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お待たせしました。
人生初の長編、至らないところもあると思いますが、楽しんで読んでいただけると幸いです。
楽しんで読んでいただけると幸いですとつい三行前に言ったばかりですがかなり暗めの話になると思うし、かなり癖のある話だと思うので苦手な方はやめといたほうがいいかなと……
何で最初の長編で癖しかない小説書いたんだろう……(後悔)
<注意>
この物語はほとんどが妄想でできています。ご本人様には全く関係ありません。
人によってはキャラ崩壊があると感じるかもしれません。
シリアスものです。
ぺいんが記憶喪失になる関係上、キャラが全く異なります。人によっては受け付けないかもしれません。
以上の点をご理解いただけますようお願いします。
誰かが、呼んでいる声がする。
最初に思ったことはそれだった。
深い深い微睡の中、まともな思考もできないほどに薄れている意識が声が聞こえてくると言う。
「…い………!」
うるさいな、もっと寝かせてくれよ。
まだ眠くて眠くてたまらないんだ。
頼むから静かにしてくれ。
そう思う僕とは裏腹に意識は徐々に目覚めてゆく。
「ぺ…んさ…!…き……!」
どこかで聞いたことあるような声。
一体どこで?
「…の…から、起…てく…」
声がはっきりとしていく。
同時に意識がはっきりとしていく。
そして、
「────起きて」
覚醒する。
最初に目に入ったのは、白だった。
汚れがない文字通りの真っ白。久しぶりの明るい光に目が眩む。
……待てよ、久しぶりって何だ?
自分の中でそれが追求される前に、次に薬の匂いが鼻を刺した。
視覚、嗅覚と取り戻していって次に取り戻したのは触覚だった。
肌に異物の感覚がある。首を動かしてみると、点滴が刺されていた。
よく耳を澄ますと、何らかの機械の音であろう、高いピの音が一定間隔で聞こえてきた。
いつのまにか聴覚は取り戻していたらしい。
完全に取り戻せた五感で周りの様子を把握する。周りにはいくつかベッドがあって僕はそのうちの一つに横たわっているようだ。
これらの情報から察するに僕は今病室にいるのだろう。 点滴があることから察するに僕はそれなりの間ここにいたはずだ。
とりあえずここに至るまでの経緯を思い出そうとして────何も思い出せなかった。
記憶にあるのはついさっき……それどころか今も感じているものばかり。
違う、僕が思い出したいのはそんなものじゃない。
しかし、何度思い出そうと試しても何一つとして思い出せない。それはここに至る経緯だけでなく自分自身の名前すら思い出せない。
今以前の記憶が完全に、全てなくなっている?
確か、こういう状態のことを記憶喪失……というのだろうか?
……これは記憶喪失なのだろうか。それにしては何かがおかしい気がする。一体何が……
そこまで考えたところで、ドアが開いた音がした。
音がなった方を向くと、白衣を着た銀髪の男性が立っている。
その男は驚いたような表情でこちらを見た後、絞り出すような声で
「……か、ぜ?」
そう言った。
かぜ?かぜとは何だ?風?それとも風邪?どちらにしろ今こちらを向いてその言葉を言った理由がわからない。
そのまま男の方を見続けていると何かを思い出したように扉に振り返り、この部屋を出て行った。
そのまましばらく待っていると、 男は新しく三人連れて戻ってきた。
一人は紙袋をかぶっていて髪こそ桃色だとわかるがそれ以外の顔の要素が隠されているおそらく女性。
一人はサングラスをしていて緑の三つ編みの髪が特徴的な屈強そうな男性。
最後の一人は青い髪をしていて整った顔立ちをしている、緑の男と比べると劣るがそれなりに体が鍛えられている男性。
彼らは僕に一斉に駆け寄ると言葉をかけ始める。
「ぺんぱい……生きててよかったよぉ……」
そうピンク髪の女性(声から女性だと判断)が泣きそうな声で言う。
「お前……!もう本当に無理しないでくれよ……!」
次に青髪の男性がこれまた泣きそうな声でそう言った。
「……本当に、生きててくれてよかった……」
最後に緑髪の男性がやはり涙ぐんだ声でそう言った。
彼らは記憶を失う前の僕の……友達、なのだろうか。
……僕が起きた姿を見て安心してる彼らには申し訳ないが、僕は聞かなければならない。
彼らが何者なのか、僕はなぜ記憶を失ってしまったのか、僕は誰なのか。
「……ごめんなさい、あなたたちは誰ですか?」
────瞬間、空気が凍りつくのがわかった。
僕に声をかけてくれた三人は全員が信じられないという顔をしている。
ただ、彼らの一歩後ろにいた銀髪の、恐らく医師だけは違い、どこか悲しそうに目を伏せている。彼も僕の友人だったのだろうか。
「僕、さっきここで目覚めた時以前の記憶が無くて……ここは病院、ですよね?」
「……ぺいんくん、本当に、記憶が何もないの?」
緑髪の男がそう聞いてきた。どうやら僕の名前は「ぺいん」というらしい。変な名前だ。
「……冗談じゃ、ないのか?」
続いて青髪の男がそう聞いてくる。
そのまま桃髪の女も何か言ってくるかと思ったが、特に何も聞こえてこない。
少し気になって目を彼女に向けるとまさに茫然自失と言った感じで立ち尽くしていた。
その姿に何故か心が痛むのを感じながら、彼らの質問に答える。
「本当です。僕には何にも記憶がなくて、自分の名前すら覚えてないんです。信じられないかもしれないですけど……」
「…………僕は……僕は信じるよ」
緑髪の男がそう返した。
青髪の男と桃髪の女が信じられないような目で彼のことを見る。
「……だってさ、ぺいんくんはこういう時に嘘をつくような人じゃないから。僕だって信じたくはないけど……でも、信じるしかないよ」
信じるしかないと言う彼からは言葉とは裏腹に信じたくないという強い思いと、そして……僕への強い信頼を感じられる。
……いや、記憶を失う前の僕への、か。
「……俺も同じ意見だ」
続いて銀髪の男が言った。さっきと同じように視線が彼に突き刺さる。
「正直俺は……覚悟はしてたんだ。最初に風の傷を見た時に、もしかしたら俺たちにも助けられないかもって。できる限りの処置を施した後もずっとその可能性が頭の中にあったんだ」
話してるうちに彼の声は少しずつ震えてきて、彼の感情が伝わってくる。
彼は自分を落ち着かせるために一度間を置いて深呼吸した後、再び話し始める。
「さっき風が起きた時、本当に嬉しかったんだ。助けられた、風が生きてくれてるって……でも、風の目を見た時になんとなく察してしまったんだ。風には、記憶がないかもって……」
「ましろ先生、もう大丈夫です」
「らだおくん……」
青髪の男(らだおというらしい)が銀髪の男(こっちはましろ)の話を遮った。
「さっきから先生、話すのがずっと辛そうですよ。無理しないでください」
「気遣ってくれてありがとう。ただ、後一つだけ……風が記憶喪失になってしまったのは俺のせいだ。俺がもっと完璧な治療を施せていれば────」
「それは、違うよ」
再びましろ先生と呼ばれてる男の話が遮られた。しかし、さっきとは違い止めたのは────
「ぺいんさんが、全部……っ、全部、忘れちゃったのは……先生の、せいじゃないよ……さぶ郎がっ、あの時に捕まらなかったら……」
桃色の髪をした女性だった。
その声は涙のせいで途切れ途切れで、少しばかり聞き取りづらい。
言葉の諸々から察するに、恐らく彼女は僕が記憶を無くした原因を知っている。今更知ったってどうにもならないかもしれないがそれでも気になる。
「あの……あの時って何ですか?僕が記憶を失った原因を知っているんですか?」
僕がそう問いかけると、彼女は目に見えて動揺する。そんな彼女を庇うかのように、青髪……らだおという男が話す。
「お前が記憶を無くした……というよりかは記憶を無くす原因になった傷を負った理由は、あるギャングがお前のことを殺そうとしたからだ」
「……あるギャング……僕は何故、殺されかけたんですか?」
「それは…………とりあえずここで話す話でもないし、一旦ここから出ないか?……ましろ先生、ぺいんってもう動いても大丈夫ですか?」
「ああ、問題はないと思うが……」
「先生がそう言うなら大丈夫ですね。というわけで、ぺいんはどうだ?」
らだおさんは一旦話を切るとそう提案した。
まぁ、確かにそうかもしれない。ギャングの情報など誰がいるともわからない病院で話す話でもないだろうし僕はその提案に乗ることにした。
「大丈夫です」
「おっけ、じゃあ行くか……自分で動けるか?」
「……多分大丈夫です」
そう言って僕はましろ先生という人に点滴を抜いてもらうと、ベッドから起き上がり立った。
……立つという普通の行為ですらかなり久しぶりな気がする。そういえば僕はどれくらい寝たきりだったのだろう。
「僕ってどれくらい寝たきりだったんですか?」
「……約一月、かな」
ましろ先生がそう答えた。
一月……それだけ寝てれば何もかもが久しく思えるのも当然だな。もしかすると歩くことができないかもしれない。
そう思いながら慎重に一歩を踏み出すと、バランスが崩れて倒れる────なんてことはなかったがやはり少しふらついた。
そんな僕を見かねたのか、緑の男が僕に肩を貸してくれた。
「ありがとうございます」
「これぐらい当然のことだよ」
「……あの、お名前は」
「そういえばまだ自己紹介をしてなかったね」
彼はそういうと、僕の目を見て自己紹介をする。
「僕の名前はミンドリー……この街の、警察をしている者だよ」
「……警察」
警察。なるほどそれなら彼らの肉体が鍛えられていたのも納得がいく。
彼らが僕の同僚だったと仮定した場合、僕がギャングに殺されかけたのも僕が警察で、ギャングに何かしたせいで恨みを買ったと考えれば説明がつくな。
思考に耽っていると、他の三人も自己紹介をしてくる。
「俺の名前は青井らだお。同じく警察をやってる……さぶ郎、自己紹介できそうか?」
「うん……安保さぶ郎っていいます。警察をやってます」
「俺の名前は雷堂ましろだ。この病院で医者をしている」
「ミンドリーさんに……青井さん、安保さん。それから雷堂先生ですね」
僕がそういうと、全員の顔が一斉に暗くなる。何故。
「……僕、何かやってしまったでしょうか」
「……その、ぺいんくん。悪いんだけど苗字呼びじゃなくて名前呼びで……それもさん付けを外してみんなのことを呼んでくれるかな?後、敬語も外して欲しい」
「?なんでですか?」
「記憶を失う前の君は、みんなのことをそう呼んでたんだよ」
……記憶を失う前の僕、か。
「……わか……ったよ。ミンドリー」
「ごめんね、無理言っちゃって」
「……いえ、大丈夫です……あっ」
「……敬語を外すのが難しいなら無理はしないでいいよ」
「……ごめんなさい」
「謝る必要はないよ」
それでも、彼らの顔には僅かな悲しみの色が見える。期待に添えなくて本当に申し訳ないな……
そういえば、記憶を失う前の僕といえば……
「聞いてませんでしたけど、僕の本名って?」
「ああ、そういえばそれも言ってなかったね」
ミンドリーさんはそういうと、僕の名前を言うための空気を吸い込んだ。
「君の名前は伊藤ぺいん……僕たちと同じ、警察をやっている人だよ」
あとがき
正直このお話読んで「この話苦手だなぁ」と思う人はいると思いますし、そういう人は続きは読まないほうがいいと思います。
しばらく伊藤ぺいんが伊藤ぺいんじゃないのでそれでも受け入れてくれる人はこの先も読んでくれると嬉しいです。
ではまた次のお話で