テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ふと人生を振り返ると、歩んできた道に何も残っていないと気付く時がある。
あの時が楽しかった。あの時が悲しかった。そう一言で纏めるのは簡単だが、その薄っぺらい膜をゆっくりと一枚づつ剥がしていく度何も成さず、何にもなれない自分ばかりが写り、腸をかき混ぜられた様な感覚がずっと続く。別に他人ほど幸せでも不幸せな訳でもない癖に不幸ぶる自分が漠然と嫌いで、それを表に出さない事に最低限の尊厳を覚えている自分が更に嫌いだった。
他人と比べ何かしら秀でてる要素を渇望してる癖して自分で決めた物や頑張ると決心し積み重ねた物を面倒臭いの一言で崩してしまう。自分を形成する何かを剥いで、剥いで、ドブに沈めている気がしてならなくて、そんな沈みきった気持ちを軽くする為にネットへ逃げ出す。穴だらけのズタ袋に空気を詰め込み続ける。
いつから?
一つ少ない次元の中、無駄に煌びやかな色彩の中誰かが何かを成している様を見つめ続けていた時、自分には誰かに何かを与える事など出来やしないとずっと自覚していた意識を数瞬のスクロールと共に弾き飛ばした。手の内の鉄板も投げ捨てた。『どうせ出来やしない』なんて盾にも檻にもならない言い訳を振りかざしながら現状に不安と安心感を抱えて、やるせなさに埋もれて布団へ沈む。
いつまで?
明日が嫌い。何の面白味もない今日に未練がある訳では無いが、そんな今日が次もあるから。きっと明日にいる私も同じ事を考えているのだろうし、明日の自分を生きてるのは今の私じゃないって言い訳ばかりしている。明日を変えられるのは今日だけなのにね、なんて耳を塞ぎたくなる言葉が耳の奥で響く。今日の自分が出来なかった事を押し付けてる。昨日の私も同じ事を考えてた癖に。
目が覚めた時、妙に膜が掛かった記憶へ何も感じなかった。昨日がどうだとか、これまでがどうだとか、どれも思い出せず何も感じない。ただもう一度眠りに就く事への欲求のみで、その数分が何よりも至福だった。また今日が始まる。私はまだ今日を生きてる。
そして今日が終わりかけるその時、明日以降の私に私を押し付けて融け出してゆくのだろうね。
昨日以前の事なんて殆ど思い出せない。どうせ何も成さず、誰にも与えられず、今の私と同じ様な事を考えながら呼吸だけして死んで来たのだろう。
明日も、その明日も、そのまた明日も、私は今日を無意味に生きている。
だから明日の私へ、今日をまだ生きている私から
もう明日が来ませんように。