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優恵楼(ゆけろう)と、優恵楼の親友、流来(るうら)に似た行商人、リンダーレト・ルウ・ランダーワグ
2人の生活が始まった。朝起きるのはルウラのほうが早い。
ルウラは起きるとすぐに自分の相棒であり、友達であり、家族であるラマ、シェアとハーフ2頭、いや2人と
優恵楼の家族、ニワトリ、お主とお奥の2羽、いや2人に朝ご飯を食べさせる。
計4人が朝ご飯を食べ終えると優恵楼が起きてくるまで川で釣りをする。
穏やかな流れの川に木の枝と糸、鉄の塊でできた針の先に
小麦の収穫などで出る余った種で作った餌をつけて川にぽちゃっと投げる。
川の流れの方向に糸が流れる。その糸に正対するように体をそちらに向ける。
川のせせらぐ音、風で木々の葉がざわめく音、鳥の囀り、ニワトリの鳴き声。
「…すぅ〜…」
目を瞑り、鼻から息を吸い込む。緑、芝、土、草木の香り、せせらぐ川の水の香り。
「…ふぅ〜…」
鼻から息を吐く。大自然を感じ、1日の始まりを感じ、1日を始められたことに感謝をする。
すると手にポチャンと魚が食いつく感触がした。パッっと目を開け、グッっとしなる釣竿を思い切り引く。
すると魚が水滴を携え宙を舞い、その水滴にいい天気の陽射しが反射している。糸をキャッチする。
「おぉ〜活きのいい鮭だ」
今現在釣り上げたのだから活きがいいのは当たり前である。
針から外すとアイテム化し、小さくなるのでそれをアイテム欄にしまう。
もう一度針に餌をつけて川へと放る。また目を瞑り、感触が来たら目を開け釣竿を引く。
優恵楼もベッドの上で目を開ける。隣のベッドに目を向ける。空(カラ)。
また少し不安になる優恵楼。ベッドから降りてオークのドアの前に行く。
オークのドアの4つの小さな小窓からは陽が差し込んでいる。
「今日もいい天気だ」
前日、ルウラがいないかもしれない
自分が作り出したイマジナリーフレンドだったのかもしれないという不安があった。
前日も同じように起きてベッドを見たら空(カラ)で、今日も同じで不安になった。
「…よしっ」
オークのドアを開く。外の香り、そして陽射しが一気に強くなる。
辺りを見回す。するとちょうど釣竿を引くルウラの後ろ姿が目には入った。
「…よかった」
安心したらあくびが出た。
「んん〜…おはよぉ〜…早いね…」
体を伸ばしながらルウラに話しかける優恵楼。
「ん。おはよ。鮭、3匹目」
と糸の先でピチピチと体を捩らせる鮭を手にするルウラ。
「おぉ〜。じゃ、鮭焼いて朝ご飯食べようか」
「だな」
と燻製機で鮭を焼いている間、すでに焼いていた鮭とご飯を持って川辺に行く。
「あぁ〜…いいねぇ〜」
「自然な。飽きないよな…」
「うん」
と言いながら朝ご飯を食べる。
「ルウラはいつもこんな朝早いの?」
「あぁ。モンスターが焼けるのが日の出だからな」
「あぁ。そっか」
ワールド メイド ブロックスに出てくるモンスターたち、ゾンビやスケルトンは
闇に隠れて生きる存在なため、陽の光を浴びると人体自然発火現象によって全身が火に包まれ
水に入る、もしくは日陰に行って火が自然に消えるのを待たない限りは焼け逝くのである。
「1日ほぼ歩きっぱだからなるべく早く動き出したいんだよね」
「なるほどね。村見つけないとだもんね」
「そ。道中手に入れた物品も嵩張るからさ。なるべくエメラルドに変えたいんだよね」
「あぁそっか。エメラルドね」
「そ」
「物はなに基準で手に入れるの?」
「ないけど」
「ん?」
「いや、基準とかないけど、別に」
「ないの!?」
と驚く優恵楼に驚くルウラ。
「なにそんな驚いてんだよ」
「え。いや、なんか高値で売れるものとかそんなんが基準としてあるのかと思ってたから」
「いや、まあそーゆーときもあるよ?ただそーゆーのばっかだと向こう(村人)も
高い値でしかやり取りできなくて、気軽な交渉ができないんだよ。
だから装飾用のサンゴだったり、ペット、鑑賞用のウーパールーパーだったり
ま、求められることは滅多にないけど、その地域では珍しい木の苗だったり
そーゆー珍しくても安く売れるものも集めてるから」
「へぇ〜。そーゆーもんなんだ?」
「そ」
そんな話をしている間に朝ご飯は食べ終え、そのまま話を続ける。
「ちなみにさ、サンゴとかって海の中じゃん?」
「めっちゃ当たり前のこと言うじゃん」
「てことは海潜るんだ?」
「すごいな。めっちゃ当たり前のことしか言わないじゃん」
バカにするように驚くルウラに無言でルウラの二の腕を軽く殴る優恵楼。
「いてっ」
「今日潜ってみない?」
「え?」
「潜ってるとこ見てみたい」
「…。ま、いいけど」
ということで2人は海に行くことになった。上の服、そしてパンツを脱いで
ルウラはシェア、ハーフの元に行ってごそごそとなにかをして2人で海岸へと歩いて行った。
「なんもいらないの?」
「そんなわけない」
と言ってルウラは懐から緑色のなにかを取り出した。
「なん?それ?」
ルウラはその緑色のなにかを首を覆うようにつけて
「これがないと長く潜れないからな」
と言って口にもその緑色のなにかをあてがう。
「あぁ!亀の鱗でできるやつだ!」
と優恵楼が言うと今つけたばかりの緑色のなにかを口から外し
「よくわかったな」
と驚いた。
「まあ…ね」
ドヤ顔というか、なんで知っているかをうまく説明できる気がしなくて
なんとも言えない顔となんとも言えない言い方になる優恵楼。
ルウラはもう一度亀の鱗でできた頭装備を首から口元に伸ばしてつけて
「じゃ、オレは潜るけど、無理についてくるなよ」
と籠った声で言う。
「おっけー」
ルウラが海に入る。優恵楼も続いて海に入る。
「おぉ〜」
波は穏やかで、海水なのでぷかぷかと浮遊する感覚がある。ルウラは頭から海へと潜っていった。
優恵楼も潜りはしないが頭を海中に入れる。しかし、水自体への恐怖はないものの
小さい頃に海でゴーグルをせずに目を開けてめちゃくちゃ痛かった記憶があり、目を開けるのを躊躇った。
しかしルウラの姿を見なければ…という思いで恐る恐る目を開けた。
すると不思議なことに、まるでプールのような感覚で、むしろ真水の中で目を開けたかのような
少し目は開きづらい感覚はあったものの、痛みは一切なかった。
徐々に視界がクリアになっていって、クリアな海の中を華麗に泳ぐルウラの姿が見えた。
ルウラは海底まで潜っていき、辺りを見回し上がってきた。
「もうちょい沖行く」
と籠った声で言うルウラ。
「うん」
優恵楼は沖へ泳いでいくルウラの後ろをついていく優恵楼。
先程も言った通り、海はクリアで、沖へ泳いでいくと、潜らずとも海底がカラフルになっていくのがわかった。
「んじゃちょっと潜ってくる」
「うん」
ルウラがもう一度華麗な潜水を見せる。優恵楼も顔だけを海中に入れ
まだ海で目を開けるのが怖かったが、先程目が全然痛くなかったので恐る恐る目を開けると
やはり目は痛くなく、目の前に広がったのはカラフルなサンゴにカラフルな珊瑚礁
カラフルな熱帯魚たちが泳ぐ世界に潜っていくルウラの後ろ姿。
感動した。もちろん海の上からも海中は見えていた。しかし、いくらクリアな海だからといっても
海の上から見ていたときは、テレビで見ている感覚が少しあった。
だがいざ潜って同じ海中で見てみると、テレビで、いや海の上から見るのと違い
自分が目の前に存在しているものと同じ世界に存在し
その世界をしっかり自分の目で見ているという感覚があり
優恵楼の人生で今までこんな綺麗な海中を見たことがなく感動していた。
ルウラは海底まで潜っていき、キラリと光るツルハシを取り出して
サンゴや珊瑚礁を採って上がってきた。そして亀の鱗でできた頭装備を口元から外し
「こんな感じ」
と優恵楼に言った。
「めっちゃ海綺麗だね!」
「あぁ〜…。あぁ。そうか?」
ルウラとしてはこれが普通なので「綺麗」とも思っていないようだった。
「こんな綺麗な海初めて見た」
「逆にオレは汚ねぇ海見たことないけどな」
海から一旦上がり、砂浜で一旦休憩する。
「海ってなんか疲れるよね」
「な。なんか運動量以上の疲労が襲うわ」
どうやらこの世界でも海は必要以上に疲れるというのは共通なようだった。
「てかさ!てかさ!」
「うるさ。なんだよ」
目をキラキラ光らせながら興味津々にルウラに詰め寄る優恵楼。
「サンゴ採るときに使ったツルハシってさ!もしかしてエンチャントされてるやつ!?」
「うるさいなぁ〜。なんだよ。そうだけど?」
「ちょ。ちょ、見せて」
なぜか変態的な感じになる優恵楼。
「な…。ほら」
ルウラはツルハシを取り出す。
「おぉ〜!!」
そのツルハシは水色に輝いており
その水色の輝きとは別で、虹色のような、不思議で魅惑的な、怪しげな光に包まれていた。
「ダイヤモンドのツルハシ?」
「そ」
「エンチャントつき?」
「そりゃそうだ。サンゴはシルクタッチじゃないと脆くて無くなっちゃうから」
「あ。そーゆー理由なんだ?」
「?それ以外になにがあるんだよ」
優恵楼は自分がテレビ画面、パソコン画面、モニターの前でイチプレイヤーとして
ゲームとしてワールド メイド ブロックスをプレイしていたときは
ただ単純にエンチャント無しのツルハシや素手ではアイテム化せずに無くなってしまうからという認識だったが
実際にワールド メイド ブロックスの世界に来て
ワールド メイド ブロックスの世界に住んでいる人の言葉を聞くと納得できた。
ちなみに「Enchant(エンチャント)」という英語の意味は
魔法をかける、おまじないをかける、魅了する、うっとりさせる、心を奪う。
優恵楼は実際にワールド メイド ブロックスの世界に住んでいるルウラの言葉にエンチャントされた。
「他は!?他には!?」
「他?他っつってもなぁ〜…。村行くわけでもないから
たくさん採ったところで荷物圧迫するだけなんだよなぁ〜」
「それもそうか…」
拠点の移動が頭をよぎる。
ただ拠点移動するの、ゲームでもめんどいんだよなぁ〜…
と思う優恵楼。
「ルウラ、地図持ってる?」
「地図?持ってない。ていうか必要なかったし」
「え。めっちゃ必要でしょ」
と優恵楼が驚きながら言うとルウラがジト目で優恵楼を見ながら
「オレ、行商人だぞ?行った土地には二度と帰れないと思って旅してるんだから地図なんて必要ないの。
あとオレが地図作ってたらアイテム欄足りなくなるわ」
と言った。ワールド メイド ブロックスのアイテムというのは一部を除いて
同じアイテムなら複数をストックという形でアイテム欄1つで収めることができる。
基本的に64個が1ストックとされている。
優恵楼とルウラが朝食べた焼き鮭も64個を1つのアイテム欄で収めることができるのだ。
しかし一部のアイテム、そして違うアイテムは1つのアイテム欄に重ねて収めることはできない。
そして地図というアイテムは特殊で「空白の地図」という地形が記される前の地図は
64枚を1つのアイテム欄に収めることができる。しかし「空白の地図」に地形を記し
「地図#1」や「地図#2」といったようなアイテム名になった場合
同じ「地図」でも重ねることができなくなる。
「地図#1」や「地図#2」では違うアイテムになってしまうからである。
なので「地図#1」を2枚作ればその2枚は1つのアイテム欄に重ねて収めることができる。
なので地図を#1から#10まで作ったら10のアイテム欄を使うことになるのだ。
「あぁ。まあ、そうか。…地図自体は知ってる?」
「え。バカにしてる?」
「違う違う!いやルウラには帰ってきてほしいとは思うけど、でも、こう、なんてーのかな。
ルウラのアイテム収穫もっと見たいから、そのためにはアイテムを捌く場所が必要なわけで。
そうなると村に近い場所、もしくは村に住んだほうがいいのかなって。
そうなると村見つけないとなぁ〜と思ってさ」
「あぁ〜…。まあ、村が近いと助かりはするな」
「地図作って村ないか見てきてほしいんだよね」
「…。あぁ、オレが?」
コクコク頷く優恵楼。
「なるほどね。ま、いいけど」
「ま、正直今貴重な物って特にないから早急に移動してもいいんだけど。
最低限のご飯とかは確保しておきたいし」
「まあ、そうだな。オレも正直飯問題は直面してたから」
「そうなんだ?」
「村での取引でいろいろ買って旅出るけど、次の村に行くまで持つかなぁ〜とか
案外近くて食料余るときもあるし、逆に全然村見つからなくて魚釣ってそのまま食べたりとか」
「そのまま!?」
「あぁ。釜戸とか燻製機とか村にしかないからな」
というルウラの言葉を聞いて
あ、ルウラはもしかしてクラフトできないのか
と思った。そしてルウラは続けて
「だから優恵楼と会ったときはビビったよ。そもそも服装がオレたち行商人とも違ったし
村人とも違ったし、なんか家ともいえない家に入ったら
チェストとか釜戸とかベッドとかいろいろ置いてるし、目の前でベッド作るし」
「悪かったな、家とも呼べない家で」
頬を膨らまし、ムスッっとした顔をルウラに向ける優恵楼。
「うん。あれは家ではない」
追撃をするルウラ。
遠慮ないとこまで流来にそっくりかよ
と思う優恵楼。
「てか行商人ってルウラ以外にもいるんだ?」
「いるね。滅多に会わないけど、ごく稀に会う」
「へぇ〜」
どうしようか結局結論が出ず
「えい」
と脳死で海に飛び込む優恵楼。口に入る水はしょっぱいのに海中で目を開けても目が痛くないという不思議。
「へーい」
青春のように砂浜で座るルウラに水をかける優恵楼。
「…。なんだよ」
「え?楽しいじゃん」
「結局これからどうすんの?」
「えぇ〜…。えい」
またルウラに水をかける優恵楼。
「考えろっつってんだろ」
ルウラが優恵楼にタックルするように海に飛び込む。
2人で水飛沫を飛ばしながら笑顔で戯れ合うその様子は、夏の青春そのものだった。
現実かもわからない世界で「拠点を移すか否か」ということから現実逃避している優恵楼。
陽が天辺に来たのでお昼ということで家とも呼べない家、拠点に戻り、川辺でお昼ご飯を食べた。
「さて?これからどうするかマジで決めないとな」
ルウラが議題をドスンと真ん中に置いて優恵楼を見る。
「あぁ〜…」
言いながら拠点に入っていき、地図を片手にルウラの元に戻る。ルウラに見えるように地図を広げる。
「ご覧の通りここら辺にはなぁ〜…んもないんですよ」
「おぉ〜。地図だ。ひさびさに見たわ」
「あ、ここ」
と優恵楼が地図を指指す。
「ここ裂け目があるんよ」
「あぁ。渓谷な」
「落ちてさ」
「マジで!?」
「うん。死ぬかと思った」
「なんで助かったん?」
「壁から水が滝みたいに出ててさ」
「あぁ。なるほどね。水に助けられたのか」
「そうそう。もしかしてルウラもある?」
「いや、オレはない」
「ないんかい」
コケる優恵楼。
「いや、村人と交易してるときにいろいろ話してて
そのときに、それこそ渓谷に落ちたことあるけど
水の上に落ちて助かったんですーみたいな話聞いたなぁ〜って」
「なるほどね。でもルウラ行商人やってんのに渓谷出会ったことないの?」
「あるに決まってんだろ」
「でも落ちなかったの!?」
と優恵楼が驚くとルウラは「やれやれ」みたいな表情をする。
「オレ1人の命じゃないからな」
とニワトリのお主とお奥の家の囲いのフェンスに繋がれたラマのシェアとハーフを見るルウラ。
「あぁ〜」
「オレ1人なら渓谷登って上がれるけど、あいつらと一緒だと難しいから
足元には気をつけて歩いてるんだよ」
「なぁ〜るほどぉ〜」
なんて話していると空がオレンジ色になってきた。
「で?結局明日からどうすんだよ」
「地図2枚渡すから、あ、この地図と空白の地図」
「おう」
「だから一旦この地図外に行ってもらって地図作成したら1回帰ってきて?
そしたら地図広げるから、広げたらその地図を埋めてきてほしい」
「ん。わかった」
陽が沈んできて、辺りが暗くなってきたので拠点の中へと入る。
「夜ご飯どうしよっか」
「パンでいんでね?」
「パンね。オッケーオッケー」
と夜ご飯を食べて早々に寝ることにした。