伊織は、帰宅後すぐに藤堂からのメッセージを見て、全身が凍り付いた。『すぐに俺の家に来い。説明してもらいたいことがある』
メッセージの後に続く絵文字は、いつものハートではなく、静かに燃える炎のマークだった。伊織は観念し、藤堂の家に向かった。
藤堂の部屋のドアを開けると、リビングは薄暗く、藤堂はソファに座り、腕を組みながら伊織を待っていた。彼の顔は、いつもの余裕のある笑顔ではなく、明らかに不機嫌で、底冷えするような冷たい表情をしていた。
「遅いぞ、伊織」
藤堂の低い声が、部屋に響く。伊織は、その威圧感に縮み上がり、ほとんど反射的に謝罪の言葉を口にした。
「ご、ごめん、蓮……」
「謝罪は後に聞く。まずは、その冴えないカーディガンを脱げ」
藤堂の命令に、伊織は慌てて羽織っていたカーディガンを脱いだ。
「さあ、座れ」
藤堂はソファの隣の席を叩いた。伊織が恐る恐る座ると、藤堂はすぐに伊織の頬を両手で挟み、無理やり自分の方を向かせた。
「なあ、伊織。俺は部活だと嘘をついて、お前の後ろを尾行した。何のためだと思う?」
伊織は目を逸らそうとしたが、藤堂の強い視線に逃げられなかった。
「……僕が、佐藤さんと、本屋に行ったから」
「そうだ。そして、お前は俺のTシャツじゃない、そんな面白くもないカーディガンを着て、あの女と笑い合っていた」
藤堂の言葉には、深い苛立ちと、それ以上の傷ついたような感情が滲んでいた。伊織は、藤堂を裏切ったような気持ちになり、罪悪感に襲われた。
「なぜだ、伊織。俺が**『お前は俺だけのものだ』**って、あれだけ伝えただろ? なぜ、わざわざ他の奴と二人で出かける必要があった?」
「ち、違うんだよ、蓮。佐藤さんが、新作が出るからって、すごく楽しみにしてて……断るのが、悪くて」
「断るのが悪い? 俺との約束より、他の奴への義理を優先したのか?」
藤堂は、伊織の肩を強く掴んだ。
「お前が他の奴と話す度に、笑う度に、俺の心臓はグチャグチャになるんだ。お前は、俺の可愛い部分を、誰にも見せちゃいけないだろ」
伊織は、藤堂の目が真剣な怒りに燃えているのを見て、怖くなった。
「ごめん、蓮……もうしない。僕が悪かった」
「口先だけじゃ信用できない。証明しろ」
藤堂は、伊織の耳元に顔を近づけた。
「俺のTシャツに着替えて、俺の布団に入れ。そして、お前が誰のものなのか、一晩中、俺の体に叩き込め」
伊織は、藤堂の独占的な要求にゾクゾクした。彼の怒りは、そのまま伊織への激しい愛情の裏返しだと理解できたからだ。
「わ、わかった……僕は、蓮のだよ。誰のものでもない」
伊織がそう答えると、藤堂はようやく表情を緩め、伊織の唇に荒々しくキスをした。
「ようやく、わかったか。お前は、俺が誰にも渡せないくらい可愛すぎるから、こんな変装までして追いかけるんだ」
「俺の可愛い伊織。今夜は、俺がどれだけお前を愛してるか、嫌というほど思い知らせてやる」
藤堂はそう言うと、伊織を抱き上げ、寝室へと向かった。その夜、藤堂は伊織を優しくも厳しく愛し、伊織の体と心に、彼だけの痕跡を深く刻み込むのだった。
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