🍍「……あの、或間さん。」
俺はしばらく迷った末に、思い切って口を開いた。
🍍「次……ちょっとだけ無茶ぶりしてもいいですか?」
カメラのファインダー越しに、彼の黒い瞳がこちらを覗く。
🧸「無茶ぶり?」
喉がからからになる。
言っていいのか。いや、言わなきゃ後悔する。
🍍「……その、ベッドに仰向けに座って、膝を……こう、開いて……」
言葉がそこで詰まった。
或間の表情が、一瞬止まる。
空気が、重く沈んだように感じた。
🧸「……M字、ってことですか?」
低く呟かれた声。
俺は反射的に俯きかけて――けれど、必死に顔を上げた。
🍍「……はい。もし無理なら、断ってもらって構いません。」
長い沈黙。
シャッターを握る手が、じっとりと汗ばむ。
だが次の瞬間、或間はふっと鼻で笑った。
🧸「まったく……那津さんって、本当に腐男子なんですね。」
そう言いながら、彼はゆっくりと姿勢を崩し、指先でベッドを掴んで体を支えた。
少しだけ耳を赤くしながら、視線を逸らして――。
🧸「まぁ……それも仕事だからな。」
両膝が静かに開かれる。
その仕草は挑発的というより、どこか恥じらいを含んでいて。
俺の息は止まり、心臓の鼓動ばかりが耳の奥で響いた。
シャッターを切る瞬間、俺はもう「写真家」ではいられなかった。