休憩が終わって楽屋から移動する時に、馴染みのスタッフさんが声をかけてきた
『渡辺さん、向井さん!ごめんなさいね、最近入った子がなんか余計なこと言ったでしょう?ちゃんと叱っておいたんで』
「いえいえ、大丈夫ですよ〜!心配してくれただけみたいやし。な、しょっぴー」
「はい、気にしないでください」
『ありがとうございます。お二人とも優しくて助かります。じゃ、この後もよろしくお願いします!』
「こちらこそです」
「よろしくお願いします」
先に走っていくスタッフさんを見送って、隣のしょっぴーに声をかける
「な?言うたやん?」
「ほんとだな」
「やから、安心しい」
「ん、ありがと」
「しょっぴー今日、家来るか?」
「ん、行く」
「ほな、あとちょっとがんばろか」
「うん」
不安が無くなったおかげか、その日のしょっぴーのパフォーマンスは絶好調だった
「ただいま〜」
「お邪魔します」
「夕飯、すぐ作るな」
「ん、ありがと」
ご飯も食べ終わってソファでゆっくりしていると、おもむろにしょっぴーが両手を広げてこちらを向いた
「ん」
「え、なに?どしたん?」
「ご褒美」
「………え?」
「いらないんだったらいいけど」
「いや待ってや!いります!欲しいです!」
慌ててしょっぴーの腕の中に飛び込む
膝の上に頭を乗せてウエストに抱きつけば、頭を撫でられた
「必死すぎじゃん笑」
「そりゃそうよ!滅多にそんなこと言うてくれんやん!」
「……今日は、こーじのおかげでがんばれたから」
小さい声だけど、ちゃんと聞こえた
恥ずかしがって口元を手で隠すから、下から見上げてるこの位置からは顔は見えない
それでも隠しきれない真っ赤になった耳たぶに、そっと触れる
「やっぱりしょっぴーは、優しいし、可愛ええわ」
「こーじが、優しいから」
「そういうことにしといたる」
どっちが優しいかなんて、今この瞬間には大したことやない
「……………こーじは、太陽みたいだ」
「可愛ええこと言うなぁ、ありがとさん」
耳に触れていた手を、しょっぴーの首の後ろに回して引き寄せる
顔を隠す手は、反対の手で握って指を絡ませる
真っ赤な顔が見えて、少し潤んだ瞳と目が合って、唇が重なった
「ありがと、最高のご褒美やわ」
「………ばーか、ふふふ」
憂いがなくなって晴れ渡った瞳と、はにかんだ口元を見上げて、最高の景色やなと思った
(俺にとっては、しょっぴーが太陽やけどな)
おわり
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