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未熟者が作った物語
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この世界には魔法がある 。
――らしい。
「いや、使えねぇじゃねぇか」
神代玲司は広場の噴水に腰掛けながら呟いた。
目の前では数人の子供たちが木の枝を杖代わりに振り回している。
「ファイア!」
「ライトニング!」
「アイスランス!」
次々と魔法らしき名前を叫ぶ。
だが何も起きない。
火も出ない。
雷も落ちない。
氷も飛ばない。
ただ元気な声だけが街中に響いていた。
「……なんだこれ」
玲司は額を押さえた。
異世界に転生してから五日。
ようやく分かったことがある。
この世界の住人は誰も魔法を使えない。
それどころか、実際に魔法を見たことがある人間すらほとんどいないらしい。 にもかかわらず。
人々は魔法の存在を信じていた。
まるで昔話の英雄を信じるように。
まるで失われた伝説を語るように。
当然、玲司には理解できなかった。
「魔法がある世界なのに使えないって何だよ」
意味が分からない。
ラーメン屋なのにラーメンが売ってないくらい意味が分からない。
その時だった。
「お兄ちゃんもそう思う?」
突然声を掛けられる。
振り向くと、小さな少女が立っていた。
年齢は十歳くらい。
栗色の髪を揺らしながらこちらを見上げている。
「何がだ?」
「魔法のこと」
少女は少し寂しそうに笑った。
「私ね、一回でいいから見てみたいんだ」
「魔法を?」
「うん」
玲司は黙る。
少女の瞳は本気だった。
子供らしい憧れ。
純粋な願い。
「お父さんもお母さんも見たことないんだって」
「へぇ」
「おじいちゃんも」
「へぇ」
「ひいおじいちゃんも」
「それはもう絶望的だな」
思わず言ってしまった。
少女は頬を膨らませる。
「ひどい!」
「悪い悪い」
玲司は苦笑した。
そして立ち上がる。
少しだけ。
本当に少しだけ気になってしまった。
*なぜ魔法が使えないのか。
なぜ誰も知らないのか。
なぜ人々は今でも魔法を信じているのか。*
もしその原因を見つけられたら――。
「……金になるな」
玲司の口元がにやりと歪む。
英雄・名誉・大金
王族からの褒賞・貴族からの勧誘
美女から感謝
考えれば考えるほど夢が広がる。
「よし決めた」
少女が首を傾げた。
「何を?」
「魔法が使えなくなった原因を探す」
「え?」
「世界最大の謎なんだろ?」
玲司は笑った。
「だったら解いた奴が一番偉くなる」
そして小さく呟く。
「まぁ、金になるならやるけど」
この時の玲司は知らない。
その選択が。
世界そのものを揺るがす真実へ繋がることを。
そして。
この世界の運命を大きく変える
二人の少女と出会うことを。
一人は、誰よりも彼の味方になる少女。
一人は、誰よりも彼を惑わせる少女。
まだ何も知らないまま。
神代玲司は、
魔法が消えた世界の謎へと足を踏み入れた。
コメント
1件
わあ、面白かったです!魔法がある世界なのに誰も使えないって設定、すごく惹かれます。玲司の「ラーメン屋なのにラーメンが売ってない」って例えに思わず笑いました。純粋に魔法を信じる少女との出会いも良かったです。最後の「一人は味方、一人は惑わせる」の一文にゾクッとしました。続きがすごく気になる!