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家の灯りが少しずつ近づいてきた。
けれど咲は、もう少しこの時間が続けばいいのにと胸の奥で願っていた。
「妹ちゃん、受験勉強……大変だろ」
不意に悠真が口を開く。
「……まあ、はい。模試の結果も思うようにいかなくて」
声が沈んでしまったのを自分でも感じて、咲は慌てて笑顔を作った。
悠真はそんな彼女を横目で見て、小さく息をついた。
「無理はするなよ。頑張るのは大事だけど、体壊したら元も子もない」
その言葉がやけに優しくて、胸がじんわりと温かくなる。
(……いつも“妹ちゃん”だからって思ってたのに。
どうしてこんなに、一言で救われるんだろう)
夏の夜風に吹かれながら、咲は隣を歩く悠真の背中を静かに見つめていた。