誰かの特別になんて成りようもない
私の友達は人気者。
「あ、奏!ここマジ分かんなくなぁ~い?」
「それなぁ!?せんせーの教え方がぜってぇー悪いって笑」
私の友達は人気者。
「奏、強すぎ!笑化け物かと思ったもん笑」
「ば、化け物だとぉぉ!?!?言い方よ笑」
私の友達は人気者。
「あ、奏……」
「奏!一緒に行こ~!!てかさ、聞いてよ!!」
「うん!なになにー??」
私の友達は……。
「星香!どうしたの?体調悪い?大丈夫?」
「あ、うんっ!大丈夫」
「早くしてよー遅れるよ?」
奏は誰にでも優しい。彼女の笑顔は太陽のように眩しい。運動神経抜群で頭は平均よりかはいい方だ。奏の周りにはいつも人が集まっては円を作り奏を中心に話が進んでいく。
対して私と話しているときはあまり笑わない。全く笑わないときだってざらにある。なんでこうも違いが起きるのだろう。それに大抵、私から話を広げている。奏から切り出されたことはこの1年間で1、2回しかない。話振ったりしてるはずなのに反応を示さず無関心のように振る舞われる。それがすごく苦痛だ。
「奏、今日のテニスどうだった?」
「あー、あんまし決められなかった。」
「…そっか、次があるじゃん!いけるいける!」
「うん、そうだね~」
未だになんで私と仲良くしてくれてるのか全く理解ができない。確かに出会って初めて奏に話しかけたのは私だ。入学して初めてお弁当を一緒に食べたのも私だ。私が仲良くしたいっていう一方通行な思いだけ、ただそれだけなんだ。
「あ、奏!!」
……あーあ、まーた始まりましたよ。
「あ、莉子!ねぇ~聞いて聞いて!!」
私には私と話しているときとお友達と話しているときのテンションの温度差が浮き彫りに聴こえてくるんだよ。だからしんどいんだ。
私はいつものようにゴミ、ホコリひとつ無い真っ白な床を眺めながら楽しそうな背中を追いかけて歩くだけだ。私は根っからの陰キャラ社会不適合者なんだ。心の底から消えたいと願ってしまうくらいには鬱になる。
「あ…うん!またね!!」
「うん!またね~!!」
話し終え、別れた後、私の方に視線を1ミリたりとも向かうことなく真っ直ぐ歩く奏。
奏なんて…そんなこと思ってしまう自分が大嫌いだ。いっその事、奏の手で消してくれ存在ごと。
「奏~!」
こんな近くに地獄ってあったんだなぁ…遠い目にならざる得ない状況にもう慣れた私は教室に颯爽と入った。
「奏、今日めっちゃよかったんだよね?凄いじゃん!」
「えぇ??そんなわけないじゃーん!!笑」
なんで私なんかと仲良くしてくれるの……なんで私は隣で歩けないの……なんでなんで…私は…。
君がいなければ孤独を知ることなんてなかったのかもな。ほんと……しにたい。
「星香、行こ。遅れるよ~?」
「あ、うん。待ってよ~!笑」
「はいはーい。」
誰かの1番になんてなれっこないんだ。そんなの私がよく分かってる、分かってるのに……独りで居られる環境なんて私には勿体ないように感じるんだ。
「ありがと~」
「うん、こちらこそ!」
「あ、梨央~!めっちゃかわいいじゃーん!!」
私のそばに居てくれる人間なんて誰もいないんだ。きっとこれからも、永遠に。
せめて、嫌いにはなりたくないなぁ僕。
頑張って耐えて、まじで耐えてくれ。
この作品はいかがでしたか?
0