〈shake side〉
回復するまでにかなりの時間を割いてしまった
なかむはあれからというもの学校にもこなければ、自宅にも帰っていないようだ。
Br 「なかむ、どこいっちゃったんだろ」
Kn 「みんなはこのままそっとしておいた方がいいと思う?」
Kr 「いや。それじゃあ根本的な解決には至らないだろ」
Sh 「1人でいる方がつらいと思う」
Kn 「俺もそう思う」
Sm 「探すしかないでしょ」
でもいったいどこに?学校にも家にもいない
かといってひとりで知らない環境に行く方がなかむにとってはかえってストレスになるだろう
とすると、、、
Sh 「あそこにいるんじゃないか?」
…………………………………………………*
〈nakamu side〉
はたしてあれからどれくらい月が満ち欠けしただろう。
正直、あの日から今までの記憶は朧げで海月のように彷徨うことしかできなかった。自宅に帰ったらつまらない日々が強引に俺を引っ張っていきそうで、帰りたくはなかった
それなのに時間とはあまりにも残酷で、俺を掴んだまま離してくれることはない
現実逃避をしているうちに俺は気づいたら思い出の場所へと足を止めていた
これはまだ俺たちが幼かった頃の話
未就学児の魔法の使用は原則禁止されていた。
それでも好奇心というものには抗えないもので
大人の目を盗んでは度々みんなで公園を抜け出したものだった
そこは俺たちが住む家のすぐそばにあるバイオレットウッドの森を少し歩いたところにある茂みを抜けて、優しい日差しのさしこむ大きな窓を特徴とした広々とした家屋が俺らの秘密基地であった。
まだその頃には呪文などは知らなかったから、
エセ魔法陣なんかをかいてみたり拙い言語ながらにかっこいい言葉を捻り出して呪文を作ってみたり、、、
ここにくるとその時の記憶が鮮明に、 今でもあの時の俺たちの声が聞こえるような気がしたんだ。
みんなよりもかっこいい呪文作りたくて一生懸命に言語の勉強したっけな
そんな思い出をひとつひとつ割れかけのビー玉に触れるかのように優しく取り出していく。
カビ臭いカーテンの匂いを味わいながら
みんなで実験した魔法の跡を撫で、掠れた魔法陣を足先でなぞる
Nk 「なつかしいなぁ」
俺の声は切なくそれでも愛しく家屋に響いた
しばらくして俺は家屋のベットルームにたどり着いた。今までも大きすぎるほどのベッドは寂しくこの家屋に取り残されていた。
ジジッ
? 「僕のせいでっ、、、ごめんみんな」
なんだこれ
俺はこの記憶を知らない。
ジジッ
? 「おかぁさん!ごめんないっ
やだっ、、やめて」
ズキンッ
Nk 「っく、、なんなんだよ」
ズキンッ、ズキンッ
Nk 「ヒュー、ヒューッ、 ゲホッカハッ」
ビチャッビチャア
あーほんとにむかつく
ひとりになってからもこういうことは少なくはなかった。人とは不思議なものでどんなに苦しいことがあっても慣れてしまえば冷静になれるのだ。
過呼吸に血反吐の症状が出た時はしばらくすると落ち着いてくるのだが
知らない記憶による頭痛と原因不明のあざの広がりによる痛みが重なって意識が遠のいていく
俺は床に吸い込まれるように倒れ込む
Br 「、、、た!」
Kr 「、、、むっ!」
ああ、ついに幻聴まで聞こえてきた
勘弁してくれよほんとに。
…………………………………………………*
〈kintoki side〉
俺たちはなつかしの場所へと足を進めていた
小さな子供たちが耳をくすぐるような笑い声で遊んでいる公園をぬけて、森へと足をはこぶ
木々で覆い茂った薄暗い森のなかに優しい光を纏う家屋の大きなドアを開けた。
Kn 「大人になっても広く感じるなー」
Sh 「あの壁の跡、ぶるーくの魔法の後だろ 」
Sm 「なつかしいな」
、、、、ケホッカハッ
Sm 「、!なかむの声がするぞ」
かすかに聞こえたなかむの声を俺たちは聞き逃さなかった。急ぎ足で家屋の中を進んでいく
なかむ許さないからな
こんなにもお前のことを思っているみんながいるというのに何が愛だ。
そんな愛、俺たちが受け取れるわけないだろ
ちゃんと話し合おう、ひとりになんてさせるわけないよ
Br 「なかむいた!」
Kr 「なかむっ!」
俺たちが過ごした懐かしい時間が眠った場所には苦しそうにひとりもがく親友の姿があった
〈kiriyan side〉
Kr 「っ、、、 」
みんな気づいていないのか、、?
以前よりもかなりどんよりとした気配を感じてはいたが、まさかここにきて強くなるだなんて
息が詰まる。
夢の中で走るときのように足は鉛となって、呼吸は溺れている時のように苦しい
俺に神聖能力があるから感じ取れるのだろうか
みんなは平気そうになかむのもとへはしる
Sm 「、、、っ、、?」
スマイルもこの異変に完全に気付けてはいないが、違和感を覚えてる。
そう、目の前にいるのは俺たちが知っている
なかむとはほど遠い存在に感じた
息づかい、声、容姿までなかむであるのに
顔が見えない、纏っているオーラに違和感を覚える
一体誰なんだおまえは。
…………………………………………………*
〈kintoki side〉
目の前で大切な人が踠き、苦しんでいる
何もできない。救えない。
俺たちは魔法で
お前を助けることができない
Nk 「うぅっ、、、」ゼーッゼー
Kn 「なかむ?きこえる?」
俯き縮こまるなかむに声をかける
俺たちが回復するまでひとりでこうして耐えていたのかと思うと自分が不甲斐なくて悔しい
Nk 「やめて、ぉかあさん、、っ」
Sh 「っ!?
今なんて言った、、、?」
Br 「おかあさん、、?
っなかむ、 だめだ戻ってきて!!」
Nk 「ゔぅっ、、」
Br 「なかむっ」
ツーッ
〈kiriyan side〉
何が起きているんだ?なかむは、、、
鳥は騒がしく飛び回り、森は静けさという冷ややかさで俺たちを包み込んだ
俺の目には横たわる友達の体と、禍々しいオーラが焼きつくようにうつっていた。
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