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#掃除
月城 蓮桜音
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saza
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水羽
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「見てくれ、セーレ。走ったぞ」「そうね、良かったわね」
マークは、おじさんのレクチャーを受けて、五十分ほどでバイクを乗りこなせるようになった。最後に講習許可証を受け取った後、二人は固い握手を交わした。
「そのバイクは、今日からお前のものだ」
「ありがとう、コーンさん。大切に使わせてもらうよ」
「ねぇ、もう終わったの?」じっと、セーレが呆れ顔をした。
会話が終わると、セーレはサイドカーに乗り込んだ。
マークがバイクに近寄る。二人は、サイドカーに積まれていたバイザー付きヘルメットを被った。
「よし、準備できたぞ」と言い、マークはスロットルを回した。
「砂クジラに向けて出発しましょう」
正面入り口が開き、勢いよく一台のバイクが疾走した。
地面を走るバイクに、マークの気分は高揚した。バイク乗りが受ける風を全身に浴び、子供のように大はしゃぎしていた。
「最高だな」
しばらく走ると、セーレから停止指示を受けた。その場所はサボテン地帯だった。
「ん……何だ地震か……」
「くる」
岩礁を泳ぐ、砂クジラが顔を覗かせた。体長は三十メートルほどで『つぶらな瞳』で愛らしい顔をしていた。
「これが砂クジラ。とっても大きいのね」
「すごいな。砂の上を泳いでいる」
クジラはサボテンまで泳ぎ、むしゃむしゃとサボテンを食べ始めた。棘があるが、舌はそれをものともせず、完食していく。
セーレはサイドカーに入っていた双眼鏡で、クジラの頭頂部を確認した。緑色の鋏が刺さっているようだ。
「あれね」
「どうするんだ。あれ、何をして」
「あなたはそこで待機!」
マークに指示を出し、セーレは急にクジラに向かって、走り出した。
途中の岩に身を隠しながら、徐々に距離を詰めていく。尾びれあたりに着くと、そろりと音を消し、忍び寄った。
手に持っていた爆竹とマッチ棒を用意し、セーレは導火線に火をつけて、ぱちぱちと音が鳴る。
クジラはその音に混乱し、セーレへ突進してきた。同時に、彼女の髪が白髪から銀髪に変わる。
「さぁ、クジラさん。すぐに終わるから、私の言うことを聞きなさい。今こそ自由を。Follow me, pig!」
クジラの動きが急に止まったが、踠こうと「ジタバタ」しようとしている。セーレは力を強め、懸命にクジラを縛る力を強めた。暖かな日差し、汗ばむ天気でも挫けない。
「ぐおおおーん」
「大丈夫、すぐ終わるから。あなたに危害を加える気はないの。だからお願い、大人しく私の言うことを聞いて!!!」
三分後、砂クジラの動きが穏やかになった。
すっかりセーレの指示を聞くようになり、まるで飼育員のようだ。
「よし、地面に少し潜って。頭の先端だけ出しなさい」
「ぐおーん」
言葉に従って、クジラはゆっくりと沈んでいく。
「良い子ね。すぐ終わるから」
クジラに刺さっていた鋏をセーレが引き抜き、クライからもらった傷薬を頭の傷に塗ってあげた。
傷の治療を終えると、拘束を解いた。
クジラは砂に再び潜り、見送るように、その場を離れていった。
「おーい」
声が聞こえる。
遠くにいるマークへ手で、完了の合図を送った。
「クライの神器回収依頼はこれで完了ね。後は、バイクに乗って、帰るだけね」
セーレの背後から拍手が聞こえた。
「はい、我らと共に帰りましょう。洗脳の女王セーレ様」
その声に驚き、振り返る。
優勢思考の七三男が、フルートのような楽器をセーレに向けて吹いた。その振動は、衝撃波と似た音波攻撃であった。頭がくらくらとし、脳震盪に近い症状が出始めた。
「さぁ、参りましょう。セーレ様。我らと共に祈りを捧げに」
「だから……そんなの……望んでないって」
ふらふらになりながらも、セーレは気力でなんとか体勢を立て直そうとした。しかし、再度、音波攻撃を受ける。彼女にさらなる負荷を与えた。立っていることができず、気絶。倒れ込んでしまった。
「ふふふ、セーレ様。やっと、ご理解いただけたようですね。それでは、その不自由な体を捨て、我等と共に」
その時、エンジン音が近づいてきた。
七三男は危険を察知し、振り返った。目の前には既にバイクに乗ったマークが迫る。当然、避けられる筈もなく。砂埃を立てながら、衝突した。
「セーレに触るな、ストーカー野郎が!」
マークは違和感を覚えた。
アクセルを全開にしても、それ以上先に進めない。
砂埃が晴れると、岩のような皮膚の赤ローブの男が姿を見せた。
「ふふふ、残念。我が力は、身体を石と変える力。邪魔をしないでいただきたい」
バイクを手で掴み、そのままマークは投げ飛ばされた。
横に倒れ走行不能に陥る。投げ出されたがむくりとマークは起き上がり、相手の懐に飛びかかった。
「セーレから離れろ!」
「しつこいですね。やっと掴んだ神からの啓示。対面を許された我等が神セーレ様。その対面を邪魔するのは、万死に値する罪です」
掴んだ手を引き離され、七三男から殴る蹴るの暴行を受けた。それでも諦めずに、マークは足にしがみついた。
「……セーレに、近づくな……」
「まだ抗いますか」
さらに激しい暴行は続き、マークは動かなくなった。
「どうやら、終わりのようですね。さぁ、長らくお待たせしました。洗脳の女王セーレ様。やっと御身を、我が見えざる優勢思考の下へ奉れることができ、誠に感謝申し上げます」
七三男のサーメスは歓喜の顔で、銀髪の女性の下へ。
「洗脳の女王セーレ様。私こと、サーメスが貴方様を運ぶ命を賜った者です」
言葉を紡ぐように、歓喜に満ちていた。
「今、この刃で貴方様の願いを叶えて進ぜます。安心してください。首と体が二つに別れても不要な身体は、私が頂戴いたします」
長剣を横にし、サーメスは右手で先端を掴み、そのまま勢いをつけ、セーレの首を目がけて、斬りつけようとした。
「だから……や……めろよ」
サーメスの腕を背中から、がっちりとマークはホールドした。
「貴様……一度や二度、三度と飽き足らず、四度まで邪魔するとは……」
「悪いな……俺……諦め、わりぃ奴だから」
「この手を離せ」
剣の柄を使って、マークを何度も殴打した。
殴打を受け、手を離し倒れ込んだ。しかし、足元の衣服の裾を掴み、サーメスを行かせないように抵抗する。
「ここまで、苛つかせるとは宜しい。貴方から先に、天へ送って差し上げましょう。きっと、セーレ様もお喜びになるはず……」
マークの背中に刃を突き刺そうとした。
そのとき、高速で移動する物体にぶつかり、剣が弾き飛ばされた。
「誰ですか! 邪魔をするのは?」
飛来した鋏だった。そこに小さな狂人が忍び寄る。
取っ手にあたる部分を両手で掴んだ。その人物――クライだった。
「久しぶりに出てきてみりゃ、目の前には、うざったい優勢思考の連中がいやがる。お前らみたいな奴は、俺が成敗してやるぜ」
不思議そうな顔でサーメスも観察した。
「貴方様の顔、どこかで」
「はぁ……俺はな、フライだよ!」
記憶を辿り、恐ろしい過去が蘇った。
「フライ!? 開発者のクライ様と思ったが、別人……いや、まさか。二重人格の狂乱者フライの方か!」
「カカカ、狂乱者か。懐かしいな。神器の鋏も戻ったし。久々にアレやるかな」
サーメスの前髪が汗で濡れた。
「お待ちください。我は洗脳の……」
「ごちゃごちゃ、うるせんだよ、覇道滅破!!!」
鋏からレーザーの光が放たれ、サーメスの上半身は光と共に掻き消えた。
「ちっ……逃げられたか」
土人形は、ぼろぼろと崩れ落ちた。
(後は頼んだぜ、クライ。俺はもう引っ込むぜ)
「フライ! まぁ敵もいないし良いか」
後方から飛行機のエンジン音と集団の足音が近づいてきた。
「大総統様、困ります。急に飛行機の上から飛び降りるなんて、無茶し過ぎです」
「先ほどは……えっと……すまん。この者達は怪我人だ。収容してくれ」
「はい、承知しました」
クライの親衛隊が、重傷の二人を担架に乗せ、搬送作業を開始した。クライは、セーレの近くにある、神器発信機を回収した。装置を裏返しカバーを外す。発信機付きの盗聴器がチカチカと点滅していた。
「まさか、これが役に立つとはな」
クライと親衛隊は飛行機に乗り込み、その場を後にした。マークとセーレは最牡の病院へ搬送された。
二時間後、セーレは病室のベッドにいた。
「ここは、どこ?」
「セーレ、大丈夫かい? ここは病室だ。神器回収、ご苦労さん」
クライの顔が近い。セーレは離れろ、と告げる。
「あなたが助けてくれたの?」
「間違ってはいないが、お前を守ろうとしたのはマークだよ。彼は、今集中治療室の中だ」
「あいつの容体は?」
「大丈夫。医療チームからは、傷を処置し二、三日経過観察すれば問題ないとのことだ」
クライは鋏を手に取り、林檎を皮付きのまま四等分に切り分けた。その内の一個をセーレへ手渡した。
しゃりしゃりと甘酸っぱい林檎を口にし、仄かに甘みを感じた。
「優勢思考。彼等はどうして、私達に付き纏ってくるのかしら?」
クライは真剣な表情で答えた。
「僕達は三年前。言論の自由を勝ち取るため、不自由を強いる者達へ戦いを挑んだ。その結果は、どうであれ、起こした行動を見て、その者を神格化したり、崇拝するのは自由だ。但し、間違った行いや過剰行動を正しく導くことも、僕達の責任だと思う」
「あなた大総統だったのね……」
「そうかい、認めてくれるのかい。じゃあ今すぐにでも解剖……」
クライに反応しても調子に乗るから、もう無視。
「私達には、あの戦争を引き起こした責任がある。それでも、戦争の影響を受けた人が、無関係な人に怪我や暴力的な行動をするのは、やっぱり許せない」
何かを決意した顔で、クライを見つめた。
「頼みがあるの」
「何だい?」
セーレの紅の瞳が、クライの瞳の奥を真っすぐに見つめた。
「今回の事の発端は、全て私に責任がある。これ以上、無関係な人を巻き込みたくない——だから、あの男をこの街へ置いてやってくれないかしら」
静かに俯き、少し悲しそうな顔になった。
「いいのかい? 彼の意見を聞かなくても」
「今回の出来事で、わかったでしょう。私といると、不幸になることが、身に染みてわかったと思う」
「――ねぇよ!」
「!?」
セーレが目覚める十五分前。
マークは集中治療室の治療カプセルで、回復促進の治療を受けていた。その横で医療チームの説明をクライが聞いていた。すると、治療カプセルの扉が開き、中から青年が飛び出した。
「セーレ、無事か。あのストーカー野郎はどこだ!」
看護師たちは顔をしかめ、明らかに怒っていた。
「まだ治療中です。すぐ、治療ポットへ戻りなさい」
「ハハハ、もう体の調子は良いみたいだね。医院長の話では、二〜三日経過観察が必要とのことだ」
そこに現れたクライは、マークを車椅子へ乗せるように、院長と看護師へ指示を出した。そして、セーレの病室隣にある別室で待機していた。何でも、本来は捕虜の観察を目的にした病室らしく、隣の声は丸聞こえだった。
そして、現在に至る。
「いいのかい? 彼の意見を聞かなくても」
「今回の出来事で、わかったでしょう。私といると……」
「俺がいないところで、勝手に決めてんじゃねぇよ!」
マークは病室の扉を開け、看護師に車椅子を押してもらいながら中へ入った。
「!?」
「セーレが自由のために戦ったんだ。それなら、俺の人生だって、自由に選ぶ権利がある。君が何と言おうと、絶対に着いていくと決めたんだ」
力強いマークの意思表示が病室内に響き渡った。
コメント
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第6話、一気に読みました!マークの「諦めわりぃ奴だから」って台詞がもう格好良くて…。立ち上がるたびに倒されても、それでもセーレを守ろうとする姿に胸が熱くなりました。クライさんの登場も神がかり的で、特にフライが出てきた時の豹変ぶりには鳥肌が立ちました。あと、セーレが「私といると不幸になる」って言うところ、切なかったです。でもマークが「俺の人生だって自由に選ぶ権利がある」って言い返すシーン、最高でした。続きがすごく気になります!