どうも皆様、サカナです
今週少なくてごめんなさい、体育祭あって死んでたんです
今日はドイツ統一の日!
まあドイツ推しのあっしが書かんわけにゃあいきませんよ
建国記念日に入るのかわからなかったので単発です
なるべく史実に寄せてますけど、詳しいとことか色々違うと思うんで信じないでください
20世紀、それは激動の時代である。
二度の世界大戦や資本主義と社会主義の対立、帝国主義の終わりから各国のグローバル化まで、現代へと繋がることが多々あった。
第二次世界大戦の敗戦国。
これは、ドイツに“いた”とある双子の話である。
「Guten tag!えへへ、また来ちゃった」
「Hallo ヴェスト!もう、また仕事をサボったね?別にいいけど!」
「兄さんだってここで待ってたじゃんか〜!」
東ドイツの中にある東ベルリンと西ベルリン。
1950年代、そこは自由な往来が認められた場所だった。
仕事を覚え始めたばかりの2人はよく、アメリカとソビエトの目を盗んではヤグルマギクの咲くこの公園で落ち合っていたのだ。
「ね、兄さん、今日はお菓子持ってきたんだよ」
「本当に?またアメリカさんから貰ったやつじゃないの?ヴェスト1人で食べればいいのに」
「兄さんと食べた方が美味しいから!ほら見て?こんなにクッキーをもらっちゃった!」
「わ、美味しそう!アメリカさんってやっぱり太っ腹だね…ソビエトさんは甘いもの苦手だから、何にもくれないや。大人になったらビールでもやるーって言われたけど、まだまだ先は長いなぁ」
「あははっ!じゃあ、いつか2人で飲もうよ!」
大きな木の下、青いヤグルマギクに囲まれながらクッキーを食べる。
2人で夢中になって食べていれば、それはあっという間になくなる。
そうしたら今度は、何気ない雑談に花を咲かせるのだ。
昨日可愛い野良犬を見かけた、仕事が上手くできて褒められた、アメリカと映画を見た、ソビエトと雪遊びをした、などなど、普通の兄弟のように話をしていた。
しかし数十分もそうしていれば、当然保護者に見つかるわけで。
「「わっ!」」
ほとんど同時に首根っこを掴まれ、持ち上げられた。
「あ、ソ、ソビエトさん…」
「アメリカさんも…」
「テメェら、あんまりサボるんじゃねえよ。兄弟に会うのはいいが、長い時間こっちにいられると不都合なんだ。国のくせに自国を空けるんじゃねえ」
「仕事を溜めて苦労するのは後のお前たちだ。もう戻るぞ」
「「は、はーい…」」
休息のためにこの公園に来たとき、いつもこの会話が繰り返されている。
米ソの2人も止めないあたり、多少哀れには思っているのだ。
自分たちの都合であることを自覚しているが故に、あまり強くは言えない。
分断されても仲の良い兄弟は少ないからこそ、この関係を大切にして欲しかった。
しかし1961年、まだ少年だった2人がいくらか成長したこの年。
東ドイツの東ベルリンにて、巨大な壁が建設された。
これは有名なベルリンの壁であり、近くで遊んでいた子供を射殺するほどに厳重な警備が当てられていた場所だ。
「あぁ…ついに建ててしまったな…」
そう呟くのは、成長した東ドイツ。
かのナチスドイツの実子でありながら、幼くして分断された東ドイツを治める青年。
ここ数年に色々ありすぎて、軽く悟ってきている。
くすんだ窓から見るのは、どこまでも続くベルリンの壁だ。
表向きは西ドイツからの侵略を防ぐため。
ならば裏は?
答えは西ドイツへの亡命を防ぐためだった。
社会主義、共産主義というものはどうにも発展しにくい。
資本主義に比べて確実に、けれど何年も何年もかけて経済をゆっくり成長させるせいで、この頃にはほとんどの東側諸国が経済難に陥っていた。
当然東ドイツもそのうちの1人で、命をかけてでも西ドイツやその他西側諸国へ向かう者が後を経たない。
「ヴェストは、元気かな…」
少し内気で、けれど優しく、けれど時には勇敢な双子の弟。
もう何年も会っていないが、元気にしていたら嬉しいと思う。
確か、アジアにも自分たちと同じように引き剥がされた双子がいるとソビエトから聞いたな、と思い出して、改めて兄弟に会いたくなった。
西は発展しているらしいから、少なくとも食には困っていないだろう。
「…あの壁を作ったのは僕だ。僕から距離をとったくせに、会いたいだなんて今更都合が良すぎる」
こんなことをしている場合ではない、自分には仕事が山ほどある。
そう言い聞かせ、窓から離れた東ドイツは椅子に座った。
近頃急激に増えたデスクの書類束の多さに眩暈がしながら、変わらぬ現状を変えるため、または終わりを延長させるため、使い慣れたペンを持ってインクを消費する。
その28年後、ついに東ドイツは限界を迎えていた。
経済の悪化と冷戦終結。
西ドイツも東ドイツも独立したい意思は同じであり、心の奥底では統一を夢見ていたのだ。
冷戦のせいで分断され、引き剥がされたヨーロッパの双子。
その冷戦が終わったとすれば。
もう、分断されたままの状態でなくたっていいはずだろう。
東ドイツの体にはガタが来ている。
毎日の労働もそうだが、毎夜眠れないからと睡眠薬を摂取しては酒で流し込む生活をしていた。
日に日に大きくなる民主化運動だってそうだ。
いよいよ命が終わる、 そのことをひしひしと実感していた。
「ヴェストに…会いたいな…」
最期は家族に看取られたい。
ふと思い立ち、東ドイツはとある政策を発表した。
ここに立つのも最後だろう、前までは父親が立っていたこの場に、今は大人になった東ドイツがただ1人。
「…只今より、我らが東ドイツは“旅行自由化政策”を発表する!国民は自由な旅を可能とし、今までの罰則を取り払うこととする!」
一瞬の静寂ののち、民衆はざわめいた。
「旅行の自由化だって!?」
「なら、こんなところにいる必要はない! 」
「あの壁を取り壊せ!!」
「…僕も行こう、この命が尽きる前に…」
長い長いベルリンの壁は、旅行自由化政策を発表したと同時に民衆の手によって破壊されていった。
人々が集まり、3メートルにも及ぶ大きな壁を道具で殴りつけて崩していく。
東ドイツはその様子を見守りながら、思い出したようにとある場所へと向かった。
「…懐かしい。昔はよく、ここで2人一緒に職務放棄してたっけ…」
そう、あのヤグルマギクの公園である。
今は秋も深まって寒くなってきた時期であるため、ヤグルマギクたちはとっくに枯れていた。
けれどあの木は健在で、枯葉を身に纏いながらぽつんと立ち尽くしている。
「ベルリンの壁と共に、僕も消えていなくなる…なんだか不思議な気分だな…」
東ドイツは西ドイツへ加盟する形での統一を、既に認めていた。
あとはこの邪魔な壁を取っ払い、国境を繋げるだけ。
そうなれば、東ドイツは完全に消滅する。
「ヴェスト…ここのこと、覚えてるかな…」
段々と手に力が入らなくなり、強い眠気に襲われる。
ここで眠ったら、もう兄弟に会えないだろう。
約束したわけではないけれど、兄弟ならここに来てくれる。
東ドイツは懸命に意識を保ち、片割れを待った。
ゆさゆさと誰かに揺すられる。
薄く目を開けば、そこには自分の顔そっくりの姿。
「ヴェスト…?来て、くれたのか…?」
「兄さん!!よかった…まだ生きてる…!」
東ドイツはいつの間にか眠ってしまっていたらしい、まだぼんやりとふわふわする頭でわずかに考え、ゆっくりと西ドイツの背に手を回す。
抱きしめてくる片割れは、東ドイツが知っているよりもかなり成長していて、きっと東ドイツより背が高い。
「ヴェスト、来てくれて嬉しいよ…ありがとう…」
「俺もだよ、兄さん…会えて嬉しい、ここに来てよかった」
「ヴェスト、よく聞いてくれ。僕はあの壁と共に崩壊する…きっともうすぐだろう、後何分もかからない」
「そんなこと言わないでくれよ、兄さん…まだ、まだ一緒にビールを飲んでない!」
「あぁ、そうだな…唯一心残りだよ…でもな、僕が死ぬことに変わりはない。だから、せめて遺言だけでも聞いてくれないか?」
西ドイツは東ドイツを抱きしめながら、ボロボロ涙を流して頷く。
「僕は…別れた時も、壁を建てた時も、もちろん今も、ずっっとヴェストのことが大好きだったよ…距離を取らざる終えなかったけど、いつもお前のことを考えていた…」
「それは俺もだよ!兄さんのこと、ずっと思ってた!」
「はは…やっぱり、双子、だもんな…離れてても、ずっと、一緒だ… 」
にこり、と優しく微笑んで、東ドイツは西ドイツの頬を撫でる。
「ヴェスト…僕が消えても、前を向けよ…お前は、すぐ引きずるからな…お前のそばで、いつも、見守って、る…」
「兄さん…兄さん!!!」
スゥ…と西ドイツに溶け込むようにして、東ドイツは消滅していった。
残ったのは西ドイツの着ていた服や帽子と、ロケットペンダント。
中身は、最初で最後の家族写真だ。
「っ兄さん…父さん…」
西ドイツ改め、ドイツは兄のロケットペンダントを首にかける。
冷え込むベルリンの澄んだ空気に、ペンダントはキラキラと光っていた。
1990年10月3日
それは、ドイツ再統一の日であった。
コメント
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うわぁ、、、!最期にビール飲んで欲しかった、、、!こんな仲良かったんやな東と西、、、枯れたヤグルマギクに包まれて息絶えそうな東ドイツの美しさと儚さよ、、、西ドイツもこれから兄ちゃんの分も背負って歴史を歩んでいくと思うと切ない、、、 あと西ドイツ泣く時絶対お目々キュルンキュルンやったろ?知らんけど()でもそうだと嬉しいな、、、目尻下げてジ◯リみたいな涙の流し方してて欲しい、、、(もはや願望)