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#婚約破棄
それから私は、授業どころではなくなってしまった。今のところゲームらしい出来事は起きていないけれど、もしこの先ゲームのとおりに物事が進んでいくなら……多分このまま、そう遠くないうちに戦争が始まる。
戦争に関する説明はさっき思い出した記述だけで、具体的にどうなるのかは分からないけれど、まあ良い結末にはならないだろう。エリザベスもおそらく、戦争に振り回される人生を送ることになる……。
真面目に授業を受ける彼女を、横目に見る。こんなに可憐で素敵な子がこの先大変な人生を送ることになるだなんて、とても私は見過ごせない。それにこの先戦争になれば、私が知るゲームの登場人物たちは、残らず辛い人生を送ることになるだろう。当然、クラウス殿下も……。
私はその後、自由な時間を使って、エリザベスからいろいろと殿方について話を聞いた。
そして夜。彼女が寝静まったのを確認してから、私は月明かりが照らす部屋で机に向かう。ノートを取り出し、そこへエリザベスから聞いた情報を書き記していく。
『アイレンツィアでつかまえて』の攻略対象は全部で五人。
クラウス殿下の弟でクラマンテ王国の第三王子、セルウス・アルト・クラマンテ。
クラマンテ王国の西に位置する、アッシュヴァルト帝国の皇太子、アーウィン・グラニ・アッシュヴァルト。
クラマンテ王国の南に位置する、キュリオッシュ共和国の将軍子息、ルーク・ハインツ。
アッシュヴァルト帝国の南、キュリオッシュ共和国の西に位置する、ミンスレイル王国の王太子、アーサー・フィル・ミスティリシア。
ミンスレイル王国の宰相子息、セルム・ウィンストン。
エリザベスから聞いた話と私のゲームに関する知識、それらを総合すると、今の各好感度はおそらくこうなる――
セルウス ☆
アーウィン ☆☆
ルーク ☆
アーサー ☆☆☆
セルム ☆
ゲームではこの好感度が六月末時点で五を超えていないと、無条件で戦争エンドに突入する。
この先の六月中に好感度を上昇させる機会は、あと三回。好感度は一度に二段階上げることもできるから、現状では誰のルートにも入ることができる。
私はクラウス殿下目当てに、セルウスルートは何度もプレイしたから、一番知識が多い。でもこの感じだと、エリザベスが最も好意を寄せているのは、多分アーサーだ。
これはゲームではないから、全員の好感度を上げる必要はない。もしこのままエリザベスが誰かのルートに入るなら、やっぱりアーサールートがいいんだろうか?
「……あ、でも。攻略対象からの好感度が高いからって、今のエリザベスがその人のことを一番好きってわけでもないわけか」
今の私の目標は、エリザベスを誰かのルートに入らせること。攻略対象のルートに突入さえすれば、多分戦争は回避できる。
その先は順当に相手を攻略したほうがいいんだろうけど、そのことを今考える必要は正直ない。
「……うん。まずはエリザベスの気持ちを確かめてみよう」
私は書き込んだノートを閉じると、小さな寝息を立てるエリザベスに近づく。穏やかな寝顔を眺めながら、私は少しズレていた布団を直した。
「私が必ず、幸せにしてみせるからね」
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