必要もない。明日になったらどうせ、学校で会うから。
💛「阿部、阿部」
体を揺さぶるけど、反応はない。水を飲んでる可能性もある。どうしたらいいか分からない。自分にはその知識がないから。プールサイドに上がって、カバンからスマホを取り出すと、救急車を手配した。けれど、こんな格好で会えるはずもなく、同じ中学に通っている高地に電話をして、阿部のことを引き継いで学校から離れた。
向かう先は、霊泉の滝。どんな熱も下げてくれる不思議な水として知られてるらしく、両親が調べてくれていた。異能の影響を受けないのだと。
山の中にあるから距離はあるけど、乗り物に乗るわけにもいかないから、トレーニングの一環だと思って走った。家にはオーバーロードしたから滝に行くって連絡してて、着いたのは夕方だった。近くにあるお寺の住職に事情を話して滝に連れてってもらった。まあ、俺の姿を見て、すぐにオーバーロードだって分かってくれたんだけど。
簡単に着替えだけさせてもらって、滝に入る。冷たくはなかった。多分、オーバーロードしてすごい熱になってるから。滝に打たれてる間、俺が中学生だってのもあるからか、住職はずっと近くにいてくれた。後から聞くと、たまにオーバーロードした人が来るから、その時は付き添うようにしてるらしい。
そのまま滝に打たれ続けて朝になって、ようやく症状が落ち着いたのは、昼になってからだった。
滝から出て、上がると住職がバスタオルを持ってきてくれて、お寺に戻ると食事まで用意してくれていた。
「また、もしオーバーロードしたらいらしてください。その時はまた、お付き合いしますよ」
💛「ありがとうございます。あの、オーバーロード以外でも、来ていいですか? その、気合いを入れたい時とか、精神統一したい時に」
「もちろんですよ。お待ちしてますね」
迎えに来てくれた両親の車に乗って、阿部の入院先の病院に連れて行ってもらって、今日には退院できそうという話に、ホッと安堵した。
学校に復帰してから、煉獄の魔人って呼ばれてるのを耳にして、阿部が笑ってるのを見て複雑な気分になった。
誰のせいでなったと思ってるんだ、と。でも、こうして阿部が笑ってくれてるならいいか。
納得はしてねえけど。
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コンソメパン
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