「で?ハヤセル、まずどこに行くって言ってたっけ?」「何度も言わせないでくれるか?移民族街ミヤシロだよ」シュリメルの人の話を聞かないくせは今でも健在のようだ。「ミヤシロ?」とリーニが聞いてきた。おそらく両親からちゃんとした地理などの知識を教えてもらっていないのだろう「移民族街って言ってね、街の住民のおよそ7割が移民族で形成されてる街だよ」「どうしてそこに行くの?」「第1に広い、シュリメルの町とは比較にならないくらい広い」「小さい村で悪かったよ」「そこまで言ってないだろ?シュリメルの町にも魅力はたくさんあるし何より皆優しいじゃん。そこがあの村の魅力であり誇りだよ」「わかってるな」「機嫌がなおったみたいでよかったよ。2つ目の特徴はたくさんの地方から来た人が多い。それゆえに色々な文化がある。情報や珍しい商品を取り扱ってる店も多い。その分、食料や家具、娯楽などの商品と金銭のやりとりが活発な街だ。」「そこならシュリメルの町で買った小麦をパンにして売れば人口が多い分、早く売れるってこと?」「惜しい!90点くらいかな?ほぼ正解なんだけど今回はその場で1500金貨以上稼がないといけないわけだからパン屋に小麦をそのまま売ってそこで代金を貰う」「確かに、そうすればここでパンが売り切れるまで待たなくていいし、小麦をパンにして貰うためにかかる手数料もいらないってわけか」「でもそれだとパン屋が絶対損をしない?」「安心しろ2人とも、そこはこの街の特徴を生かす」「特徴?」「そう!ミヤシロは3方向を山に囲まれたいわゆる盆地だ」「それくらい知ってるよ。盆地は湿気がこもりやすくて水はけが悪いから、桃とか林檎の果樹栽培が有名だろ?」「今リーニに説明してるからシュリメルは街に入るために必要な通行証明書に名前と通行料確認しといてくれないか?」「へいへい」「つまりなリーニ、盆地での小麦の栽培は非常に困難なんだ。だから街にほとんどパンが出回らないわけだ。そこに小麦を売ってくれるというのだからパン屋は喜んで小麦を買い、高値で売り払うことができる」「でも皆同じ考えなんじゃないの?」「そこで、今シュリメルが書いている通行証明書だ。これは商業組合に5年以上所属しているかつ年間100金貨分の税を払っている商人にのみ発行されているものなんだ」「なら他の人はどうやって品物を持ち込むのん」「たいていの商人はこの通行証明書を持っているから規定がゆるい武具や装飾品壺何かの物は持ち込めるよ。だけど食べ物だけは別だけどね。どこの地方のものかハッキリさせにくい食品関係の取り扱いは結構厳しいんだよ」「ならどうしてハヤセは小麦を持っていけるの?」いつの間にかハヤセ呼びになっているのを疑問に思いながら「それは年間の税金が125金貨を超えると食用品販売許可証が貰えるんだ。これは食用品に生産地方と購入場所を保証しますよっていう書類なんだ。俺はそれを持っているから他の地域でも食べ物の販売ができるってこと」「とにかく今から行く街でお金を稼いだら次の街に行くってこと?」「ざっくり言うとね」「ならあたしが活躍する番は無さそうだから着くまで寝てるよ」「そうか。積み荷の中に寝袋があるからそれでも使って寝ててね」「わかった…おやすみ」「あぁ、おやすみ」リーニが寝袋を取りに行くのと同時にシュリメルがやって来た「ハヤセル、販売先の宛はあるのか?」「宛がないのに売りに行くほど計画性のないやつだと思われていたのか?」「いや?俺は村から出たことがないからお前の顔の広さを知らないだけだ」「そう言えばそうだな。ところでちゃんと通行証明書に署名したんだろうな?」「あぁ。勿論さ☆」「それが無いと宿どころか街にすら入れないんだからな?」「ところで後どれくらいかかるんだ?」「あの山、見えるだろ?」「あぁもちろん。地図で言うとニュートラル山脈あたりだな」「そう。そこのトンネル通路を使う。山のふもとに関所があるから、一旦はそこに向かう。荷馬車でだいたい半日ってところだな」「あと半日もかかるのかよ」「文句言うな。セレノア平野は広いんだから、無理もない。それよりミヤシロに着いたらお前には宿を取ってきてほしい」「それは、別に構わんけど?」「だから今のうちに休んどいてくれ」「んじゃ、お言葉に甘えてねさせてもらおうかね?」「おやすみ」そういうとシュリメルが荷台から寝袋を引っ張り出した。荷馬車の軋む音がシュリメルが眠りにつこうとする間鳴り続けていた。ようやく静かになると俺は通行証明書を確認した。特に問題が無いことを確認すると、久しぶりの仲間との旅に少し心が浮かれていた。
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